人間の性(サガ)へのささやかなる抵抗

個人的なはなし・意見

人間の性(サガ)へのささやかなる抵抗

無意識に気付かれないうちに自分を変える

前回のブログでは、元々は進化の過程で身につけた機能であるはずの感情、それ自体を最優先に生きることでかえってQOL(Quality Of Life)の障害となると記載しました。

【前回のブログ】人は幸せになるよう設計されていない

それで、私はそのことを人間の性(サガ)として黙って受け入れるのか。

 
人間の性ですから、完全に振り切ることはできませんし、また、感情や欲望がないとそれもまた人間として生きていくことは困難ですが、

やはり、なるべくQOLに支障がないよう抵抗を試みてしまうものです。

感情最優先の弊害

ところで、感情を最優先にするとなぜQOLを下げるのでしたでしょうか。

感情による、快、不快があまりに強烈なあまり、感情をチャンス(ピンチ)における行動迅速化という本来の機能として使用するのではなく、感情による快を享受し、不快を避けること自体を目的として行動するようになってしまい、特に、強い快感を経験すると、その快感に憑りつかれ生理的な必要性はなくとも際限なく求め続けますし、逆に、強い不快の経験により過剰な防御作用が働くことがあります。

 
例えば、食欲、性欲はそもそも生存、種の保存のために不可欠なものですが、生物的に必要な量は満たされても欲求がおさまらず暴走しやすいことを誰もが知っています。

それはアルコールや覚醒剤への依存と同じメカニズムです。

 
快の感情にはドーパミンが大きく関わり、報酬を意識することでドーパミンが放出され、欲求、動機付けが生じますが、

繰り返すことで抑制できなくなったり、耐性が生じてより強い刺激でなければ快感が得られなくなったり、止めると禁断症状が出たりします。

それは、金銭欲や名誉欲でも基本的に同じです。

 
また、人間には相手を敵か味方かに分け、不快な状況ではストレスを感じるように設計されています。

もちろん、危険を即座に回避するためであり、それを担うノルアドレナリンの役割は重要ですが、

解決の余地があっても一旦敵のレッテルを貼るとその関係性が固定化しますし、ストレスは不快でも生きるためにやらざるをえない仕事の遂行を阻害します。

こんな方法ではうまくいかない

人間の性とどう向き合うかですが、

 
まず考えつくのが、原因がわかっているならその原因を取り除くことですが、

ドーパミンやノルアドレナリンなどを分泌させているのは自分であっても、無意識がつかさどっているのでそれを意識的にコントロールすることはできません。

 
それなら、ドーパミンなどが分泌されても強い意志で我慢すればいいと思うかもしれません。

覚醒剤の使用を繰り返してしまう人や、仕事を転々としてしまう人に、意思が弱い・反省がないと糾弾する論理でしょうが、

欲望のトリガーの圧倒的な強さに対して、意志の力なんて無力なものです。

特別な訓練を受けたり、生得的に超人的意志力を持った人でない限り、ほとんど無駄な抵抗で、我慢すればするほど有限な意志のリソースは削られ、かえって瓦解が早まります。

ではどうやって人間の性と付き合うか?

個人的に考える対処法について記載したいと思います。

ムダな抵抗はしない

まずは、人間がそんな生き物であることを理解し、受け入れ、ムダな抵抗をやめることです。

そして、そのような人間の構造的脆弱性が発露しないよう、兆候が出たらさっさと脱出を図ることです。

兆候は、
・欲求への渇望、強い執着
・目前の欲求に手っ取り早い行動
・抑うつ感、感情的になりやすい
・食欲低下や睡眠障害などの身体症状
などです。

また、すでに依存症や神経症に足を突っ込んでいるのであればケアを受けることです。

認知行動療法や依存症者コミュニティへの参加、その他診療や投薬などです。

 
まぁ、当たり前のことばかりですが。

セロトニン&オキシトシンの活用

脳内神経伝達物質にはドーパミンやノルアドレナリンをはじめ100種類以上ありますが、セロトニンはストレスへの耐性や幸福感を増幅させ、オキシトシンは他社への信頼、やさしい気持ちをもたらすとされています。

様々なリスクを冒してまで報酬を得ようと渇望する気持ちを幸福感で満たし、

親愛に満ちた態度で他者と接すれば敵意のまなざしを受けることもないでしょう。

 
セロトニンは起床してすぐの日光浴、リズミカルな反復動作、意識的な呼吸、ウォーキングで分泌が高まると言われ、

オキシトシンはスキンシップで分泌が高まると言われています。

スキンシップといっても相手の意に反して行う訳にはいきませんが、パートナーがいなければ、ペットやぬいぐるみでも効果あるらしいです。

ストレス低減はバリュアブルである

日々追いこまれながら仕事をしなければならないのは地獄です。

むかしは職場が戦場や軍隊に例えられモーレツに働かされましたが、ノルアドレナリンを放出しながらまさに命を削って働いていた訳です。

現在は以前にくらべて労働環境は改善していると思いますが、大半の人にとってはマシになっただけで楽しくなったとまでは言えないのではないでしょうか。

 
せめてコスパをあげましょう。

 
といっても、同じ仕事でも賃金の高いものというより、

賃金は同じか下がっても、嫌ではない仕事にして、自分に多大な負荷が掛かるのを避けましょう。

転職するのは大変でしょうから、同じ会社の同じ仕事であっても、仕事は様々な業務の複合体であり、その業務のウェイトや切り口を変えたり、会社の評価とは別に自分なりのルールでゲーム化したりして、仕事を楽しめないか、自分の得意なパターンに持ち込めないか工夫してみてはいかがでしょうか。

 
人間は無意識が危険を感知すると非常時モードに突入します。無意識の判断なので意識がいくらこれは危険ではないと言い聞かせてもモードは解けずストレスが掛かり続けます。

無意識がモードを解く位置まで離れる必要があります。

それでも無力な人間

これらは生き方を大転換しなくても心がけ程度でできるものですが、

欲望のトリガーの圧倒的強さに対して若干心もとなくもあります。

 
これ以上の方法論は、宗教とか哲学の領域になり、一般人がおいそれとは実行できるものではありませんが、

ビジネスマン的な発想で対処してみるのも一つの手だと思います。

それについては次回記載します。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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