住宅購入の諸経費を安くするポイントは耐震基準にあり

不動産知識・テクニック

住宅購入時の諸経費を安くするポイントは耐震基準にあり

住宅購入のお得感は旧耐震と新耐震で分断される

住宅購入時には物件代金以外に登記費用や不動産取得税といった諸経費がかかり、それらは諸経費とはいえ数十万円とかになり、結構な出費です。

が、

それら諸経費は一定要件を満たすことで税制特例の対象となり、

例えば、通常は数十万かかる不動産取得税がゼロになったりします。

 
特例の要件は項目ごとに若干異なりますが共通する要件があります。

・築20年以内(耐火建築物は25年)
もしくは
・耐震基準適合証、住宅性能評価(耐震等級1以上)、瑕疵保険のいずれか付き

要は比較的新しかったりまともな性能や保証がついている物件ということで、

言い換えると、国がまともな中古住宅の売買を促進するためにそのような物件にインセンティブを与えているのです。

 
今回は諸経費の特例とその要件のコアである耐震基準にまつわるお話です。

特例の内容

特例には以下のようなものがあります。

・住宅ローン控除:理論最大値13年450万円
・移転登記登録免許税:約1/6
・抵当権設定登記登録免許税:1/4
・不動産取得税:土地200㎡&建物一定額以内ならゼロ
・住まい給付金:最大50万円
・その他:贈与税特例、地震保険割引

住宅ローン控除は中古住宅の場合、最大180万円くらいになりますが、特例を使える物件とそうでない物件では百万円単位で差が付く場合があります。これは大きいです。

築20年(耐火建築物は25年)超の物件に特例を適用させるにはどうしたらいいか

買い手としては是非とも特例適用の物件を選びたいですし、売り手も特例対応ならその分高く売れると期待できます。

築20年(耐火建築物は25年)以内の物件であれば無条件適用ですが、それを超えている場合、耐震基準適合証、住宅性能評価(耐震等級1以上)、瑕疵保険のいずれかを取得する必要があります。

どれが一番いいでしょうか?

 
どれにしてもただ申請すればもらえるものではなく、交付には条件があります。

そのために、書類を準備(検査済証や図面など)し、検査費用を払い、専門家が審査しますが、

審査パスの確実性がない中で、書類を用意したり、検査費用を出したりできるかが、まず第一関門です。

 
そして、最大の関門は専門家の審査をパスするかですが、

 
実は、3つのいずれにしても共通する条件があります。

それは、耐震性が一定基準であることの証明です。

 
一定基準の耐震性とはどういうレベルかというと、

建築基準法が改正された1981(昭和56)年6月1日以降の建築確認申請で求められる耐震性となり、それを新耐震基準といいます。

 
確認申請は建築前に行うので竣工時期とタイムラグがあるものの、1982年以降に竣工している物件は違法建築でない限りほぼほぼ新耐震基準ですが、改めて専門家の審査を求められます。

逆に言えば、1981年6月1日以前の物件は当時の法的基準よりも頑丈に設計し、かつ、そのことを証明できる物件、もしくは耐震補強工事を行った物件以外は審査を受けてもパスしないということになります。

パスしなかった場合、是正工事を行えばいいのですが、耐震基準を満たさなかった場合の是正工事費用は特例を適用させるインセンティブを大きく上回るはずです。つまり現実的ではありません。

実際の取引における駆け引き

買い手は、特例が適用されれば金銭的なメリットがありますし、物件の調査をせずブラックボックスのまま掴まされるのは嫌なので、特例へのチャレンジに積極的ですが、

逆に、売り手は、前述のようにメリットはない訳ではないですが、審査の結果、是正措置が必要と判断され、審査費用を払った上に余計な告知事項が増えることを避けたく、特に瑕疵保険の検査では様々な項目がチェックされ物件のアラが見つかるので、特例へのチャレンジは往々にしてネガティブです。

なので、中古物件の売買では審査を求める買い手とそれをしぶる売り手の対立がしばし起こります。

仲介会社も手続きが面倒な上に、結果によって値引きや破談リスクがあるので、複数の買い手が競合するような売り手優位な状況であれば、調査を条件としない買い手を優先して扱いがちになります。
(また、手続きする場合、審査費用はたいてい買い手負担となり、仲介会社の業務量増加分のフィーが上乗せされたりします)

瑕疵保険は何のため

特例を受けるには新耐震基準に適合していることを証明すればいいのですが、瑕疵保険にまで加入するメリットは何でしょうか。

一つはもちろん購入後の万が一の不具合を保険で担保することです。
(ただし、保険料が掛かるのでメリットはデメリットに相殺されるとも考えられます。なお、保険料が売り手負担でもその費用が物件価格に転嫁されます)

もう一つは保険加入の審査の中で事前に物件の状況を専門家がチェックしてくれることです。
(ただし、検査費用が掛かるので同様に相殺されると考えられます)

そして、もう一つは不動産業者が売主の物件に限定されますが、すまい給付金の対象となることです。

すまい給付金は買い手に最大50万円給付する国の制度です。

すまい給付金は消費税率が8%→10%になる前後で導入され、買い手の消費税負担を軽減するという名目ですが、まともな中古住宅の流通を促進したい国の思惑と、不動産業界団体のロビーイングの成果です。

特例不適用の旧耐震はオワコンか?


事実上、旧耐震物件は税制特例の対象外であり、近年は銀行の住宅ローン審査でも不利に扱われるようになっています。

となると、これから旧耐震物件はオワコンなのでしょうか?

 
確かに、旧耐震物件を国は推奨していませんが、いまだに全国の建物の1/3程度が旧耐震と言われており、それらを全部建替えたり、耐震補強するのは現実的ではななく、私たちは今後も数十年単位で旧耐震物件と付き合っていかなければなりません。

 
そもそも、旧耐震物件が嫌悪されるのは税制特例の対象にならないからではなく、古い基準で建てられているので耐震性や緊急時の安全性に不安があるからで、

旧耐震でも地盤が良く、しっかり設計・工事され、管理が行き届き、緊急時の対策がなされている物件であれば問題はないですし、新耐震でもその逆の物件は危機に脆弱です。

 
なので、新耐震なら無条件でOK、旧耐震は何があってもNGというのは賢明な判断ではありません。

 
ただし、世の中には旧耐震擁護派もいて(リノベーションを推進する立場の人に多い)、

昔は建物をしっかり作っていたので今の建物より頑丈だ、その証拠に東日本大震災の被害状況は新耐震と旧耐震で差がなかった、旧耐震が特例を受けられないのは不当だ、と主張する人もいます。

 
さすがに眉をひそめます。

旧耐震物件は市街地が拡大する前の古くからの市街地(=地盤がいいエリア)に建っている割合が高く、市街地が拡大し田んぼを埋め立てた造成地(=地盤が悪いエリア)に建っているのは大部分が新耐震と思われます。

不整形地にギリギリ建てたため縦横比が極端になったり、1階がピロティや駐車場になっていて構造的に不利な物件も新耐震が多いはずです。

地盤や構造が悪ければ新耐震でも大きな被害が出るとは言えても、旧耐震が丈夫であるとは言えず、一律に旧耐震と新耐震をくらべるのではなく、もっと細かく比較しなければなりません。

それに特例については、旧耐震だと諸経費が増える訳ではありません。比較的新しかったりまともな性能や保証がついている物件を優遇しているだけです。

 
 
物件の安全性はグラデーションであり、旧耐震と新耐震で明確に線を引けるほど単純ではありませんが、一つ一つの物件の安全性を的確に評価するには現時点のテクノロジーでは膨大なコストが掛かるので、ことばの一人歩きといった弊害はあるにせよ、旧耐震と新耐震で線を引くことには一定の合理性があり、ことに特例適用といった行政制度については運用面の円滑さが重要です。

 
将来、外壁を透過できるレーザーや放射線等で現状の建物の構造や地盤地質をデータを取得し、構造の良し悪しやコンクリート中性度から安全性を自動的にスピーディーに的確に評価できる技術が開発されれば、その時は新旧耐震のくくりが不要になるでしょう。

ただし、そういったイノベーションが起こり、世の中に浸透し、国が既得権を排し導入するのにこれまた十年単位の時間が掛かるでしょうから、イノベーションが先か、旧耐震が全滅するのが先かという気の長い話になります。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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