限界マンションに再建築不可、共有持分に事故物件まで 様々ある負動産
前回、負動産の価値について記載しました。
<前回の記事>”負動産”はいったいいくらなのか
ただし、いわゆる負動産は市街地から離れた不動産だけではありません。
その他の通常の査定方法が馴染まない不動産の価格について考えてみたいと思います。
限界マンション
老朽化して修繕が必要なのに、管理組合に修繕積立金のストックが底をつき荒れるに任せているマンションは限界マンションと呼ばれるようになりました。
外観は特に問題なくても、管理組合の経営が火の車で借金が積み重なっているようだと限界マンション予備軍となります。
というか、マンションというか全ての建物は年数が経つ程に修繕費用が掛かり、どんなマンションでも将来的には修繕積立金を爆上げしないと修繕計画が成り立たなくなります。
維持費がありえなく高い、もしくは修繕されず放置
将来的には二択となります。
どちらも限界マンションです。
なのでマンションはババ抜きで、やばいかなって前に売り抜いておかなければならないのです。
その売り時を逸したとき資産価値としても限界となります。
さらにマンションは管理費、修繕積立金だけではなく、木造戸建と違い鉄筋コンクリート造で固定資産税も高く(建物の固定資産税評価額はある程度以上は落ちない)、同じ負動産でも郊外の山林なんかとくらべても財布への実害が段違いです。
そんな限界マンションの経済価値ですが、割と通常の査定方法となります。
同一棟内の他の部屋の取引成約事例は国土交通省の土地総合情報システムでも調べることができるようになりましたが、マンション名が表示されないので使いづらいです。
不動産会社が使っている不動産流通機構のレインズだと細かく調べることもできて便利です。不動産会社の人に頼んでみましょう。
限界マンションとなるくらい歴史のあるマンションであれば、棟内にこれまで売買事例が登録されていないことはまずないでしょう。
なるべく最近のもので自分の部屋と条件の近い事例の成約時の面積単価(専有面積50㎡の部屋が500万円で売れていれば1㎡あたり10万円)を、自分の部屋の専有面積に乗じて類推価格を出します。
ダウントレンドというのは、例えば下落中の株式を売ろうとすると現在価格では売れず、それを下回る価格になるように、値下がり傾向の不動産は相場より低くしないと買い手がつきません。
なので一律いくらダウンということはなく状況次第です。というか、実際に販売してみないとわかりません。
棟内の相場が安く、室内フルリフォームしないと住めず、ダウントレンドが強い状況だとマイナス価値もあり得ます。
また、限界マンションの中でもより老朽化、ゴーストタウン化の進んだ”極限マンション”の場合、マンションは解体前提で、あくまでも土地の価値として考えます。
その場合は
購入するのはプロの業者以外ではないでしょう。あくまでも利益目的なのでリスクプレミアム(事業利益)が必要です。
土地の価値といってもマンションは一戸あたりの土地面積は小さいことがほとんどであり、マンションの解体&更地売却の合意を管理組合で得るのは一般的にハードルが高いこともあり、マイナス価値になる恐れがより高まります。
再建築不可物件
等々、
こういった不動産は建築基準法の要件を満たさず建築許可が下りませんが、この辺は割と手垢のついたテーマであって、最近になって何か変わった訳ではなく従来通りとなります。
通常の建築可能な不動産と比較して価格を算出するというより、
それ以外の活用方法に着目して経済的価値を算出します。
例えば、月極駐車場にはできる、家庭菜園用地にできる、広告看板を設置したいとのニーズがある、古屋があってまだしばらくは住居として利用できる、隣地の人が取得すれば利用できる、
みたいな感じです。
土地の広さがどうこうとかというより、何に活用できるかによって金額の算出方法は様々です。
例えば月極駐車場であれば、収益還元法で
逆にどう考えても活用方法がない場合は無価値というより、固定資産税といった維持費が掛かり、管理&所有者責任があるのでマイナス価値となります。
共有状態の不動産
共有は一つの土地や建物を複数人で持ち合う状態で、
登記簿の所有者欄に
仙台市〇区○○ 持分4分の1 〇〇 太郎
みたいに表示されます。
もしくは、相続が発生したものの遺産分割協議がまとまらず登記は被相続人の名義のままになっているもののは、法律上は相続人が法定相続分で持ち分を持って共有している状態となります。
持分だけを有していても、
それが賃貸物件ですでに借りている人がいれば、その賃料を持ち分の割合に応じて分配を受ける権利はありますが、修繕をするとか日常的な管理行為も他の共有者との関りがありますし、新しい入居者と賃貸借契約をするとか、大規模修繕をする場合は実質的に全員の合意が必要で、長い目でみるとそのまま運営するのは現実的ではありません。
もちろん、固定資産税はそれを理由に一切減免されず、管理責任も負います。
なので持ち分だけを売却することはできても、非常に制限的なため、その経済的価値は低くなります。
「持ち分100%の価格×持ち分割合」とはなりません。
事実上、持ち分だけで買うのは専門の不動産業者です。
購入目的は基本的に転売してさや抜きすることです。
持ち分だけの買い取り価格は、
業者にとっても100%にまとめられないリスク、まとまるにしても長期間交渉に要するかもしれないことを考えると、あってないような価格と思った方がいいです。
ましてや、100%になったところで価値が低い限界マンションや市街地から離れた原野、山林だと買取を拒否されるでしょう。
そうなるとマイナス価値が濃厚です。
事故物件
殺人、自殺、孤独死、火災等があった物件を事故物件と言います。
物件を売ったり貸したりする場合にはこういった忌まわしい過去を告知しないといけないので、相場価格では成約しなくなります。
ただし、価値は下がるにしても、
例えば、通常5万円で貸す部屋が4万円に値引きされるだけでマイナス価値までなることはほとんどありません。
マイナス価値になるとしたら、全国ニュースで連日報道されるような大事件の現場とか、
市街地から離れた不動産が事故物件になったという場合でしょう。
あまりにレアなので想定しても仕方ないかもしれません。
負動産は問題先送りしても何のメリットもありません
以上、その他の負動産の価格についての考え方でした。
あくまでも”考え方”なので、具体的にご自身の不動産の価格を算出してとまではいかないとは思いますが、
ご自身やご両親がお持ちの不動産が負動産の疑いが強い、もしくは時間が経過するほど売りにくくなるようであれば、早めに対応をお考えいただいた方がいいと思います。
shiro-shita
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