悪意で情報弱者をカモるビジネスの市場規模は莫大
世界的なインフレ傾向に円安が追い打ちをかけ、投資に対し保守的な国民性と言われる日本でも、タンス預金・銀行預金の危険性が声高に叫ばれるようになり、目下、投資勧誘業者はかきいれどきです。
しかし、”投資=怪しい”というイメージが払しょくしきれないのもまた現実で、実際に投資でカモられた人がゴマン、というか五万を遥かに凌駕しています。
そういった方々はたまたま投資が裏目に出て損をしたというより、そのリテラシーの低さから意図的にカモられたのであり、
そのようなまっとうな投資ではく、悪意を持って情報弱者をカモること自体がビジネスとして確立しています。
投資を装った情弱ビジネスの類型
そのような悪意の情弱ビジネスにはいくつかパターンがあります。
素人にプロ向け商品を売る
投資のプロは信用取引や先物取引、FXといったハイリスク投資で儲けを出していますが、素人がいきなり手を出すのは危険です。それを知ってて勧誘するのは悪意の情弱ビジネスです。
投機・ギャンブル
新興国コンドミニアムの転売目的青田売りは最後に掴んだ人が損をするのでババ抜きに例えられます。誰もババを引かないと(販売が思わしくないと)自転車操業のデベロッパーが倒産し工事がストップしたりします。暗号資産は最近では通貨として使う人は少数派で、ウェブ上の特定サービスでの利用と値上がり目的が主となっています。
投機性・ギャンブル性を認識の上でやるのであれば問題ありませんが、客観的な根拠があるとか、いかにも値上がりしそうにデータを見せかけて勧誘するのは悪意の情弱ビジネスです。
詐欺
上記2つは不利な状況ながらもゲームに参加しているのでまれに勝ち抜くことがありますが、詐欺はそもそも架空の話なので、どんなに努力しようが運が良かろうが実を結ぶことはありません。完全に悪意の情弱ビジネスです。
架空の話なのでストーリーが投資である必要もなく、寂しい男性に交際をちらつかせながら資金援助させたり、外見にコンプレックスのある女性に高額美容商品を買わせたり、確認したい取引履歴があると言ってフィッシングサイトに誘導したりと様々です。
逆に、業績が悪く続落する会社の株式や、立地や間取りが悪い割に強気な価格で売られているアパートなんかを販売している証券会社や不動産会社は、客が知識が低いのをいいことに、商品をことさらに有利だと信じ込ませたり、不利な情報を隠したりしない限りは、商品ラインナップにあるというだけで悪意の情弱ビジネスではありません。
まっとう投資の勧誘か、悪意の情弱ビジネスかを見分ける方法
悪意がある
まっとうな投資と情弱ビジネスを分けるのは悪意の有無です。
(悪意がなくても損をすることがありますが、それは投資の本質です)
人間は高度に社会的な動物なので、悪意のある相手と接すると、相手のしぐさや微表情で、違和感や不信感を感じ取るものです。
しかし、悪意の情弱ビジネスでは知人が紹介者になるケースが多く、知人が騙されていて善意で紹介していると見抜くのは困難で、悪意ある人たちはそれを巧みに利用します。
逆に、まっとうな投資の勧誘でも、営業マンや紹介者が罪悪感を持ちながら勧誘していることはよくあります。勧誘が成功することで営業マンに成績、紹介者にキックバックといった利益が生じることの後ろめたさや、まっとうな投資とはいえ勧誘する側にとっては見飽きた商品だったりするからで、その罪悪感が客の気持ちにブレーキを掛けたりします。
向こうから寄ってくる
こちらから問い合わせや資料請求といった見込客アピールをしていないのに、知人の紹介とか、飛び込みやテレアポでわざわざ勧誘してきて、しかも、特別有名人でも金持ちでもないイチゲン客にココだけの極秘案件を持ってきたりします。
投資先を探している人はたくさんいて、というか人数というより投資用にストックされているマネーは夥しい量があり、優良な投資案件であれば広告や営業をしなくても買いが入ります。
わざわざ勧誘し対面で営業するのはそうじゃなければ売れない投資商品だからと考える方が自然です。
流行モノ関連
これからブームになるともてはやされているものは、今が投資すべきとのストーリーを作りやすく、その分野に詳しい人が少なく、規制や注意喚起が追い付いてなかったりするので悪意の人たちにとってはホットなフィールドです。
情弱に限ってよく知らないことを知っているふりをすることが多く、悪意のある人たちはそれを褒めたたえ承認欲求を満たしながらイエスセットで契約に持ち込みます。
大手を窓口にすればとりあえず安心
名の知れた大手の投資勧誘業を窓口にしていればまず詐欺に巻き込まれることはありません。初心者の方やリテラシーの低い方はその方が無難です。
ただし、勧誘業者が大手であるとか担当者が人がよさそうということと、商品が投資目的にとって合理的かどうかは別ですので、それだけで商品を選んでいたら投資家としての見る目が育ちません。
それに、そもそも、いくらインフレだろうが円安だろうがリテラシーの低い人は投資をすべきではありません。投資をするには投資は事業で自分は事業主だという認識が必要です。
リスクとリターンがトレードオフしていない
リスクとリターンのトレードオフとは、リターンが高いものは元本割れといった損をするリスクも高く、反対にリスクが低いものは大きなリターンを得られないという投資の基本概念です。
そのことは、市場が完全に透明であれば、ハイリスク商品もローリスク商品もリスクで割り引いたリターンは等しく期待値は同じであることを意味します。
リターンが高くリスクが低い夢の非対称性投資は、市場に出る前のクローズな状態で投資できたり、インサイダー的な情報を掴んでいるといったごく限られた場合ですが、そうでないのなら、悪意により加工された情報の可能性があります。
世界は悪意に溢れ、悪意でもって形成されている
投資を謳った詐欺のニュースは日常茶飯事であり、テレビでそんなニュースを見聞きすると、
「あんな手口に引っかかるなんて…」という感想を抱きがちです。
しかし、悪意の情弱ビジネスは、ごく一部の悪者がごく一部の情弱を相手とする限定的世界で起こっているのでありません。
私がかつて勤めていた会社はとある私募ファンドと強いパイプがあったので様々な投資案件が持ち込まれましたが、東京の大型案件のほとんどは出所不明の与太話でした。
何年か前に積水ハウスが地面師に引っ掛かったことが大きく取り上げられましたが、あんなの氷山の一角です。
被害者がたまたま誰もが知る超王手で被害額も大きかったので大々的に報道されましたが、被害者が一般人で、被害額もさほどでなければニュースにすらなりません。
さらに言えば、悪意で情弱をカモにすると言っても、悪意もリテラシーの低さもその程度にはっきりとした境界がなく、完全無比なる悪意の情弱ビジネスだけではなく、若干悪意が混じった情弱をメインターゲットとするビジネスもあり、そこまで拡大解釈すると、いわゆる普通のビジネスも多く含まれてしまいます。
通信キャリア大手がどうみても過剰なデータ通信量を高齢者に契約させていると問題になったことがあります。
悪意のあるやり方と企業努力との境界はありませんし、リテラシーの低さはどこまで保護されるべきかとの国民的なコンセンサスもありません。
仮に規制したり、新たなテクノロジーを用いてセキュリティを上げたとしても、かえって悪意のある人たちへの進化圧となり遅かれ早かれ手口がアップデートされますし、新たなテクノロジーに対応不能な最もリテラシーの低い人たちはより危険な状況に置かれます。
実はかく言う私も被害に遭ったことがあります。
信用していた人(その人も騙されていた)の紹介かつ、一度儲けて調子ついたところをハメられました。
自信があり、疑いもしないことこそ最大のリテラシーの欠如なのです。
shiro-shita
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