農地法の手続き・農地を処分したいときは

不動産知識・テクニック

初歩からの農地法②

どんなときに農地法の手続きが必要か

前回の記事では農地法の基本的な考え方について記載しましたが、今回は具体的な手続きについてみていきましょう。

 
下記の農地の権利移動等には農地法の手続きが必要です。

  • 農地の権利の移転・設定(3条)
  • 農地の転用(4条)
  • 転用を目的とする農地の権利の移転(5条)
  •  

    3条許可

    農地を農地として売買するような場合です。

    農地を減らす訳ではなく、前向きに使いたいという人が譲り受けるのだから特に規制する必要はないのではと思うのですが、

    譲り受ける人の人的要件があり、最大のミソは農業従事者以外は購入できないということです。

    それも、現時点で農業を営んでいる必要があり、その農地を購入してこれから始めるって人は基本的にNGです。

    一定面積の農地を有し、一定日数を農業に従事し、農機具を有して農地基本台帳に登録されている人でなければなりません。

    4条許可

    自分の農地を資材置場に転用するような場合です。

    自分の土地をどう使おうが自由だろと思うのですが、農地の土地区分と転用計画によっては許可されません。

    農地の土地区分は、主に立地条件によって分けられ、農業振興地域や青地農地といった周辺の農地と連続性があり、高い生産性が見込まれるような農地だと転用が許可されません。

    また、転用計画に確実性が見込まれなかったり、周辺の農地への被害防除措置が適切でなかったりすると許可されません。

    なお、市街化区域にある農地であれば許可不要で届出だけで転用できます。

    5条許可

    農地を売買して購入者が別の用途に転用するような場合です。

    農地の土地区分、転用計画によって審査されます。

    4条許可と同様に市街化区域であれば届出だけとなります。

    農地を処分したい場合はどうするか…

    親の農地を相続したが遠方にあるとか、老齢になって農業を辞めるとか、近年は農地の処分を検討する人が増えてきています。

     
    農地が市街化区域にあれば簡単ですが、市街化区域は国土の僅か3.8%程度であり、また、市街化区域であれば農地といえ土地として資産性が高いのでそもそも困っていないでしょう。

    それ以外の市街化調整区域、非線引き区域、都市計画区域外であれば、まずは引き受け手を探すことが難関ですが、仮に引き受け手がいたとしても農地法の許可を取れるのかという問題があります。

     
    引き受けてくれる人が農業従事者なら3条許可になりますが、その人自身が自分の農地を持て余して耕作放棄地になっていたりすると許可が下りないこともあります。

    5条許可を取るには立地条件と転用計画が肝

    引き受け手が農業従事者以外であれば5条許可を取らなければなりませんが、その場合、農地の土地区分が転用可能であり、転用計画が適当でなければなりません。

     
    農振地域の規制が厳しい土地区分に該当しているとアウトです。よっぽどの事情がない限りは諦めざるをえません。

     
    それ以外であれば、引き受け手が何の目的でどのように使うかといった転用計画が審査されます。

     
    目的については、例えば事業に資材置場が必要で、その土地ならロケーションや広さ等も目的にかなうといった具体性が欠かせません。

    ただ所有者から引き受けてくれるよう頼まれたではダメです。

     
    計画の内容は、転用する以上はいくら耕作放棄地ですでに農地の体をなしていないとしても、そのまま何もしないとか、雑草を刈るだけでは認められません。

    資材置場にするのであれば、一般的に農地は道路面より低いので盛り土、整地してということになりますが、ただ盛土しただけだと周辺の農地に土砂が流出するので、被害防除措置として側溝設置等を求められる場合があります。

    その場合の工事費用は100万円以上になったりします。農地は結構広いですから。

     
    単に名義を移す目的で便宜上手続きするような人はここで断念でしょう。

    農地の処分は手間も費用も気軽にできるってレベルではなく、行き止まりだらけの茨の道なのです。

    無許可で売買は不可能

    中には許可を受けなくても黙っていればわからないと考える人がいるかもしれませんが、

    もちろん発覚すると罰則がありますし、そもそも地目が田、畑の場合、農地法の許可証がないと法務局が移転登記を受け付けてくれません。

    登記できないと固定資産税が課せられ、雑草ボウボウになると連絡が来たりして煩わしさから逃れることはできません。

    まとめ

    農地の売買を検討している人にとって農地法はなかなか手強い法律です。

    農地を処分したい人にとって、売るに売れない、売るのに買い手に過分な費用が発生するのでは、その農地は現実的にマイナス資産であり、その農地に縛り付けられるという意味ではその人の人生にとって足枷となります。

     
    確かに国にとって農業は生命線なので、農業の安定・継続のために個人の自由な判断に全てを委ねる訳にはいかないでしょう。

    とはいえ、不利益を被っている人がいることは確かで、売れない、転用できないことがは結果的には耕作放棄地の増加につながっています。

     
     
    ちなみに不動産業者で農地法に詳しい人は少ないです。

    農地は面倒な割にあまり扱っても儲からないからですが、その割に知らないことを素直に知らないと言えないのも不動産業者の性です。

    そういう奴に限って

    「オレ、農業委員と知り合いだから」

    とか無駄な自慢をしてくるものです。

    許可基準ギリギリであとひと押し欲しいって時には農業委員とのパイプは役に立つかもしれませんが、それ以外の大半のケースではそういった輩には頼まない方が無難です。

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    shiro-shita

    仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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