貸し手

アパート・マンション自主管理マニュアル⑧「入居者募集方法」

第8回は入居者の募集方法についてです。

アパート・マンション自主管理マニュアル①:入居者からの連絡受付体制
アパート・マンション自主管理マニュアル②:入居者クレーム対応
アパート・マンション自主管理マニュアル③:非常時体制
アパート・マンション自主管理マニュアル④:入金管理
アパート・マンション自主管理マニュアル⑤:管理業務支援ツール
アパート・マンション自主管理マニュアル⑥:滞納者への督促・回収
アパート・マンション自主管理マニュアル⑦:ビルメンテナンス

入居者募集の3つの方向性

自主管理の入居者募集は下記のいずれかの方法になります。

自分で直接入居者を見つける

近年は貸主と入居者を直接マッチングするサイトも出てきていますし、ワードプレスでWEBサイトを簡単に作ることもできるので、不動産会社に頼らずとも入居者を募集することは可能です。

特に他社との差別化を打ち出した物件、もしくはあなたがWEBマーケティングを強みとするなら直接募集という手法は効果的でしょうし、シェアハウス、マンスリーといった特殊な物件は不動産会社に依頼しても望み薄なので自分でやらざるをえないでしょう。

しかし、それ以外のいわゆる普通の物件だとなかなか現実的ではありません。

現状では貸主と入居者の直接マッチングサイトは利用者が少なく、また、顧客の流入経路としてポータルサイトではなく個別のホームページにアクセスするのは極めて稀です。特に入居者のボリュームゾーンである新入学生、転勤族の集客には不向きです。

少なくとも他の募集方法も並行した方がいいと思いますが、並行募集だと不動産会社の仲介手数料をどうするかという問題があり、不動産会社としては力を入れにくくなります。

複数の不動産会社に一般媒介で依頼する

入居者募集はめぐり逢いというか、基本的に運なので、たくさんの不動産会社に依頼するのが合理的です。依頼だけなら通常は無料ですし。

依頼先は手当たり次第でもいいですが、優先順位を付けるのであれば、複数のポータルサイトを契約していて、多くの入居希望者が問い合わせをしそうな名の知れた会社、つまり大手がいいでしょう。

ただし、依頼したものの不動産会社からの問い合わせ対応ができなければ意味がありません。彼らは顧客案内の直前に平日も休日も昼休みも関係なく電話してきます。常に電話対応できる人向きです。

そして、大手と言っても彼らは顧客からの問い合わせが多いというだけで任せて安心な存在ではありません。

大手とはいえ、スタッフのほとんどは転職を繰り返す半端者で、ノルマがきつく人の入れ替わりが激しいので、不動産の知識は高くありません。また、物件案内で出たり入ったりが常で担当者と電話連絡が付きにくく、メールアドレスはスタッフ毎ではなく店舗にたった1つなのでろくに見てくれません。さらに、案内の際に窓の閉め忘れ、電気の付けっぱなしといったミスも多いです。

やりとりにストレスを感じるのは入居者としても同様のようで、申し込みをいれたものの不毛なやり取りの挙句、破談するケースも多いですし、成約数は多いですが扱う物件数も多いので、決めにくい、もしくは決めてもメリットの薄い物件は実質的に取り扱いません。

1社の不動産会社に専任媒介で依頼する

別に本業があったりして不動産会社対応に時間を割けない場合は1社に専属的に依頼するのがいいでしょう。

その会社に鍵を預けてしまえば案内の度に連絡が来ることはありません。一社とはいえ、その会社が大手を含めた様々な会社に依頼してくれるので情報拡散力も得られます。

他社に頼まないということであれば、入居者募集に力を入れてくれるでしょうし、様々アドバイスをしてくれたり、半ば管理を依頼しているのと同じ効果が得られることもあります。

 
ただし、上記のメリットを得るには人選が非常に重要です。

すべての人がそのように対応してくれる訳ではありません。誤ってそうではない相手を選んでしまうと他に頼んでいないだけに悲惨な結果になります。

大手の担当者は他社に客付け依頼したがらないことが多く(成績にならないので)、管理メインの会社だと、普通は管理物件を優先します。

しかも、相手の良し悪しは容易に判別できません。良い相手に依頼したとしても、入居者募集は運による部分が多いので、エリアや物件力によっては一年鳴かず飛ばずってことも普通にあります。

オーナー自身に見る目が養われていないとなかなか難しいかもしれません。

踊らされるのは自分か不動産会社か


自分で直接入居者を見つける以外はどちらも一長一短あり、微妙な判断です。やはり管理を依頼してコミットしてもらった方がいいようにも思えます。確かに不動産会社にとっては管理を依頼されず入居者募集のみというのは気乗りしないです。

 
しかし、

決まりそうな物件であれば別です。

 
それに、不動産会社が管理を喜ぶのは入居が決まらなくても管理料を取れるからで、オーナーとしては入居は決まらないのにダラダラ管理料を払い続けるのは最悪です。それなら最初っから断ってくれた方がましです。

 
かつて、インターネットがなく、物件情報を不動産会社ががめていた時代は、立地が良く集客力のある不動産会社がいかに顧客に物件をプッシュするかが重要で、そのために不動産会社に管理を依頼し物件のプライオリティを上げるのが合理的でした。

しかし、近年はポータルサイトが主流で、物件情報の収集、比較が容易になったので、不動産会社のプッシュよりも物件そのものの魅力がより重要です。

いかに物件の見た目、設備、契約条件等を魅力的にするかがオーナーの腕の見せ所であり、自主管理化はそのための手段です。自主管理化で蓄えた資金、ノウハウをそこにつぎ込むのです。

むしろ、管理を依頼しなくても不動産会社が動いてくれる物件かどうかが賃貸経営がうまくいくかの試金石となるのです。

ゴマスリ不動産会社の甘言に踊らされず真の賃貸経営者を目指しましょう。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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