時代錯誤なしょぼい不動産賃貸経営はかえって競合物件をアシスト…
「アパート退去連絡が来たその翌日には次の入居者決定!しかも家賃アップ!」
好景気・人口増・住宅難と不動産賃貸業への強烈な追い風が吹いていた昭和中期にはそんなことがフツーにあったようです。
今では、退去の連絡が来て、敷金を返して大家負担でリフォームを行い、家賃下げたものの次の入居者がいつ決まるか見通せない、という物件が多数派かもしれません。
混迷を増す世の中・人口減・空家問題と不動産賃貸業への逆風が吹いている訳ですが、逆風は一時的なものではなく、これからの時代のスタンダードである以上、不動産賃貸業は「in逆風」を前提に経営戦略を立てなければならないのは自明です。
「えっ、でもうちのアパートは特にこれといったことしていないけど満室だよ」と仰る人も中にはいるかもしれませんが、
それは、その物件は数少ない勝組物件だからかもしれません。
不動産の価値は立地や建物の主要構造に大きく依っているので、不動産のポテンシャルが高ければ競合物件が出てもそう簡単にその優位性を失うことはなく、そういった物件は特段の策を講じずにハイパフォーマンスを維持できます。
それか、入居者がたまたま長期で入居しているからかもしれません。
賃貸とは言え住み替えはお金も労力も掛かるのでちょっと不満があるくらいでは退去しません。ファミリータイプで小世帯のアパートだと一旦満室になると何年もそのままロックされますが、その間に市場環境が変化し、次に空室が出ると新たな入居者獲得に苦労することもあります。
もしくは競合がしょぼいのかもしれません。
入居率が下がってきても市場動向を分析することなく、物件をバリューアップせず、入居者募集条件も以前のままの物件だったらしょぼすぎて競合になりえません。
えっ!ちょっと待って、勝ち組の物件だったり、長期入居者はわかるけど、そんな低次元な大家はさすがにいないでしょ!?
と、思うかもしれませんが、
実は結構いるんですよ。
昭和のままのしょぼい不動産賃貸業
しょぼい不動産賃貸業はどんなのかと言うと、
インターネットに物件の入居者募集情報が掲載されていない。知り合いのやはり終了間際の時代錯誤不動産屋の店頭にかろうじて手書きの張り紙がある程度。
ネットに情報が載っているもののかえって物件に魅力がないことを知らしめることになり他の物件の価値を相対的に高めている
完全に終わってるのは論外ですが、引き立て役になっている大家も実はかなり多いです。
しかもそのことに全く気付いていないのです。
自覚症状がないので、どういった大家が陥っているかチェックリストを設けました。
・貸室のバリューアップに使う費用はどんな物件であろうが家賃3ヶ月分以上は出したくない
・退去時に理屈こねる劣悪入居者が多いので敷金は2ヶ月分以上必須
・広告費の仕組みを知らない
・入居が決まらないのは不動産会社に力がないからだ
・不動産会社がネットに掲載した物件情報を見たことがない
要は昭和の感覚が抜けていない大家です。
昭和の頃だと、大家には有象無象の不動産会社が物件扱わせてくれと押し寄せてくるので、大家に有利な契約条件へと導くために、不動産会社同士を競わせ、いち早く決めてくれる不動産会社と付き合うというスタンスは合理的でした。
大家はあえて入居のハードルを高めることで不動産会社の本気を引き出し、
不動産会社は今後の大家との付き合いのために顧客を物件に誘導し煽る、
そんな蜜月相乗効果を生みました。
しかし、現在ではそんな大家の物件は不動産会社にとって決めにくい上に儲けになりません。
そんな大家に入居策を提案しても感謝されるどころか逆に嫌な顔をされるし、かといって断ると角が立つので仕方なくネットに掲載する程度です。
なのでごく稀にその物件に問い合わせがあっても、その物件と一緒にもっと決まりやすい身入りのいい物件を見せてそちらに誘導します。
不動産賃貸業のコアとは何か?
何を抜かしてるんだ!お前は不動産会社だろ!不動産会社は入居者決めるのが仕事だろ!自分の至らなさを人のせいにするな!決める自信がないなら他の不動産会社に頼むぞ!そんなレベルで不動産会社を名乗るな!
と一部の大家からお叱りを受けそうですが、
でも考えてみてください。
”不動産会社が必死に入居斡旋してかろうじて成り立つ不動産賃貸業”ってビジネスとしてヤバイ水準だと思いませんか?
不動産賃貸業についてマーケッティングで使われる4P分析をしてみると
立地、建物グレード、築年数、間取、広さ
ランニングコスト(賃料、管理費)、イニシャルコスト(敷金、礼金)
広告(インターネット不動産検索サイト、不動産会社店頭広告)、営業(キャンペーン、不動産会社による顧客へのプッシュ)
確かにPlaceとPromotionの2つの分野を不動産会社が担っているケースが多いですが、不動産賃貸業の最もコアとなる要素は、
もちろん、「貸室(Product)」です。
飛び抜けて魅力的な貸室ならいくら払ってでも住みたいと言う人もいるでしょう。
次は、「賃貸条件(Price)」です。
やはり価格は重要です。
「不動産会社(Place・Promotion)」が広告・営業を担い大家と顧客をマッチングするのは不可欠ではありますが、現在では顧客の意思決定に積極的な意味合いは薄れ、単なる顧客の流入経路程度の位置付けになっています。
また、広告・営業が効果を生むのは貸室とその価格が市場である程度の競争力があることが前提です。競合より著しく劣る商品を必死に広告・営業したからといってそれにまんまと引っかかるような顧客は今の時代いませんし、仮にいたとしても不動産賃貸業の場合、一回こっきり騙して契約させればそれでOKではありません。ある程度の期間は住んで家賃を払ってもらわなければ意味がありません。
つまり、不動産賃貸業のコアはどんな貸室商品をどのような賃貸条件で提供するかであり、広告・営業でカバーできるのはごく僅かな部分です。
なので、
もし、入居率が上がらない、1年以上空いている部屋があるといった場合に、
大家が貸室商品のバリューアップや賃貸条件変更ではなく、必死に不動産会社の尻を叩いているのだとしたら、すでにその不動産賃貸業は市場で競合とみなされないしょぼいレベルであることは間違いありません。
では、これからの時代に不動産賃貸業を営むにはどのようなスタンスでなければならないでしょうか?
(次回に続く)
shiro-shita
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