出所者の住まい確保は社会的意義が大きいのですが
数ヶ月前のことですがアンケートが郵送されてきました。
詳細は忘れましたが、役所から送られてきたもので、刑務所出所者の住まいの確保に難儀しているので不動産業者に意見を求めたいというものでした。
出所者の住まいの確保の難しさは今に始まったことではないでしょうが、近年はマスコミにも取り上げられたりしています。
私自身、以前の職場ではありますが、出所者が住まいを探して来店され、その対応を巡りちょっとした出来事があったこともあり、出所者の住まい問題は未経験で無関係のマターだとは思っていません。
が、アンケートには、
現状では民間賃貸への斡旋に協力できない旨を記載しました。
私が斡旋に協力できない理由
なぜ斡旋に協力できないか、
誤解ないよう申し上げますと、私は出所者の方に何か普通と違う欠陥があってそれを理由に難しいと思っていることは一切ありません。
確かに出所者のうち半数が刑務所に戻ると言われるほど再犯率が高く、それをもって犯罪を犯した方を根本的に普通と違う人とみなす考え方もありますが、
むしろ、普通の人だからこそ再度犯罪を犯すのだと思います。
犯罪を犯す方のうち、中にはサイコパスな病的犯罪者もいるのでしょうが、大半の方は不運により社会の底辺に属すことになり、そこを脱出しようと試行錯誤するもののかえってドツボにはまり、流れに抗えなく、もしくは失うもののなさから暴発するように罪を犯すのではないかと思います。
そういった状況では“自分を強く持つ”とか“芯の強さ”とかはたまた“努力”もほとんど関係ありません。人の耐性なんて世の中の壁や残酷さに対して決定的に無力なものです。
それで、刑務所に入り、それを出所した後ですが、大変失礼な言い方ですが、やはりそこも底辺です。なかなか仕事も住まいも頼れる人もいません。しかも刑務所で悪い人脈ができたりします。
無力さ、寂しさ、不安と困窮ばかりの世の中を耐え忍ぶのは普通の人では難しく、それでまた流されるように、もしくは暴発するように罪を犯す、という方が多いのだと思います。
その絶望的状況の連鎖は、仮に、住まいだけが確保できても克服できないでしょう。
克服できないうちは、不動産オーナー&管理会社に迷惑を掛ける恐れがあるので斡旋に協力できない、それが私の考えです。
でも、ビジネスになる可能性はあるのではないか…
出所者が本当の意味で普通に民間賃貸住宅を借りれるようになるには社会の多くの部分を変えなければなりません。
法制度に社会システム、それに世の中の価値観etc…。
それは多くの人が時間を掛け、努力して成し遂げられることであり、私のような一不動産屋が論じたところで仕方がないことです。
ただし、出所者の賃貸住宅ニーズがあることは確かであり、不謹慎ではありますが、それをビジネスに結びつけようという発想ができない訳ではありません。
果たして出所者向け賃貸住宅はビジネスとなり得るのでしょうか、また、運営にどのような注意が必要でしょうか。
(次回に続く)
shiro-shita
最新記事 by shiro-shita (全て見る)
- 弊社の第6期が終了しました - 2024年11月18日
- 【解説】負動産の処分プロセス - 2024年11月1日
- 【解説】不動産賃貸のプロセス - 2024年10月28日