ご自身の物件を客観的に把握してみましょう
賃貸不動産の空室が増えてきたら間髪入れずに入居策を講じたいところですが、
【関連記事】賃貸物件の入居策まとめ
物件の現状分析が不十分だと明後日な方向の入居策を展開してしまう恐れがあります。
「物件が顧客から選ばれていないのは何に問題があるか?」
そこをまずしっかり把握します。
把握した上で「その問題を除去することはできないか?もしくは他の良さで補えうことはできないか?」そのような問題解決の仮説が入居策です。
仮説の精度を高めるためには精緻な現状分析が不可欠なのです。
賃貸物件の分析手法
①物件基本データ分析(というか再確認)
現状分析というと物件の問題点を洗い出すことが主目的に考えられますが、実は改めて確認するとそもそもの基本データが間違っているということがよくあります。
築年月、間取、畳数、設備仕様…
古い物件だと特にです。
数十年前は今ほどパソコンが高性能でも普及もしてなく、また、不動産業界が間違うことに神経質ではなかったので、登記簿や建築図面をちゃんと確認しないで直近の契約書や募集資料のデータを引用しているうちにどこかで誤植が発生し、それが延々と引き継がれるのです。
私自身が引き継ぎを受けた物件の資料はどこかが少しずつ間違っていてそのまま使えるものがないってことが多いです。
そういった基本データが間違っていると分析する上での根本が揺らぎます。
また、間違った内容で入居者を勧誘し入居させると損害賠償請求を受ける恐れもあります。
現状分析を行う上で基本データを再確認しましょう。
②ファンダメンタル分析
室内洗濯機置き場がない
風呂とトイレが同室
間取はファミリータイプだが駐車場がない
管理が行き届かず共用廊下はゴミとカビだらけ
そういった物件であればなかなか入居者を獲得しづらいのは明白です。
逆に、
駅から徒歩5分
スーパー、学校へのアクセスがいい立地
開口部が公園に隣接している
清潔感溢れる共用部
そういった物件であれば明確な強みとなります。
物件のファンダメンタルな長所、短所を把握しましょう。
③プロモーション分析
一般客のように不動産検索ポータルサイトで物件を検索してみてください。
物件は簡単に検索されるでしょうか?
もし、検索結果の2ページ目以降みたいなところだとまず顧客は辿り着きません。
あまりに他物件に埋没しやすい条件だと、現代の不動産検索サイト全盛の時代には非常に不利です。
ついでに物件の広告を確認してみましょう。
・写真が掲載されていない
・間取図は建築図面をスキャナしただけ
・物件の謳い文句が「日当たり良好」とやっつけ感丸出し
・そもそも広告掲載されていない
そんなんだったらソッコー不動産会社にクレームを入れるべきです。
それと、不動産業者間で利用される物件資料も確認しましょう。
注目すべきは下段です。
これは成約時に入居者が払う仲介手数料を折半するという意味です。
例えば5万円の家賃の物件に入居者を斡旋した不動産会社は2.5万円しかもらえないということになります。
世の中には入居者を斡旋した不動産会社は仲介手数料を丸々受領した上に、広告費として家賃の数ヶ月分を大家から受領できるという物件もあります。
物件の良さが際立っていたり、競合物件も広告費が支払われないのであれば広告費なしでも問題ないでしょうが、逆の状況で、物件の差別化が不十分、競合が広告費を拠出しているのであれば広告費なしで他の不動産業者はまず動きません。折半なら取り扱うなと言っているに等しいです。
④競合分析
人口減少エリアでない限りは、物件の空室が増えると言うことは、他に商品性が高かったり、お得な物件があって、そちらに顧客が取られているということです。
なので、既存の物件の現状分析をする上で競合分析は欠かせません。
同一もしくは類似エリアにある、価格帯の近い、間取りの似ている物件を競合物件として分析しますが、
統計データとして公開されているレベルよりもかなりミクロな分析になるので、そのエリアに管理物件がたくさんありデータが蓄積されているという以外は、インターネットを駆使したり現地に足を運んだりしてシコシコ情報を集める必要があります。
そして、それらを立地、建物グレード、室内面積、設備仕様等でスコアリングし、競合物件の賃料から自社物件の賃料を逆算して妥当性を確認します。
ただし、情報収集できた競合物件は不動産ポータルサイトに載っている募集中の物件でしょうから、競合物件も空室に悩んでいるということもありえます。
なので、継続的に募集状況を確認してその物件が成約するかどうか追っかけたり、その物件全体の入居率を把握したりして、募集条件の比較に留まらず、競合物件の現状をつまびらかにします。
その競合物件が空室期間が短く、空室率が低ければ、その募集条件は妥当ということになりますし、
その競合物件も募集で苦戦し、空室率が高ければ、その競合並みの条件にしたところで良い結果は望めそうにありません。
まとめ
様々な切り口から分析すればする程、問題は多々炙り出されるでしょう。
とは言え、すべての問題をクリアしなければならない訳ではありません。
競合物件だって完璧ではないはずです。
分析を重ねると、物件の商品性は不完全であってもこのラインを上回れば顧客の要求水準を満たしそうだということを感覚的に掴めたりします。
そこは分析の一応のゴールです。
しかし、不動産賃貸業は経済情勢、住宅政策、都市計画といった大きな流れの中で、とりわけ分譲新築住宅産業のトレンドに引っ張られる形で存在するそもそも流動的で、さして主体的とは言えない産業です。
そのラインは日々刻々と変わり続けます。
その変わり続けるラインをウォッチし続ける研究心を不動産賃貸業では求められるのです。
shiro-shita
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