負のループに陥る中小企業の採用育成

個人的なはなし・意見

負のループに陥る中小企業の人材採用・育成

従業員が金と休み以上に求めるものとは?

ここ最近、知り合いの中小企業の従業員が辞めたって話をよく聞きます。

そのほとんどが前向きな退職【卒業】ではなく、従業員のスキルアップや自己実現、経営者の教育投資の成果が現れる前のいわば後ろ向きな退職【離脱】です。
 

従業員としては、やっとの思いで就職したのに、経営者に常にイライラ足手まとい扱いされ、数ヶ月で強迫性障害一歩手前まで追い詰められ、何のキャリアにもならず、残ったのはトラウマ的記憶。

経営者としては、従業員の人生を背負いこんで一人前に育てる覚悟を決めたものの、結局は掛けた経費(給与、手当、社会保険料その他)と労力(雇用手続き、教育訓練、取引先の引継ぎその他)すべてが水の泡。
 

一方は働いてほしい、もう一方は働きたい、双方の利益が一致していたはずなのに、結局お互い傷つき合うそんな不毛な雇用関係が実に多いこと。

どうしたら改善できるでしょうか?

ズバリ社会的必要性のある企業になりましょう!

というか、私自身は人を採用したことも育成したこともありませんし、その予定もありません。

全くもって説得力がないのはその通りですが、

私自身これまでずっとさしたる成果を出さずに数年で職場を転々とする不毛な雇用関係を従業員側で経験し、今はマイクロ法人経営者ですが、イケてる経営者ではない分、かえってそのような経営者が見えづらい部分を気付くことができます。
 

そんな私が思う不毛な雇用関係の抜本的解決策は「もっと社会的に必要とされる企業になる」ということです。

順を追って説明したいと思います。

中小企業の採用・育成現場で起きていること

もともと中小企業は採用&育成が不利です。

大企業にくらべて下記が劣ります。

・コーポレートブランディング
・通勤しやすい立地の、見栄えのするオフィス
・待遇(給与、福利厚生)
・教育訓練環境
・それらの結果としてのガバナンス

 
企業にとって採用&育成はいうまでもなく超重要で、好景気のときは人材の取り合いとなり、高度成長期には大企業はこぞって上記をアピールしました。

バブルが崩壊すると、逆になり、就職できれば多少条件が悪くても人は集まりました。

買い手市場であることをいいことに、従業員をこき使うことで売上をあげるブラック企業が跋扈しました。

 
今はそのより戻しがきています。

ブラック企業は忌避され、企業がブラックな素振りを見せようものなら一気にSNSで悪評が拡散されますし、特に若年求職者の多くはブラック企業に勤めるくらいならニートでいる方がましと考えています。

また、彼らはキラキラした働き方を求め、少子高齢化による働き手不足があらゆる業界で起きていますが、いくら賃金を上げてもインスタ映えしない仕事には人が集まりません。

 
なので、私の知り合い中小企業とかが求人を出したところで、基本うんともすんとも言いません。

 
たまに応募があっても、

大手企業を落ちまくって妥協してきた、何の取柄もなく、どんな話題にも返しが薄い人、

とか、

前の勤務先とトラブルになって辞めた、経験者ではあるが、やばそうな人、

そんな人ばかりです。

 
仕方なく雇うものなら、

トラブルが頻発し、経営者のイライラが募り会社の雰囲気が悪くなり、コミュニケーションが取りにくくなることでさらにトラブルが起き、耐えかねた従業員が退職するという負のループに陥りがちです。

採用・育成をどうすべきか 待遇を良くするしかない?

こんな状況でも、経営者の中には、鉄のメンタルなのか単に時代の変化から取り残されているのか、いずれまた景気悪くなったときに安くていい人がくるとタカを括って採用・育成のスタンスを変えなかったり、日本人がダメなら外国人と、実習生をこき使ったりする人も相当数いて、というかもしかしたらそちらの方が多数派かもしれませんが、

個人的には、そう簡単にかつての買い手市場になることはないと思いますし、この採用難に対応できた企業が次の時代の勝ち組になると思いますので、

明るい未来を目指すのであれば、採用難を進化圧と捉え他社に先んじてイノベーションを成し遂げるべきです。

 
で、具体的にどうするかですが、

まず、簡単に思いつくのは以下のことです。

【圧倒的な待遇】
大手並みの待遇(理論上はブランディングで大手に劣るので大手を超える必要あり)を用意すれば優秀な人が集まるはずです。

【儲かるビジネスモデル】
革新的なビジネスモデルを開発し、どんな従業員でも成果が出る業務であれば、ポジティブフィードバック効果により一生懸命仕事してくれます。

【誰でも育つトレーニング環境】
何の取柄もない、もしくは問題のある人たちを優秀な人材に仕上げるトレーニング環境があれば企業は自動的に成長します。

…。

いやいや、そんなことできません、できるのであれば苦労していません。

 
身の丈に合わない大風呂敷を広げられるのはせいぜい一時的なものです。

ちなみに、私の知るクソ社長は営業職を月額保証50万円で雇い、3ヶ月後に成果が上がらないといって保証ゼロの完全歩合制に切り替え、お互い罵詈雑言の修羅場となりました。

そんなんなら最初っからやらない方がましです。

採用・育成をどうすべきか 婚活を制する者は就職を制す

なら、どうするかですが、

かつて就職はよく結婚に例えられました。

ジョブ型雇用とか言われている昨今あまりに昭和的と思われるかもしれませんが、専門職で分業できる大企業と違い、中小企業では現在でもあてはまります。
(なお、上位数パーセントのモテ男&女に大半の求愛が集中するのは、数パーセントの優良企業に大半の求職者が集中する構図と同じです)

で、どのような人が婚活市場を制するかというと、

短期限定のカップリングであれば、ノリ、テクニック、豪華なデートプランで押せるかもしれませんが、

結婚前提となると、生活基盤を維持できる、健康問題や悪癖といった不安要素がない、価値観&目標を共有できる、一緒にいるとありふれた日常が楽しい、といったことが求められます。

それを企業に置き換えてみると

生活基盤の維持

企業に強みがあり、市場で継続的に勝ち抜いていけること。

不安要素がない

競合他社のサービスに大きく水をあけられているとか、後継者が育ってないが社長に健康問題があるといった、企業に脆弱な部分がないこと。

価値観&目標

企業が人を喜ばしたりワクワクさせるようなヴィジョンと、企業の収益を株主・従業員・顧客が適切に分け合うとの理念を掲げ、従業員もそれに共感できること。

日常の楽しさ

企業で働く日々が楽しく充実したものであること。

要は、世の中に必要とされるサービスを適切に提供し続けることができる社会的要請&必然性のある企業になるということです。

従業員は金と休み以上に承認欲求を求める

そんなの理想論だよ、採用・育成をやったこともないのに偉そうに語るなと言われそうです。

確かに理想論の色合いが強いのは否めません、だって、私がサラリーマン時代にそのような就業先を求めたものの、ついに巡り会うことはなかったのですから。

 
ただし、少なくとも確実に言えるのは、そのような社会的必要性のある企業でなければ長い目で見て(場合によっては即)淘汰されるということです。

何の強みもない、危なっかしい経営、自分だけ儲かればそれでよし、苦しみの日々。

誰もそんな企業の顧客になりたいと思いませんし、100人が100人さっさと潰れるべきと思うでしょう。もちろん誰も就職したいなどと思いません。

 
従業員にとってどこの会社に所属するかは自分のアイデンティティに大きく関わります。所属している会社が世の中から必要とされ、その会社の一員として貢献ができれば大きく承認欲求が満たされます。

経営者は、従業員が待遇を最も求めていると考えがちですが、待遇は従業員の承認欲求を満たす要素の一部であり、むしろ、承認欲求こそが真の働く目的かつモチベーションであり、自己実現や社会的評価が微塵も与えられないのに金と休みをもらってもかえって心がすさみます。

 
他に従業員の心をすさませるのは、

・経営者一族と従業員の扱いに明らかな差別がある
・アメ(昇進・昇給)とムチ(叱責・降格、退職)で会社にいいように操られる
・社長が従業員の言ったことをすぐ忘れ、何度も同じ質問をされる(社長が従業員に興味がない)
・従業員のスケジュールは管理されるが、社長は気まぐれでしか会社にこない。
・社内に従業員がロールモデルとするような人物がいない。
・社長だけ節税と称し高級車に乗り、ブランド品を身につける。
などです。

 
確かに経営者と従業員では立場・役割が違い、経営者はその役割を合理的にこなすべきですが、このようなことに無配慮であれば従業員の心は暗くなります。

 
 
なお、社会的必要性のある企業にしたいが、そのために従業員が必要ということもあるでしょう。

現時点では企業に社会的必要性は薄いが、従業員が加入することでそれを満たすと考えているのであれば、従業員に期待しすぎです。過剰な期待はほぼ確実に裏切られるので、計画を修正すべきだと思います。

もしくは、社会的必要性のある企業にステップアップする過程にあり、従業員の採用・育成をそれと同時並行したいという企業もあるでしょう。

それは否定しません。一人では決して達成できないビジョンはありますし、採用・育成にも企業の方向性にもトライアンドエラーは付きものです。

ただし、夢だけ大きい男が婚活市場で評価が低いように、そのような企業は求職者から見向きされなくて当然と謙虚な姿勢でなければなりません。従業員に対しては自分の夢のために頑張ってくれてると意気に感じなければならず、決して従業員の生活を守るために自分だけリスク負ってると思い上がってはいけません。

迷走する日本の採用・育成

多くの経営者は、自分ひとりでは限界だから、とか、採用したほうが売上にプラスだから、との理由で採用を検討し、育成環境とコストの目処が立てば採用に踏み切りますが、

それは企業側に大きくよった見方であり、

・会社が存続すべき社会的必要性があるか
・会社が人材を採用することで社会により貢献できるか

という観点を自戒を込めて持つ必要があります。

 
そんなことを微塵も考えることなく、うまくいかないのはすべて従業員がしょぼいからと辞めた従業員を公然と罵り、当たりが出るまで従業員ガチャを続けたとしても、不毛な雇用関係から脱却することはできないのだと思います。

 
経営者は、サラリーマン時代に優秀だった人が多く、従業員にもかつての自分が置かれていたような状況で成果が出せると思い、それで従業員がパンクすると、従業員に強く当たり過ぎたと反省するあまり今度は逆に従業員をフラジールに扱い過ぎたりします。

また、人材不足が叫ばれている業界では、新人が離脱すると中間管理職のせいにされるので、新人のどんな非常識な態度も目をつぶらなくてはならなかったりします。

 
それらは努力の仕方が違います。

そんな採用・育成迷子に陥ったときは、企業としてのあるべき姿を見つめ直すべきだと思います。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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