不動産知識・テクニック

アパート・マンション自主管理マニュアル⑪「入居審査・保証会社」

第11回は入居審査と保証会社についてです。

アパート・マンション自主管理マニュアル①:入居者からの連絡受付体制
アパート・マンション自主管理マニュアル②:入居者クレーム対応
アパート・マンション自主管理マニュアル③:非常時体制
アパート・マンション自主管理マニュアル④:入金管理
アパート・マンション自主管理マニュアル⑤:管理業務支援ツール
アパート・マンション自主管理マニュアル⑥:滞納者への督促・回収
アパート・マンション自主管理マニュアル⑦:ビルメンテナンス
アパート・マンション自主管理マニュアル⑧:入居者募集方法
アパート・マンション自主管理マニュアル⑨:入居者募集資料
アパート・マンション自主管理マニュアル⑩:案内・申込み

審査の目的

入居審査とは入居後の滞納、紛争、事件事故、周辺からの苦情等をなるべく防ぐために入居者の資質を確認し合否をつけることです。

過去記事もありますので参考にしていただければと思います。
大家・管理者のための入居審査の勘所

トラブル発生可能性で言うとあくまでも私の感覚ですが下記のような人がリスクが高いです。
・反社や犯罪組織等に属している人
・嘘を付いたり人間性が低い人
・孤立無援で失うものがない人
・感覚や常識が一般的ではなく共同住宅での生活に馴染めない人

これらの人は賃貸業の顧客には向いてないというだけで、能力が低いということではありません。むしろ、普通の感覚でなくエッジが効いていますが、その切れ味が万が一にもこちらに向けられることを恐れるのです。

彼らを含めて誰しもが自分らしく生きられる社会が望ましく、賃貸業もそれを後押しすべく彼らが望めば生活基盤を提供するのが理想ですが、一人のアパートオーナーの対応力には限界があります。

賃貸業におけるベストな顧客は平凡な人であり、自分が並の人間だと思うオーナーは自分の器に合わせて平凡な入居者を受け入れるべきなのです。

審査方法


審査方法ですが、まずは保証会社でスクリーニングしましょう。できれば保証会社を利用しないときでも掛けておくことをおすすめします。ある程度は反社や滞納常習者のリストを持っているらしいので。

で、保証会社の審査が通ったからといってOKではありません。保証会社の審査は年収に対し賃料が一定の範囲内で、かつ、NGリストに入っていなければパスする緩いもので、本質的な審査にはなっていないのでオーナー自身で入居者の資質を判断する必要があります。

それでまずは入居希望者をネット検索してSNSその他で危険な言動がないか確認しましょう。

次に、なぜ引越しするのか、なぜこの物件なのかを確認しましょう。そのストーリーに違和感がある場合は注意です。例えば、勤務先から遠いファミリータイプを借りる独身者といった場合です。客付け不動産会社に突っ込んでも、返答が腑に落ちない場合は、自分で直接話を聞くべきです。客付け会社や入居希望者が嫌がることもありますが、そのときはむしろ怪しいと考えてください。

現在求職中や、収入が低い、勤続年数が短いは望ましくないですが、そういった明らかに審査に不利な内容を書いてくる人に悪意はなく、嘘をついて入居しようとする人より何倍もマシです。ただし、もっと分相応な物件があるのに高望みしてくる人は常識がなかったり、金銭感覚がバグってるので入居者として適当ではありません。

また、申込書の書き方がやたら雑とか、空欄が多い人も注意です。確かに入居者はサービスの受け手でお客様ではありますが、オーナー側に対する誠意やこころくばりがないのは一般常識が疑われますし、浅はかな嘘つきほど申込書を雑に書く傾向があります。(ただし、完全犯罪を成し遂げる人は逆です)

保証会社の選び方

保証会社は正直掃いて捨てるほどあります。

保証会社との提携には費用が掛からないので、色んな保証会社を試してベストなところを選定するでもいいですが、はっきり言って各社そこまで差はなく、違いは重箱の隅で、保証面(滞納や原状回復の立替払い)、使い勝手の面(賃料の自動振替、WEB管理システム)でもだいたい同じです。

なので、現在取引しているところがあればそこを主軸にするで基本問題ないと思います。

 
まっさらな状態から選ぶなら保証料の一括払いに対応しているところがいいと思います。毎年もしくは毎月保証料を払い続けるタイプではなく最初だけ一回こっきりのものです。

入居者が保証会社に加入するメリットを享受するのは主にオーナーですが、一般的に保証料の負担は入居者で、入居者にとって保証会社は受けが悪い存在です。せめて保証会社の更新料がなければ更新時の退去リスクが下がります。

また、保証会社により扱いが異なるのが外国人の扱いです。多くの保証会社は外国人を門前払いではありませんが、日本に永住権と定職を持つ連帯保証人を要求したりと受け入れのハードルが高いです。外国人を顧客ターゲットとしているのであれば要求ハードルの高くない保証会社を探して提携しておくべきです。

なぜ審査が大事か


リスクが高い入居者を受け入れるとトラブルの発生率が上昇するだけではなく、物件のレベルも低下する悪循環に陥りやすくなります。
(入居希望者がリスキーな人ばかりの場合、物件レベルが相当低下していると疑うべきです)

ただし、物件に金を掛けず、意図的にリスクの高い入居者を許容するハイリスク&ハイリターンな経営手法もあります。

また、そこまでいかなくても、これまであまり賃貸業が受け入れなかった高齢者や生活保護受給者といった属性を個別に精査し、低リスクと判断した人については積極的に受け入れる手法もあります。

 
どのような手法を取るかはオーナー次第ですが、賃貸業はこれまで全体的には保守的傾向が強くマイノリティーの受け入れは低調でした。リスクを取らずとも儲けることができる時期が長く続きましたから。

しかし、これからの時代はそうはいきません。

多くのオーナー、不動産会社はそのことに気付いてきていますが、長らく続けてきた審査基準や価値観を変えるのにはまだ時間が掛かりそうです。

ある意味、そこに勝機があります。

そのためにも賃貸経営にとってどのような入居者がリスクなのかを掘り下げて考え、自分なりの審査方法、保証会社を含めたリスクヘッジ体制の確立を目指していただければと思います。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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