不動産管理業はこれから厳しい!?将来誰も不動産管理してくれなくなる前に”アセットマネジャー”の不動産管理会社をしっかり選任しておきましょう ​

不動産知識・テクニック

不動産管理業はこれから厳しい!?将来誰も不動産管理してくれなくなる前に”アセットマネジャー”の不動産管理会社をしっかり選任しておきましょう ​

高齢化や人手不足から物件の管理ができなくなる不動産会社が出てきています。管理会社を切り替えるのならアセットマネジャーになってくれる不動産会社に依頼しましょう

賃貸アパートやマンションの空室募集や入居者からの相談・クレームに共用部の清掃といった管理を自分でやっているオーナーさんもいると思いますが、多くの方は不動産会社に委託していると思います。

不動産会社にとっても管理を依頼されると、毎月固定収入が入ってきますし、空室に入居者を入れると仲介手数料が入ったり、修繕工事が発生するたびに手間賃を取ったりと、ビジネスチャンスが広がるので、依頼されるのを待っているだけではなく、管理物件をとるためにオーナーに対して営業を掛けています。

そんな不動産会社に対して、うぜえなぁ、めんどくせえなぁとぞんざいに扱ってきたのでしょうが、

そのうち物件によっては誰も管理を受けてくれなくなるかもしれません。

【目次】
管理はジリ貧のビジネスになりつつある
 スタッフの人手不足① 給与が低い
 スタッフの人手不足② 管理って意外と難しい仕事
 管理は経営の重荷
管理会社突然終了に慌てないためには
管理会社を切り替えるときはどういう基準で選ぶべきか
 今の管理会社に求められる役割はアセットマネジャー
 オーナーと管理会社の二人三脚でこそ良い運営ができる
 それ以外の管理会社の条件 情報を独り占めする会社はダメ
不動産会社ならどこでも”管理”をする時代はもう終焉間近 相手から”替えられる”より、自分から”替える”方がスマート

管理はジリ貧のビジネスになりつつある

不動産管理業を巡る厳しい実情
いやいや、そんなことないでしょ、不動産会社なんて沢山あるし、管理してと言えば喜んで受けてくれるでしょと思うかもしれません。

確かに今ならまだそうでしょう。

しかし、管理の現場は確実に変わってきています。

スタッフの人手不足① 給与が低い

入居者から連絡を受けて業者を手配したり、物件を巡回して点検したりって仕事をしたがる人が減っています。

まだ、“清掃だけ”とかなら高齢者を中心に成り手が結構いるのですが、入居者との折衝をメインとする業務をしたい人はほとんどいません。

昔は結構いたんですよ、そういう仕事って地味だけど、営業ノルマが課せられる仕事よりいいと

今はそういう仕事は“稼げない”そして“ストレスが溜まる”というイメージが定着しています。

実際、その通りなんです。

管理収入って賃料の5%が標準的です。賃料5万円×8室のアパートだと月の管理収入は2万円です。

かなりの棟数を管理しないとスタッフを雇うことはできないのですが、管理棟数が増えてやっと収入に余裕が出てきても、その状態になると業務が多すぎてスタッフがもう一人必要になります。

いたちごっこなので、いつまでたってもスタッフの給与は増えません。

スタッフの人手不足② 管理って意外と難しい仕事

例えば、数ヶ月前に入った入居者からエアコンがタバコ臭いので何とかしてほしいと連絡を受けたとします。

前の入居者が退去するときにエアコンの動作確認はしたものの、匂いまでは確認しなかったのです。

前の入居者タバコ吸ってたなと思ってもいまさら後の祭りです。

オーナーに相談したところ、見逃したのはそっちなんだから管理会社で払えと、

上司に相談すると、オーナーの考えは多少身勝手だが反論しても理解してくれる人ではないし、うちにとって大事なのは入居者よりもオーナーなので、入居者にうまく話して我慢してもらえと、

そうなると担当者としては暗い気持ちでおずおず入居者に電話を掛けてしどろもどろ話さざるをえません。

後遺症で入居者からの電話が怖くて出れなくなったりします。

たかがエアコン一台でです。

管理は経営の重荷

管理は固定収入が入り、人のフンドシで相撲を取る以上は大きなリスクがないですが、利ざやが小さい上に手離れの悪いビジネスです。

24時間365日発生しかねないトラブルに備えたり、賃貸繁忙期には休みなく営業したりとそれなりのスタッフ、店構えが必要です。

スタッフのなり手不足・高齢化、下請け業者の単価アップといった状況の中で、これまでの体制を維持するのは容易ではありません。

何とか体制を構築しても、人口減少社会の日本で将来の展望は描きにくく、大口オーナーに別の管理会社に切り替えられたらアウトです。生殺与奪の権を大口オーナーに握られてイエスマンにならざるを得ません。

経営的に言えば、かえって店舗もスタッフもなしで年に1回くらいでかい取引まとめる不動産ブローカーの方がよっぽど良かったりします。いつでも辞められるし。

 
という訳で、

これまでは管理に力を入れていた不動産屋もまだ方向転換できるうちに管理から撤退したり、もしくはどうしようもなくて店をたたんだりってことがこれからどんどん起きそうな状況です。

管理会社突然終了に慌てないためには

突然の終了に慌てないためには
管理会社がやめるにしても、夜逃げでなければ何の引き継ぎもないということはないでしょうが、引き継ぎ先として紹介された会社とソリが合わないとか、引き継ぎ先は自分で見つけなければならないといったことがあるかもしれません。

それでも、不動産会社が管理しやすいような新しくてトラブルが起きにくい物件だったり、立地が良く空室が埋まりやすい物件だったら受ける会社はあるでしょう。

しかし、

築古だったり、立地が悪かったり、もしくは戸数が少なく非効率、さらには問題入居者がいたり、自殺等の告知事項があるような物件は果たして受ける会社があるでしょうか。

不動産会社としても、管理を受けてもお役に立てる自信がなく、受けると赤字になりそうなので辞退したいところでしょう。

それでも、不動産会社の方からお役に立てないと断ってくるならまだましかもしれません。

とりあえず受けたもののほとんど何もせず放置されると最悪です。

 
将来そんな事態に陥らないよう対策をしておくべきでしょう。

対策は、物件を魅力的にし、不動産会社が喜んで管理を受けるようにするってことが一つですが、すべての物件がそうできる訳ではありません。

もしくは、自分で管理するという方法もあります。確かにそれなら確実でしかも管理費が掛かりません。

しかし、今まで月額2万円で依頼していた管理を自分でやってその分のバリューを出せるでしょうか、むしろ、管理に使う時間を他に向けた方が生産的かもしれません。

 
以上を考えると、今の管理会社が怪しい雰囲気であれば、早めに違う管理会社に切り替えておいた方がいいということになります。

管理会社を切り替えるときはどういう基準で選ぶべきか

不動産管理会社を選ぶ基準とは?
もちろん、長期的に管理を任せられる体制がある会社を選ぶ訳ですが、やはり管理を依頼する以上、ただ業務を続けていけるだけってのも消極的です。

やはり、物件の収益を最大化してくれるような会社にお願いしたいものです。

今の管理会社に求められる役割はアセットマネジャー

収益を増やすには何と言っても空室を埋めて稼働率を上げることです。

それには入居斡旋に強い不動産会社が適しているということになりますが、今は不動産会社の立地が良かったり、知名度が高かったり、不動産会社の営業が熱心にすすめてくれることで入居が決まる訳ではありません。

以前も書きましたが、
<過去の記事>賃貸物件の入居者募集における管理会社の最大の役割とは

ここ10数年で不動産ポータルサイトの利便性は飛躍的に向上し、自分が希望する物件情報を簡単に絞り込めて、物件の比較も容易です。

その結果、立地や間取りに室内設備と賃料のバランスといったトータルで競合に勝らないとなかなか顧客に選んでもらえません。

もちろんたまにはあるかもしれませんが、長い目で見ればはっきりとした差が出ます。

なので、収益を最大化するためには物件のトータルの魅力を高めなければならず、そのためには競合物件や入居者のニーズやウォッチし続け、物件の優位性が失われつつあればテコ入れが必要で、それらの提案や実行支援が今の不動産管理会社に求められる最大の役割です。

 
ただし、いくら入居者に選ばれるにしても過剰すぎるリフォーム工事をしては採算が合いませんし、仮に採算が合ってもオーナーの身の丈に合わない出費はできません。また、そもそもどういったスパンでの採算なのかが分からなければ提案しようがありませんので、

管理会社はオーナーの中長期的なビジョンやリスク許容度を理解する必要があります。

それらに沿って長期的な運営計画、予算を立て、逐次見直しをしながら提案、実行していくべきです。

不動産管理会社というよりアセットマネジャーと言った方がいいでしょう。

オーナーと管理会社の二人三脚でこそ良い運営ができる

そして、オーナーも単なるお客さんではいけません。

賃貸経営しているのはオーナーであり、管理会社がいるとはいえ最終的な責任はオーナーにあります。

上記のエアコンの例で、入居者が我慢しろというのに納得せず、退去すれば賃料が減りますし、また、入居者がエアコンが正常に動作しないのを放置していると司法的手段に訴えれば多分負けるのはオーナーでしょう。

自分のこととして物件への思いを強く持ち、物件の運営に熱心に関わりましょう。

そうすることで、より管理会社も本気になり、提案に熱が入り、サービスのクオリティが上がるはずです。

オーナーと管理会社とが同じ方向を見て二人三脚で高い運営パフォーマンスを目指しましょう。

それ以外の管理会社の条件 情報を独り占めする会社はダメ

さらに管理会社の条件として決して外せないのは自社だけで情報を囲わない会社であることです。

クオリティの高い提案、管理運営するにはそれなりの労力、コストが掛かりますが、その分を補おうと、仲介手数料を両手取りするために顧客を自社直接に限定し、他の不動産会社に空室情報を出さない不動産会社があります。

それでは物件の入居チャンスを逃し、何のために運営しているのかわからなくなります。

そういう会社は一見すると懇切丁寧ですが、オーナーを食い物と思っており、それ以外の部分でも何かにつけて自社に利益誘導を図ろうとします。

どんなにネームバリューや立派な管理レポートがあろうとも誰のための管理サービスかを履き違えている会社に管理を任せてはなりません。

不動産会社ならどこでも”管理”をする時代はもう終焉間近 相手から”替えられる”なら、自分から”替える”

不動産管理会社とのめぐり逢い
不動産会社の看板には「土地・建物 賃貸・売買・管理」って書いてあることが多いですが、これまでは大概の不動産会社は同じような特色のない営業をして、みんなでシェアを分け合ってきました。

しかし、現在はそんな特色のない、強みのない不動産会社は淘汰の真っ只中にあります。

 
自分の物件の管理をお願いしている会社は果たして大丈夫でしょうか?

これまで管理会社頼みで賃貸経営してきた人ほど注意が必要です。

突然の管理終了に慌てないように今のうちから対応策をご検討いただければと思います。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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