不動産賃貸業で向き合わなければならない本質的なこととは?

不動産知識・テクニック

不動産賃貸業で向き合わなければならない本質的なこととは?

不動産賃貸業は貸室の魅力を高めることを追求し続けるビジネス

  • 不動産賃貸業とは、いかに競合との差別化を図るか、いかに貸室の魅力を高めるかを追求し続けるビジネス
  • 物件のバリューアップの費用対効果追求は永遠のテーマで不動産賃貸業のノウハウそのもの
  • 不動産賃貸業の戦略立案をアッセトマネジャー&プロパティマネジャーに依頼する方法もある
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    前回の記事では、混迷を増す世の中・人口減・空家増といった逆風の中でも一部の大家は昭和スタイルを貫いてカモられている状況を記載しました。

    【前回のブログ】こんな不動産賃貸経営は逆風の中でカモられる!?

    昭和スタイルの大家がいまさら考えを改めることはないでしょうが(改められる思考力があれば昭和スタイルのままでいません)、そういった大家はそう遠くないうちに相続を迎え、相続人がアパートを建替えて市場に参入してくるかもしれません。

    そうなると、これまで競合が弱小だから成り立っていた不動産賃貸業の立場を脅かすことになります。

    不動産賃貸業をやっている人は今後の競争激化に備えて一層気を引き締めて臨む必要があります。

     
     
    その上で大切なことは、基本的なことですが、不動産賃貸業の本質から目を背けないことです。

    その本質とは、不動産賃貸業は顧客ニーズと競合物件を分析し、いかに競合との差別化を図るか、いかに貸室の魅力を高めるかを追求し続けるビジネスであるということです。

     
    不動産賃貸業をやっている人の中には、土地を相続したらアパート建築業者がわんさか押し寄せ、提案されるままに内容を理解することなくアパートを建てたが、やってみたら最初の話と違うので自分は騙された、今後誰に頼っていいのかわからない的な、完全に消費者意識の方がいますが、

     
    不動産賃貸業とはいえビジネスをしている経営者です。

    取引先との契約内容を精査せずに事業に取り組んだのであれば自分の落ち度ですし、課題に対して他力本願しかないのであれば経営者として怠慢です。

     
    これからの逆風下であっても不動産賃貸業で利益を上げ続けていきたいというのであれば、経営者として不動産賃貸業の本質に向き合い続ける覚悟が欠かせません。

    バリューアップの考え方

    それで、不動産賃貸業における課題にどう対処していくかですが、

    稼働率が半分切ってるとか、1年以上入居が決まらない部屋があるといった場合、物件が顧客ニーズを満たしていないということは明白です。

    そこから脱却するには貸室のバリューアップを行い商品性を上げなければなりません。

     
    物件の寿命がラスト10年切っているということであれば賃貸条件変更だけでもいいですが、それ以上であれば賃貸条件変更だけでは持ち堪えられません。

    それに、条件を下げると物件の価値が下がり入居者属性が悪くなるだけではなく、最近はいくら価格を下げても何の良さもない物件は決まらなくなってきました。

    バリューアップを制する者が不動産賃貸業を制す

    一部の大家から、そりゃそうだけど、貸室のバリューアップによって改善される入居率や賃料収入に対して費用が掛かり過ぎて合わないんだよ、と言われそうです。

     
    もちろんわかっています。

     
    というか、不動産賃貸業にとって費用対効果を上げることが永遠のテーマです。

    ラーメン店が原価率を考えながら味を追求するのと同じです。

     
    バリューアップの費用対効果を上げるために日々情報収集&試行錯誤しながら、バリューアップ内容とその資金を中長期間掛けて準備し、バリューアップ実施後にその効果を再び中長期間掛けて検証するのです。

    その計画立案力、長期に渡る準備、バリューアップ実行のリスク&コストテイク、効果検証こそが不動産賃貸業です。

     
    不動産賃貸業の商品バリューアップはラーメン店がスープを変えるよりも長期で計画的に行わなければなりませんし、費用も掛かるのです。

     
    それを、よもや業者の言われるがままに見積もって内容も把握していないのに高いって文句言って諦めてませんか?

    バリューアップ費用はこれまでいただいた家賃が原資

    費用対効果を追求して様々検討したがどうしても合わない、と言う方もいらっしゃるかもしれません。

     
    それは、もしかしたら物件取得時の事業計画がそもそも間違っていたのかもしれません。

    投資用に販売された分譲マンションや建売アパートでサブリース付きのものに特に多いです。収益を実際より盛っているのです。この場合は諦めて敗戦処理するしかありません。

     
    もしくは、これまで得てきた家賃を考慮せずに今を基準に考えていませんか。

    家賃には建物や設備の償却費相当分が含まれています。家賃が入ってくるうちに将来必要となるバリューアップ資金を積み立てずに、バリューアップ費用を丸々新規投資と捉えて今後何年で回収できるか考えていませんか。

    バリューアップ資金の原資は基本これまで得てきた家賃です。

     
    ちゃんとしたラーメン店はお客さんが来てくれているうちに定番メニューの改良や新メニューの開発を行うのです。閑古鳥が鳴いてから慌ててやるような店を世間は嘲笑します。

    自分だけでやり切れない場合はアセットマネジャー&プロパティマネジャーに依頼するのも手

    ただし、このようにバリューアップ計画を含め大家が必ずしも一から全部やらなければならないという訳ではありません。

    全てを自分で行う完全プロ大家を目指す以外に、外部の専門業者とパートナーシップを築く方法もあります。

    事業計画を立案し、それに沿って管理運営しながら、的確なバリューアップを企画するアッセトマネジャー&プロパティマネジャー(AM&PM業者)に依頼するのです。

     
    単なる不動産管理会社との違いは、不動産管理会社は入金管理や入居者からのクレーム受付、入退去といった不動産賃貸業の一部の業務の代行に過ぎず、不動産賃貸業のコアである「顧客ニーズと競合物件を分析し、長期的に勝ち残っていくために貸室商品の開発・改良を行なう」のは大家の仕事ですが、AM&PM業者はコアな戦略を立案した上で管理運営を行います。

    単なる不動産管理会社は業務代行するだけで、それによって物件の価値が上がろうが下がろうが無関係ですが、AM&PM業者は物件のポテンシャルを引き出し、大家が物件を取得した目的をかなえるのが役目です。

    単なる不動産管理会社 = 不動産賃貸業の一部業務の代行 → 不動産賃貸業のコアな部分には関与せず、物件の価値向上を目的としない

    AM&PM業者 = 不動産賃貸業の戦略立案および運営 → 物件の価値向上を目的とし、不動産賃貸業のコアな部分に係る

    AM &PM業者に軍師の役目を担ってもらうというのは「with逆風」における不動産賃貸業の主要な在り方となるでしょう。

    あくまでも不動産賃貸業の本質からは目を背けない

    すでに不動産賃貸業は逆風の中で減少するパイを奪い合う時代に突入しています。ライバルが切磋琢磨している中で事業継続を目指すのであればレベルアップは欠かせません。

    全てを自分で行う完全プロ大家を目指すのもよし、コアな部分は自分で行い一部業務を不動産管理会社に外注するもよし、コアな部分含めAM &PM業者の専門性も活用するのもありです。

     
    ただし、AM&PM業者に依頼するにしてももちろん最終的な責任は大家にあります。

    AM&PMを謳っているというだけで依頼すると滅茶苦茶にされた挙句にとんずらされるかもしれません。

    単に他力本願の先がAM&PM業者に変わっただけではダメなのです。あくまでも自分自身で不動産賃貸業にしっかり向き合い、少なくともAM&PM業者の力を見極め、運営状況をチェックできるようでなければなりません。

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    shiro-shita

    仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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