共有持分の買取

業界動向

共有持分の買取が流行りだしている 共有関係に悩む人には渡りに船なのか? ​

デメリットばかりの共有持分を引き取ってくれる!?でも本当に大丈夫!?

相続税対策のアパート建設はさすがにもうブームは過ぎ去りましたが、生前贈与や家族信託といった相続対策自体のニーズは高く、相続対策関連ビジネスに参入してくる企業は今でもかなりあります。

そんな中で最近増えてきたのが「共有持分の引き取り」を謳う会社です。

共有持分のデメリットって?

共有持分とは、例えば相続発生前はお父さんの名義だった実家が相続によりお母さんと姉と自分の3人の名義になったような状態です。

法定相続分の通りに共有持分があるとするとお母さん1/2、姉1/4、自分1/4となります。

不動産についての権利と義務をその持分で有していることになり、民法上、共有者の一人が単独でできる行為、過半数の同意でできる行為、全員の同意が必要な行為がそれぞれ規定されていますが、基本的には一々共有者間で協議し合意形成を図らねばならず、合意できなかった場合は不動産が塩漬けになる恐れがあります。

特に、二次相続が発生した場合は複雑になりがちです。

例えば、上記の例で1/4を持つ姉が亡くなって、その旦那と子供に相続が発生したり、さらにその子供が交通事故で亡くなって孫が相続人となったような場合です。

姉の旦那と折り合いが悪かったり、姉の孫には面識がないどころかどこに住んでいるかすら知らなかったりするとりします。

そうなると遺産分割協議が未了で相続登記していないとか、法定相続分の通り相続登記はしたが、共有者間で不動産の管理運営がうまくいっていないとかだと、もうお手上げって感じになり、共有持分は手放したくなる訳です。

持分を引き取ってくれるのはありがたいが、ところで引き取った持分をどうするの?

そういったニーズを汲んで共有持分だけの引き取りを謳う会社が増えています。

持ち分をだけ有していて煩わしくて困っている人であれば、激安もしくはタダ、最悪は有償引き取りでもありがたいことかもしれません。
 

しかし、疑問は持分を引き取った後にどうするかです。

基本、他の共有者に持分の売渡しを要求したり、共有物分割訴訟を提起したりして、完全な所有権を取得し転売を目指すようです。

 
要は底地ビジネスと同じです。

底地ビジネスでは借地権が設定されている土地(底地)を安く購入し、借地人と借地契約の解除交渉をして転売します。

当然、借地人との交渉でトラブルが頻発するのですが、投資家としてはリスクを取って購入するので利益を追求するのが当たり前で、法律の許す範囲のやり方であれば悪行とまでは言えないでしょう。特に借地人はそのまま土地を借りることを望む人が多いですが、共有持分は他の共有者にとってもベストな状態ではないので、しがらみのない第三者が登場して強引にでも共有状態を解除した方が相手のためということもあります。

 
ただし、中にはお金をもらって引き取って放置する会社もあるようです。

共有持分以外にも親から相続して管理に困る郡部の実家や無価値な山林といったいわゆる”負動産”も有償引き取りの対象で、それらゴミのような不動産をたくさん引き受けた上で会社ごと放置するのです。

不動産は荒れ放題で、近隣住民や行政が苦情を入れたくても、そのときはすでに実体のない会社で連絡が付きません。

 
日本を荒廃させる社会悪スキームです。

 
​自分が煩わしいことに関わりたくないからといって安易に引き取りに応じても、その煩わしさは誰かに転嫁されるだけでなくなりはせず、まわりまわってより大きな社会問題を引き起こす可能性もあると認識して責任ある行動を求めたいところです。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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