事故物件対応社会2.0を目指して
前回の記事で事故物件リスクの本質的な問題は以下の2点と申し上げました。
不動産の買い手、借り手が知らず知らずに事故物件をつかまされたり、事故物件によって不動産価値が下落し続けないようにするには、これらの問題を解決する必要がありますが、どうしたらいいでしょうか。
個人情報保護と告知義務は今ホットな話題
個人情報保護と告知義務のジレンマは近年よく議論されます。
例えば犯罪の報道において、
犯罪被害者・加害者の実名公開による被害者&加害者の親族等のプライバシー問題、
国民の下衆な興味と視聴率獲得に走る報道スタンス、
それら意図しない社会的制裁が犯罪抑止力になっている側面とそれが故に発生する愉快犯や巻き添え自殺者、
とても難しい問題です。
難しいですが、社会全体で時間を掛けて、
どこまでは社会で共有すべきインフォメーションか、どこからは不可侵な個人情報かを線引きし、その共有方法なり保護方法を確立していくべきでしょう。
私はいずれはそれができると思います。
それらが確立されることにより、心理的瑕疵・事故物件にも援用されるはずです。
事故物件にも透明マーケットが必要
もう一つの事故物件の評価方法については、不動産業界が率先して提案し浸透を図るべきです。
「◯年前に室内で首吊り自殺で、死亡して当日に発見されているので、この部屋の賃料は◯%減価です」
みたいな。
評価をあてはめても賃料や売買価格が減価しない事故であれば、調査&告知から漏れても損害賠償請求額もゼロになるので、そこが事実上の事故物件の範囲となります。
なお、減価割合や減価額を求める計算式を編み出するよりビッグデータを基にAIが算出する方が説得力があるでしょう。
それには心理的瑕疵の内容と取引額のデータが大量に必要です。
しかし、現在のように事故物件をなるべくクローズにしていてはいつまで経っても蓄積されません。
すべて網羅して評価方法を確立し、事故物件の評価を下げ止めてもらった方が一周回って不動産オーナーのためです。
そういう意味では大島てる氏の事故物件サイトはこれまでは不動産オーナーの敵でしたが、方向性は正しいと思いますし、そのような先駆者が時には非難を受けながらも道を切り開いてくれることは大変ありがたいと思います。
事故物件にも透明なマーケットを構築すべきなのです。
まとめ
個人的な考えですが、
人類の歴史というか生物の歴史自体がそもそも闘争・殺し合いの連続であるにもかかわらず、ここ数十年で起きた不幸な出来事だけを地雷扱いする風潮はいびつな価値観であると思います。
そして、不幸な出来事を蓋をするだけではなく、時にはその反省を生かしていくのが、これまでの人類の死生観だったはずであり、これからもそうであるべきだと思います。
私にはビッグデータを収集、管理しAIを操るような能力はありませんが、関係者の了解が得られ、その過去の不幸な出来事に対し私なりに向き合った上で、物件の事故情報の開示と、その上での買い手や借り手への情報提供を行っていきたいと思います。
そして、機会があれば事故物件の検索サイト等の作成に助力し、事故物件の適切なマーケットの構築に資することができればと思っています。
shiro-shita
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