刑務所出所者への賃貸住宅を前向きに考えるためには②

不動産知識・テクニック

刑務所出所者の賃貸を前向きに考えるためには②

斡旋には関係各所の協力とオーナーへのメリットが不可欠

前回、出所者の住まいの確保の困難さについて言及しました。
<前回のブログ>刑務所出所者への賃貸住宅を前向きに考えるためには①

不謹慎な言い方かもしれませんが、出所者は賃貸住宅を借りたくてもなかなか貸してもらえず困っているので、そのニーズをアパート経営に取り組んで双方がWin-Winとなることはできないでしょうか。

出所者の賃貸斡旋を阻む壁

とは言うものの検討の初期段階でいきなり壁にぶち当たります。

出所者数が少ない

まず、出所者の人数ですが、法務省の資料によると平成27年は全国で2.3万人程度だったそうです。

うち帰るべき場所がない方は5000人弱。

 
年間の人数なので、帰るべき場所がない方が蓄積されていることもあるかもしれませんが、そうだとしてもはっきり言えばそれだけでビジネスにするのは厳しい人数です。

一棟丸ごと一気に出所者で埋めるみたいなことは難しそうです。

単価が低く確実性もない

出所者が求める順序は、①住まい、②仕事(もしくは生活保護)です。

住所がないと仕事も生活保護も得られないですからね。

収入が確定しない状況で住まいを決めなければならないので、家賃は極めて安くが条件です。

ビジネスにならない、オーナーにメリットがないから入居が進まない

なら、不動産オーナーの出所者を受け入れるベネフィットはというと、

出所者の足元をみて通常では入居が決まらない部屋を借りてもらえるかもしれないことぐらいです。

…。

保守的な不動産オーナーであれば月数万円のインカムのために不確実性を取りません。

 
現状、不動産オーナーには出所者を受け入れるメリットはほとんどなく、受け入れているのはすでに様々な事情のある入居者を受け入れていてリスクテイクに寛容になっているオーナーくらいです。

そこが出所者の賃貸住宅入居が進まない最大の問題でしょう。

ビジネスチャンスは自ら動く者に訪れる!?

ただし、ただ待っているだけであればビジネスにはなりにくいでしょうが、

積極的に出所者を受け入れることをアピールすれば現時点ではオンリーワンになる可能性はあります。

特に出所者支援を行なっている団体等にとってそのような申し出はウェルカムでしょう。役所は再犯防止推進法という法律を作り、出所時に帰るべきところがない出所者を減らすべく数字目標を作っています。

 
そして、そのような支援者とのネットワークは実際に賃貸運営していく上でも欠かせません。

出所者を入居させて賃料をもらえば終わりではなく、出所者特有のリスクに備えなければならないのです。

棟内や近隣の住民が不安になったり、

再犯を犯して刑務所に戻り解約せざるをえなくなったり、

室内で事件沙汰になったり、

 
それらのリスクを低減させるためには支援者の協力が不可欠です。

支援者の目が届いていることで周囲も安心しますし、出所者が不安や絶望を感じることがなければ再犯リスクも低下します。

 
 
結局は支援者頼りということになってしまいますが、現時点ではそうならざるをえないでしょう。

役所としても民間賃貸に任せてはい終わりで済むとは思ってなく、本腰入れて対応するために法整備までしたのでしょうから。

 
ただし、支援には人を配置したり予算が必要です。罪を犯した人に税金を投じることには異論もあり、法整備したものの結局は予算を勝ち取ることができず形骸化する恐れがあり、そこはよくよく見極める必要があります。

可能性はあるものの現時点では私が勉強不足でファンタジー感否めず

出所者に対する世の中の接し方、価値観の全てを変えるには多大な時間と努力を要しますが、

局所的(特定の出所者の身の回りだけ)でも住まい、仕事に相談できる人といったサポート体制が整えばWin-Winを構築できうると思います。

 
ただし、

現時点ではそれは想像の域を出ない言うならば“ファンタジー”です。

私自身に何のアクションも伴っていないのでこれ以上の検討や議論が不能です。

今後そのような機会に恵まれれば追加報告させていただきたいと思います。

The following two tabs change content below.

shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

刑務所出所者への賃貸住宅を前向きに考えるためには①刑務所出所者への賃貸住宅を前向きに考えるためには①前のページ

会社の1期目が終わりました!次のページ会社の1期目が終わりました!

ピックアップ記事

  1. アパート1棟買っちゃいました ~個人的不動産投資談①~
  2. 祖父の愛したゴミと不動産①
  3. 大家・管理者のための入居審査の勘所
  4. 不動産向け融資が凍結されている今、「しょっぱい不動産投資」で糊口を凌ぐ
  5. 不動産管理業はこれから厳しい!?将来誰も不動産管理してくれなくなる前に”アセット…

関連記事

  1. ”負動産”はいったいいくらなのか ​

    不動産知識・テクニック

    ”負動産”はいったいいくらなのか ​

    負動産が疑われる市街地から離れた原野、山林、農地の価格を考えてみましょ…

  2. リフォーム済物件に一目惚れしてフルローン組んだが大丈夫か!?

    不動産知識・テクニック

    リフォーム済物件に一目惚れしてフルローン組んだが大丈夫か!?

    リフォームによる価値増加の賞味期限ってどれくらい?長らく日本の住宅…

  3. 自主管理のすすめ

    不動産知識・テクニック

    賃貸アパート&マンション自主管理のすすめ

    自主管理でアパート経営のレッドオーシャンを勝ち抜きましょう!今後の…

  4. 不動産知識・テクニック

    アパート・マンション自主管理マニュアル①「入居者からの連絡受付体制」

    過去記事ですが、今後、アパート経営がより厳しさを増す中でいっそのこと自…

  5. 限界マンションや再建築不可物件の価格

    不動産知識・テクニック

    負動産の価格はいくらか? 限界マンションや再建築不可物件など ​

    限界マンションに再建築不可、共有持分に事故物件まで 様々ある負動産…

  6. 不動産知識・テクニック

    アパート・マンション自主管理マニュアル⑰「経営計画」

    第17回(最終回)は経営計画の策定・実行についてです。目先のキ…

  1. 売り手自らが不動産を主体的に売却するための「現状分析」の仕方

    不動産知識・テクニック

    売り手自らが不動産を主体的に売却するための「現状分析」の仕方
  2. それなら不動産営業はどうすべきか!?①

    業界動向

    それなら不動産営業はどうすべきか!?①
  3. 古アパート&古貸家が陥りやすい問題とは? ​

    不動産知識・テクニック

    うまくいっていない不動産ほどコンサルティングが必要! 古アパート&古貸家が陥りや…
  4. しょっぱい不動産投資「築古戸建」編

    不動産知識・テクニック

    しょっぱい不動産投資「築古戸建」編
  5. 不動産の現場販売は終わるのか!?①

    業界動向

    不動産の現場販売は終わるのか!?①
PAGE TOP