不動産知識・テクニック

アパート・マンション自主管理マニュアル⑨「入居者募集資料」

第9回は入居者募集用の物件資料(概要書)についてです。

アパート・マンション自主管理マニュアル①:入居者からの連絡受付体制
アパート・マンション自主管理マニュアル②:入居者クレーム対応
アパート・マンション自主管理マニュアル③:非常時体制
アパート・マンション自主管理マニュアル④:入金管理
アパート・マンション自主管理マニュアル⑤:管理業務支援ツール
アパート・マンション自主管理マニュアル⑥:滞納者への督促・回収
アパート・マンション自主管理マニュアル⑦:ビルメンテナンス
アパート・マンション自主管理マニュアル⑧:入居者募集方法

物件概要書とは

不動産会社に入居者募集を依頼するには物件概要書が必要です。

ちなみに物件概要書のことを不動産会社はマイソクとかマップとかインフォシートやファクトシートと言います。

初めて作るのであればとりあえずネットに落ちているエクセルのテンプレートを使えばいいでしょう。デザイン的にいまいちだと思ったら自分で加工しましょう。

物件概要書はA4横で下に社名が記載されているものが多いですが、必ずしもそれに合わせる必要はありません。昔は他社の資料の帯を変えて顧客に出していたので業界統一規格が必要でしたが、今はその割合が減りました(ただし、デザインや記載の仕方がこなれていないにもかかわらフォーマットがレアだと痛々しいのでやめた方がいいです)。

 
注意点としては、物件概要書の通常のフォーマットだと契約金や月々の支払いが箇条書きにされておらず料金体系がわかりにくいので(自主管理で料金体系が細かいことはないとは思いますが)、総額がわかりやすいよう羅列するなど工夫しましょう。

また、不動産会社には広告にかかわる公正競争規約というものがあり使ってはならない表現があります。不動産会社でなければ遵守義務はありませんが、不動産会社が二次利用することも考慮し、また素人感を出さないためにも抵触する表現は避けましょう。

写真・間取図


それと、不動産物件概要書に欠かせないのは写真と間取です。

最近のスマホのカメラは高性能なのでわざわざ一眼レフを購入する必要はありませんが、物件を撮影する上で基本的な知識はあった方がいいです。過去記事を参考にしていただければと思います。
やってはならない!? 下手クソな物件写真の撮り方
物件写真を少し工夫して撮ってみる!

間取は設計図面をスキャナしたものだと物件概要書に入れ込むものとしてはイマイチです。それ用のものがなければ作成する必要があります。間取図を作成してくれる有料サービスもありますので数が少なければそれでもいいでしょうし、購入するにしてもたかが数千円です。

間取図は実は結構奥が深く最初から完ぺきなものは作れないと思います(プロ用でなければモジュール分割単位が限られているので完ぺきはそもそも無理)。浴槽の置き場所を間違って扉を塞いだり、扉の開く方向が逆だったり、キッチンの幅・奥行が実際と異なって冷蔵庫が置けるか判別つかなかったり、床の色が実際と極端に異なったりと間違いやすさの宝庫なので気をつけましょう。

物件資料はプレゼン資料である


と、ここまでペーパー資料の作成について記載しましたが、実際に不動産会社が広告掲載にあたりペーパーのまま利用することはありません(中にはありますがリテラシーレベルの低い会社との付き合いはおすすめしません)。広告掲載にあたってはデータで必要になりますので、作成した資料(データ)はメール等でもすぐに送れる状態にしておくべきです。

ただし、大手不動産会社はわざわざ写真を撮りに行ったり、間取図も自社で作る傾向にあります。無駄に思えますが、そういう社内ルールなり、会社にいたくないスタッフの方便として利用されているのでしょう。空室の更新情報を送る際もメールよりFAXで送った方が周知されやすかったり意外と大手はアナログです。

 
結局のところ、各データをメールしたり、不動産会社が独自作成するなら、ペーパーの物件概要書はいらないのではと思うでしょう。

確かに単なる情報の伝達であればそうかもしれませんが、物件概要書はオーナーから不動産会社へのプレゼン資料でもあります。

オーナー自身が不動産会社やその担当者を見極めながら依頼するかどうか判断するように、不動産会社も真剣に取り組むべき案件なのかを判断します。

オーナー自身が間違いだらけで必要項目が欠落したダサいヨタヨタの資料しか作れないのに、不動産会社にはプロであることを求めてはなりません。イカした資料を作って不動産会社との交渉の主導権を握りましょう。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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