両手仲介の弊害
当たり前のことですが、不動産の売主はなるべく高く売りたいものです。逆に買主はなるべく安く買いたいものです。
売主と買主の利益は相反関係にあると言えます(少なくとも価格に関しては)。
仲介をする不動産会社は売主、買主の媒介人として相手方に交渉しますが、一つの仲介会社が売主と買主の両方の媒介人を務める両手取引では利益相反が生じるので、裁判で原告・被告それぞれに弁護士が付くように、売主か買主のどちらかだけを担当し、相手方に別の仲介会社が入るエージェント制が望ましいとの声があります。
特に両手取引が弊害になるのは、
仲介会社が買主から物件購入後に管理を受託したり、転売する際に再度仲介に入る、といった見返りを得るために、仲介会社が買主に有利な(売主に不利な)条件に誘導するような場合です。
売主は不動産を売ってしまえば終わりですが、買主は物件購入後の利活用で仲介会社にビジネスチャンスが発生することがあります。
それをエサに釣られるのです。
エージェント制がベストなのか!?
不動産取引の先進国であるアメリカではエージェント制が定着していますが、日本では両手取引が規制の方向にないどころか(民主党政権下で少しありましたが)、両手取引のために、売主から売却の依頼を受けた仲介会社が他の会社に物件を紹介しない所謂「囲い込み」が最近まで当たり前のように行われていました。
また、囲い込みしてなくても、買主に仲介会社が入っていると取引を潰そうとばかりに雑で高圧的な対応をする仲介会社が今でも普通にいて、仲介者のモラルを高めていくことが業界における最大のミッションです。
ただし、エージェント制にも問題があります。
まず、物件についての知識です。
買主側エージェントは物件についての知識がどうしても売主側のそれより低くなります。顧客としては詳しい人に仲介してもらうに越したことはありません。
そして、片方のイエスマンに徹することが必ずしも取引を有利にしないということです。
交渉で有利な条件を勝ち取るには、交渉の相手方を持ち上げていい気分にさせたり、または依頼者の耳に痛いことを言ったりする必要がありますが、それは単なるイエスマンにはできないことです。
仲介会社もクライアントも今のレベルのままエージェント制になっても浅はかなポジショントークが横行するだけでしょう。
エージェント制には課題があり、世の中的に推し進めようという熱量は決して高くないので、日本で両手仲介がなくなることはしばらくないでしょう。
ただし、両手仲介に欠陥があることは確かなので、クライアントが自分の身を守りたければ自らリテラシーを高め自衛せざるをえないでしょう。
shiro-shita
最新記事 by shiro-shita (全て見る)
- 弊社の第6期が終了しました - 2024年11月18日
- 【解説】負動産の処分プロセス - 2024年11月1日
- 【解説】不動産賃貸のプロセス - 2024年10月28日