新年早々いい知らせがあり、昨年の11月に受験した賃貸不動産経営管理士試験に合格しました。
えっ、賃貸不動産経営管理士って何?…
って反応が大半でしょう。
事実、業界にいる私も資格の存在はかなり前から知ってはいたものの取るメリットを見いだせず放置していました。
なぜ今さら受験したかというと、特にサブリースに関わる問題が頻発することを受けて制定された賃貸住宅管理適正化法で本資格の重要性が増すらしく、しかも、出題範囲は宅建士やホームインスペクターと被るので私には手を出しやすかったからです。
とはいえ、いきなり昨年の試験問題をやって合格基準点を超えたので試験勉強はほとんどせずそのまま受験。
回答速報による自己採点で34点(50点満点中)だったので順当かと思ったものの(昨年の基準点は29点)、資格学校各社が伝える合格予想ラインが例年になく高く(30点台後半)、半ば諦め。
それで、結果的には基準点ドンピシャでギリギリ合格。
もちろん嬉しいのですが、逆にギリギリ不合格だった方に申し訳ないというか、この崖っぷち感満載の合格に空恐ろしさを感じてしまいます。
「士業」は就職氷河期世代の憧れ
私は他にいくつか資格を持っていて、ちなみに一番最初に取ったのは2級ファイナンシャルプランニング技能士でした。大学卒業後フリーターでフラフラしていた自分が遅ればせの就職活動をするにあたり何かアピールポイントがほしくて必死こいて勉強しました。
以降、宅建士とか貸金業務取扱主任者とかそんなにハードルの高くない資格を仕事の傍らで取っていったのですが、私にとって資格は人生を分けるほどのものではありません。
ただ、私の世代には資格に人生を掛けた人がいます。
私は就職氷河期でも特に厳しかった就職”超”氷河期世代ですが、この時代は就職を勝ち取ることだけではなく、運よく採用されても仕事自体がハードでした。雇用する側の立場が強くブラック企業が跋扈し従業員に過剰な労働を強いるのです。
鬼軍曹(ブラック企業の上司)に指示されるがまま肉体精神の消耗戦エンドレスか、そこからドロップアウトして仕事が長続きしないダメ人間という烙印を押された上で就職活動リターンか、
進むも地獄、退くも地獄です。
そんな劣悪な雇用環境の中で桃源郷とされたのが士業です。
弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士といった難関資格の士業です。
「資格さえ取れば、専門性を活かして、安定した収入を得て、自己実現を図ることができる!」
それは私たちにとって一筋の希望の光でした。
ただし、桃源郷には簡単に辿り着けません。勉強時間を確保するためにフルタイムの仕事をやめ、資格学校に通うまたは独学いずれにせよ年単位の期間を勉強に費やす必要があります。
実は私も一時期、桃源郷への旅を検討したものの思いとどまりましたが、私の知り合いの何人かは実際に旅立ちました。学校では成績が良かったけど営業成績はイマイチっていう内気で真面目なタイプが多かったです(私もその口ですが)。
桃源郷には辿り着けたのか!?
あれから15年以上過ぎましたが、
中にはいまだに資格が取れず塾講師なんかしながら低所得かつ独身という人がいます。就職氷河期世代のアラフォーで高学歴だけど非正規低所得だとニュースの特番で取材されているような人はこういった人です。
ほとんどは三十半ばまでに諦めてブラック企業以下の詐欺会社に就職してます。
逆に、念願叶えて資格を取得したもののブラック士業に就職してしまった人もいます。
資格ブームにより資格取得者が増えたことで希少性がなくなり顧客獲得のために毎日飛び込み営業したり、実は経営がブラックに牛耳られている士業だったり(過払い金請求している弁護士・司法書士事務所に多い)、桃源郷どころかかえって普通の会社よりひどいみたいな。
資格に人生を掛けるのは合理的か
一生懸命勉強して資格を取得し専門家として活躍し満足行く人生を送っている人はたくさんいると思いますが、士業ではない私が言うのも何ですが、資格取得に人生を掛けるのは推奨しません。
勉強のため臥薪嘗胆したものの残念ながら浮かばれることなく負け組が決定的になった人や、念願叶え資格を取得したにもかかわらず搾取され続ける人を間近で見てきたからですが、それだけではありません。
一つは、勉強期間に20代の数年間を充てることが多いですが、その期間は人生のスケールを決める上で重要な時期です。特にサラリーマンなら会社を通して身の丈以上の世界を体験できます。勉強のために自室に籠もるのはもったいないです。
大学時代に勉強するならいいとも思いますが、資格の勉強に劣後する大学専門教育なり、資格学校に劣後する大学って価値があるのかということにもなります。
もう一つの理由は資格の種類によりますが毎年何百人、何千人と合格者が出ますし、試験対策は暗記が中心でネットで検索すればわかるようなことをただ覚えます(さらに実務上は取り扱いが違っても試験ではあくまでも教科書的内容が問われます)。つまり、資格を取るのは大変ですが、取っただけでは専門知識&独占業務に付加価値はほとんどなく、そこからさらに付加価値を身に着けるまでの期間が必要です。プロセス全体の労力・コストに対しリターンが見合わないように思えます。
結局、できる人間は何をやってもいずれ芽が出る
あなたはそう言うかもしれないが知り合いの士業は優秀で人柄も良く素晴らしい人だよ!って反論もあると思います。
それは否定しません。私がお付き合いしている士業の方もみんな優秀で良い方です。
でも、それはその人がもともと地頭が良く、良い人間性を備えていたからです。
たぶん、士業という仕事を選ばなくても優秀な人材となったでしょう。
中途半端な人材に起こる人生の分断
同時に、私と同世代で桃源郷を目指し旅立ち途中で挫折した人たちの中には本来であればそれなりに活躍したであろう人材がたくさんいたはずです。
あの時、桃源郷を目指さなければ今頃は大活躍していたはず、とまでは言いませんが、それなりに自分に合った社会的ポジションに就いていたのではないでしょうか。
彼らはブラック企業に翻弄され、さらに資格にも翻弄された。
潜在的に能力のある人材が浪費されることはいつの時代にもあることなので仕方がないですが。
ただ、もし私が20代で桃源郷を目指し旅立っていたら…
そんな想像を巡らすと、私自身ギリギリ生き延びたこの崖っぷち感満載の処世術に空恐ろしいものを感じます。
shiro-shita
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