アパート購入の際の仲介は大手財閥系M不動産でした。
普段、私は仲介業者であることがほとんどで、買い手として他社の仲介サービスを体験する機会は稀なので、大手のサービスクオリティはいかがなものかと興味津々でした。
通常、買い手から見た仲介業者の主要な役割は以下となります。
①物上げ・販売
②不動産調査・契約書類作成
③交渉・売買手続き
ただし、今回のように両手仲介の場合、仲介業者は売り手からも依頼を受けているので、
②調査をガチガチに行うと物件のデメリットが見つかりやすく、買い手から値引き要求の要因となりやすく、
③交渉はなしで提示価格のまま購入させる方が売り手の利益にかないます。
なので、ありがちな粗悪な仲介業者の場合、
②は必要最低限
③は買い手を煽るといった営業テクニックでごまかす
ということが多いのですが、
さすがに、超王手は違うはずです。
きっと、物件調査をがっちり行った上で、もし物件に売り手の把握していない問題が発覚すれば、それを加味した適切な売買条件(価格)に誘導し、売り手や買い手があれもこれもと言いたい放題になれば、根拠を示しながら説得し、売り手も買い手も喜んで仲介手数料を満額支払う、と私は想像していました。
私も不動産業者としてその手法を学ばせていただきたい…。
で、どうだったかと言うと、
M不動産の担当者はベテランで安定感のあるタイプ、第一印象はまずまず良く、話も弾みました。
購入申込みの際に、売り手は基本、契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負うとのことだったので、売り手の責任を免責にする代わりに若干の値引きを要求しました。
しかし、返答まで数週間掛かった挙句、結果、価格は下げないし、契約不適合責任は一転して負わないとのことでした。
ゼロ回答どころかマイナス回答。
理由を聞けば、”物件には問題がないから”とのこと…
契約不適合責任は現時点で顕在化していない問題のリスク負担を取り決るもので、物件に問題が起こらない自信があるのであれば契約不適合責任を負担して不都合ないはずです。契約不適合責任を負うから金額はそのままが筋です。
そもそも話が嚙み合っていません。
恐らく、仲介業者は売り手と販売条件を取り決める際に契約不適合責任について説明をしておらず、契約不適合責任について私から尋ねられた際にはとりあえず契約書ひな形がどうなっているか答え、改めて売り手と交渉したら売り手に不利な条件はすべてはねつけられたのでしょう。
いまだに半数程度の仲介業者は売出し時に価格しか決めず、実際に買い手が現れてから引渡しの状態や契約不適合責任について取り決めますが、最初からパッケージで取り決めておくべきです。そんなこともしないで取引のプロを名乗っているのは不動産業界ぐらいではないでしょうか。
調査についても、収益物件特有の入居者との賃貸借契約や管理業務の内容については私が質問しても回答が遅く、結局は売買契約時に売り手に質問して回答してもらうというグダグダな段取りでした。
もちろん、売買手続きで何か問題が起こったり、損害をこうむったということはなく、つつがなく取引は完了しましたが、
私は売り手との交渉で価格面での譲歩を引き出すことはできず、それは相手があることなので仕方ないとしても、仲介サービス自体行き届いているとは言えないものでした。
冒頭で、買い手から見た仲介業者の主要な役割は
①物上げ・販売
②不動産調査・契約書類作成
③交渉・売買手続き
と申し上げましたが、
結局のところ仲介業者の存在意義は圧倒的に①なのでしょう。①ができた時点で不動産業者の仕事の9割が終わっているのです。
私自身どうしても納得いかなければ取引をやめることもできましたが、物件ほしさ(というか銀行の手続きが進んでいて今更やめにくいため)多少のことは目をつぶったのですから。
買い手に長年の不動産業者との付き合いや高い社会的ステータスがある場合を除き、投資用不動産を購入しようとする人は取り引きはあまり気持ちのいいものではないと覚悟しておいた方がいいです。不愉快で理不尽だけど手数料は満額請求されると。特に投資用不動産専門業者の営業担当の多くは尖った見た目で、軽薄さがほとばしっています。
(私を担当した大手財閥系は不動産営業マンの中では紳士な方です)
そのような不動産業者の態度を見ると、カモられていると感じがちですが、あくまでも物件と不動産業者の良し悪しは分けて考える必要があり、そのようなノイズに惑わされないよう投資用不動産についてのブレないスタンスが肝要です。
むしろ、不動産業者があまりにも手取り足取り懇切丁寧な場合は、不人気物件ゆえに買い手が有利だったり、最悪、素人客を喰いものにするサギ的な投資商品&業者だったりすることもあるので注意した方がいいでしょう。
shiro-shita
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