祖父の愛したゴミと不動産①

城下個人的

祖父の愛したゴミと不動産①

私なりに祖父の人生に思いを巡らす

私事で恐縮ですが、先日祖父が他界しました。

享年95歳でしたので十分過ぎる程に生きました。

親族としては介護で手が掛かった訳ではなく、警察OBで年金が手厚く生活に困ることもなく、私としては管理物件のオーナーとしてお仕事を頂戴していたので、いくら感謝してもし足りないといったところです。

死因は腎不全となっていますが、入院も今年春先くらいなので、特別に苦しんだ方ではないと思います。平たく言って老衰でいいのではないでしょうか。

 
 
祖父は1923年生まれのいわゆる大正世代で、第二次世界大戦に出兵し、焼け跡から高度成長を遂げました。

前述のように祖父は警察、といっても警察車両の整備をする専門部署でしたので、躍動する時代の中で目立った働きをした訳ではありませんが、人生前半の貧困、それ以前の死と隣り合わせの生活から一転して安定した生活を送りました。

 
私にとって職業人としての祖父は警察職員というよりむしろ大家業でした。

祖父は貧しい時代の癖が抜けなかったのか類稀な節約家で、爪に火を灯して蓄えた財産を不動産に替えました。

当時は住宅難で空室が出るとたちどころに入居者が決まったそうです。しかもインフレ傾向なので以前よりも家賃が上がります。

 
その成功体験が祖父の人生を決定付けました。

 
祖父のようにあくまでも家賃収入をメインにしていると収益は安定しますが、大きなお金が入ってくることはありません。収益を大きくするには次の物件を買わなければなりませんが、物件を買うためには節約を重ねて家賃を貯める必要があります。

「節約して貯める」「銭こほしい」

そのシンプルな成功法則を究極的に体現したのが祖父の人生でした。

成功の代償!?

節約して貯める、そのシンプルな成功法則さえあれば他の方法論や価値観は不要です。

不要なものは聞く必要もありません。

すでに結論に達している以上は誰かと会う必要もありません。

 
老年に差し掛かる頃には、昔の仕事仲間も、大家業つながりも、町内会も、親族すらも交流はほとんどなく、特に祖母に先立たれた後は、たった一人で自宅の居間に座り続けました。

 
そのシンプルな生活とは裏腹に自宅は物で溢れかえりました。

物を捨てないのです。

“勿体無い”というのはこの世代であれば誰しも共通するところでしょうが、家の中に入りきらなくなった物品は敷地外に積み上げられ二階に届くほどです。

いわゆるゴミ屋敷です。

それは”暗い”ということ

たくさんご恩のある祖父について言い過ぎではないかとも思いますが、

多分、祖父はそれで何の問題はなかったのだと思います。

寂しくも辛くも恥ずかしくもない。

自分のしてきたことに間違いはなく、もちろん後悔も微塵もない。

一切のブレのない自分の価値観を持てたのですから、ある意味では幸せな生き方だったのでしょう。

 
 
しかし、私をはじめとした多くの人は祖父のようなブレない価値観を持てません。それは努力ではなく性質の問題です。

私のような特殊ではない人間にとっては祖父の生き方は経済的な貧困とはまた別の問題で耐えられなさそうです。

 
頑迷というか暗いというか。

 
祖父の暗さは、時代と環境の影響が大きいと思いますが、現代に普通に生きる私たちが絶対にそうならないという保証はありません。

 
もちろん、誰しもが暗くなりたいとは思っていませんが、ただ暗さに飲み込まれまいと逃げても逃げ切れる性質のものではなく、かえって意識的に向き合って対処する必要があるのだと思います。
(次回に続く)

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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