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退去交渉の肝は粘り強さと人情
老朽化し入居者の質が落ちてしまった古貸家・古アパートは、収益低化のみならず、トラブル発生リスクも上昇しがちです。
そして、実際に賃借人とのトラブルが発生すると、頭によぎるのは賃貸借契約の解約です。
トラブルのみならず、建替えを行う場合も解約が必要です。
賃貸借契約の解約にはどのような壁、問題があり、どういったスタンスで臨むべきなのでしょうか。
賃貸借契約書では貸主から解約できるとなっているが…
賃貸借契約書の中には、貸主から借主に対し相当の期間をもって予告すれば解約できる的な記載があるものもあります。
また、賃貸借期間が2~3年で設定され、お互いが合意すれば期間が更新される、逆に言えばどちらかが更新を拒絶すれば期間満了をもって契約が終了すると読み取れる記載があります。
しかし、どちらも借地借家法上は通用しない条文です。
民法上は契約自由の原則があり、基本的にどんな契約条件を設定してもいいのですが、借地借家法では、そのような貸主からの解約を禁じており、借地借家法の規定が民法に優先される強行規定となっているのです。
借主のリテラシーが低く無効であることをわからずに契約書の定めのまま承諾してくれることもありますが、たいていの借主はいざ退去を迫られると知人等に相談しそれなりの理論武装を行うものです。
借地借家法では、貸主からの退去には期間内も期間満了時も更新後も正当事由が必要と定められています。
正当事由が不足する場合は立退料で埋め合わせればいいか…
正当事由とは貸主がその部屋を自分で使うとか、耐震性が低く建替えが必要ということも一応は該当します。
ただし、借主側のと比較するので「持病があり通院には現住居が欠かせない」といったそれを上回る切実な事情があれば、借主に軍配が上がります。
貸主と借主のどちらの事情が差し迫っているのか天秤に掛けるのです。
(冒頭の画像のように)
それでも貸主が退去を求める場合はそのギャップを金銭で埋めるということになります。それがいわゆる立退料です。
立退料の金額は双方の事情の乖離の程度なので、ケースによって異なり絶対的な基準はありません。
しかし、仮に貸主側の正当事由が入居者のそれを上回る状況で、それに加えて貸主が立退料を提示したとしても、借主がゴネて応じない場合は、司法的手続きでその主張が認められなければ強制できません。
貸家やアパート一室で裁判をするのは費用、期間の面で考えると多くのケースで割が合いませんので、あくまでも、正当事由や立退き料の話はしながらも、裁判は抜かずの宝刀としてチラつかせるだけで、その手前で話をまとめなければなりません。
退去交渉の肝は法律ではなく粘り強さと人情
つまり、退去交渉は、契約書にどう書いてあるとか、どちらの正当事由が法的に優位かということよりも、お互いの事情を汲みながら落としどころをみつけていく人間的な話し合いなのです。
そこで重要なのは粘り強さと人情です。
借主だって貸主に白い目で見られながらこのまま住み続けるのは気持ちのいいものではありません。誠意が伝われば入居者だって引越すべきだと思います。高齢だったり収入がなかったりすると引越し先を探す難易度は上がりますが、気持ちが伝われば借主に引越先の条件を妥協してもらいやすくなります。
なので、法律を根拠に高圧的な態度を取ったり、いきなり内容証明郵便を送りつけるのは最も慎むべきスタンスです。
対面で事情を説明してお互いが同じ方向を見ながら解決を目指すというのが望ましいのです。これまでの長年の付き合いの中で築いた関係がものをいうことになるのは言うまでもありません。
ただし、人情が重要ということは逆に言えば、常識が全く通じなかったり、認知力に問題のある相手はお手上げだったりします。
なお、借主への提案の一つとして、今より安い賃料にするからと定期借家契約に切り替えていく方法があります。定められた契約期間が満了すると更新がなく契約は終了します。時間は掛かりますが、迷宮入りするくらいなら定期借家契約でワンクッション置くのも手です。
造作買取請求権にも注意
注意点として、退去を求めた際にこれまでの借主が行った修繕部分の買取、費用の償還を求められることがあります。
一般的な賃貸借契約書では借主の造作買取請求権は否定されていますが、
契約書がなかったり、契約書があっても許可を得たと言われたり、退去を求めるという特別なケースだから契約約款は関係ないと主張されたりします。
また、貸主が本来行う必要のある修繕を怠り、代わりに借主が行った場合、借主は貸主にその修繕費用は有益費として償還請求することができます。
賃料が低いからと修繕を怠り、何か取り決めても書面に残すことをしないグダグダ管理だとこういったときに後悔します。
老朽化して低収益化するほどちゃんと管理しなければならないのです。
shiro-shita
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