不動産知識・テクニック

アパート・マンション自主管理マニュアル⑬「賃貸借契約書の作成」

第13回は賃貸借契約書の作成についてです。

アパート・マンション自主管理マニュアル①:入居者からの連絡受付体制
アパート・マンション自主管理マニュアル②:入居者クレーム対応
アパート・マンション自主管理マニュアル③:非常時体制
アパート・マンション自主管理マニュアル④:入金管理
アパート・マンション自主管理マニュアル⑤:管理業務支援ツール
アパート・マンション自主管理マニュアル⑥:滞納者への督促・回収
アパート・マンション自主管理マニュアル⑦:ビルメンテナンス
アパート・マンション自主管理マニュアル⑧:入居者募集方法
アパート・マンション自主管理マニュアル⑨:入居者募集資料
アパート・マンション自主管理マニュアル⑩:案内・申込み
アパート・マンション自主管理マニュアル⑪:入居審査・保証会社
アパート・マンション自主管理マニュアル⑫:契約・引渡しの流れ

賃貸借契約書はオーナーが作るべきか

賃貸借契約書の作成は客付け不動産会社に任せることもできます。

しかし、プロの賃貸経営者であれば自分で作成するのをオススメします。

その理由は、部屋ごとに契約書式、約款が異なれば管理しにくいですし、客付会社は物件&オーナーの管理運営方針について熟知していないからです。

 
なお、重要事項説明書は宅建業法上、仲介する不動産会社が作成し借主に説明するものなので、不動産会社が作成すべきです。ただし、賃貸借契約書の内容がわからないと作成できないので、関係資料の提供を丁寧に行い最大限協力したり、何だったらそのまま使えるようなサンプルを提出するのが望ましいでしょう。

賃貸借契約書の作成方法

賃貸借契約書の作成にあたっては最新の契約書ひな型が必要なので、知り合いの不動産会社にお願いしてもらいましょう。ひな型は法改正等で変更されるのでその都度最新版にするのが望ましいです。

そのひな型にこれまで契約した部屋の契約書を参考に入力します。途中で書き方がわからないことがあるかもしれませんが、そのときはググったり、詳しい人に聞きましょう。

約款(条文)は基本そのまま使うので、加筆訂正しません。

これで特約を除き完成です。30分もあれば十分でしょう。

 
作るのは簡単ですが、その契約内容により入居者のみならず自分も縛られるので、契約内容を理解しなければなりません。

一字一句覚えるまでではありませんが、各条文の主旨とポイントとなる数字(解約予告の期間等)は把握しましょう。できれば条文のバックグラウンドとなっている法律やトラブル事例も学ぶことで理解が深まり、応用力が増します。

特約事項


ひな型の約款を訂正したいときもあると思いますが、その場合は通常は約款を変更するよりも特約を入れることで対応します(約款を変えるとひな型がアップデートされる都度直さないとならない)

一般的に特約事項は、約款とは異なる取り決めをする①その名の通りの特約事項と、②契約約款を補足するもの、そして、生活ルールというか③一般常識を補足するもので構成されています。

①その名の通りの特約事項は、オーナーが物件引渡し前に工事を行うとか、短期で解約した場合の違約金といった内容が盛り込まれ、ひな型の約款を変更し優先的に適用される条項であり、重要性が高く、契約ごとの個別性が高いです。

②約款の補足は、設備が故障したらオーナーで修理するけど、直るまでの期間は使えなくなり、その期間が一定期間以下なら補償しません、みたいな内容で、約款に記載はあるものの説明が不十分な部分を補います。

③一般常識は、夜間の騒音は控えることみたいな内容です。

 
②③はなくてもほとんど困りません。ないと不安だという人は様々な契約書をみて良い文章をピックアップして使えばいいでしょうが、むしろ注意すべきなのは、問題を回避したいあまりに保守的な内容に偏り、法的に無効な内容になったり、かえって神経質なクレーマーの主張の根拠になることです。

例えば、「騒音について注意しても改まらない場合は即刻退去」という条文は、借地借家法等の法規に照らして適正ではなく、仮に退去するにしても即刻は非現実的です。さらに、騒音を起こす入居者ではない別の入居者がこの条文を根拠に騒音元の入居者を退去させろと迫ってくる可能性があります。

 
とはいえ、これらのことで裁判にまでなることはまずありません。訴訟経済に合わないからです。(訴訟する費用と労力が訴訟の効果に勝る)

なので、当事者同士が協議して解決もしくは諦めるのですが、その協議を主導するのは管理者であるオーナーです。法律的厳密さを追求するより合法の範囲であなたがやりやすい条文・表現にした方が実務的にいいのかもしれません。

契約金請求書

契約時に契約書以外で作成するものに契約金の請求書があります。

敷金や保証料といった一時金と入居月(場合によっては次月も)の日割家賃を合算して請求します。

貸主は不動産会社宛てに作成し、不動産会社はそれに仲介手数料を上乗せして入居者宛にそれぞれ請求書を作成します。
(貸主が不動産会社に手数料を払う場合はこのタイミングで相殺することが多いです)

項目を合算して請求額を算出するだけですが、過去のエクセルファイルに上書きして作成するといつか必ずミスします。

管理を業とするということは金銭取り扱のプロと同義なので、絶対間違わないよう各自工夫いただければと思います。

約款沼


契約書はこだわると底なしで、理解し極めることの困難さに対して金銭的パフォーマンスが低い分野です。

その名の通り特約事項は重要性が高いと言いましたが、それでも大半の契約では特約が適用されることは稀で、日常的には意識しなくていいレベルです。

 
とはいえ、適用されるのが稀なのは特約の抑止力が効いているともいえ、究極の約款とはその抑止力によって違約等を未然に防ぐことであり、賃貸借契約の本質に迫る上ではこの約款のブラッシュアップという禅問答を避けて通れません。

特に入居者とトラブルを経験すると約款の重要性を強く意識するようになりますが、賃貸借契約の本質に迫る努力なしにただ単にトラブルを避けようとすると、前述のように問題を回避したいあまりに保守的な内容の約款に偏りがちです。

プロの賃貸経営者としてトラブルの抑止のみならず、入居者への感謝、適切なパワーバランス、法改正への対応、賃貸経営の持続性、これらをバランスした契約約款の作成を目指していただければと思います。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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