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負動産が疑われる市街地から離れた原野、山林、農地の価格を考える
昨今、活用や維持管理が困難で所有者のお荷物、足枷となる不動産が社会問題化しています。
そんな不動産を”負動産”と称し世間はマイナス資産とみなしはじめていますが、
本当に無価値ですらなく、負債(マイナス資産)なのでしょうか。
それとも、これまで先祖代々守ってきたなりの資産性があるのでしょうか。
今回はいわゆる負動産の価値について考えてみたいと思います。
負動産の価格はどうやって調べるか
例えば市街地から離れた原野、山林、農地といった不動産の処分に困っていた場合、
その不動産について専門的過ぎる評価や理論値みたいなものを調べてもあまり意味をなしません。
要は、売れるのか、売れないのか、売れるならいくらなのかという経済価値を知りたい訳です。
インターネットで調べてはどうか?
実際の取引事例は国土交通省の土地総合情報システムで調べることができます。
しかし、例えば仙台市中心部から車で一時間掛かるような都市計画区域外みたいなエリアだと、周辺に取引事例はまず皆無でしょう。
athomeやhomesといった不動産検索ポータルサイトには販売中の事例があったりしますが、その物件は何年売れ残っているかわかりません。
不動産会社への聞き込みするのは?
データベースやインターネットの情報でダメなら、その地域のことをよく知っていて、実際の取引に携わっている不動産会社に聞いてみるのはどうかと思うかもしれませんが、
その周辺にはほとんど不動産会社がないでしょう。
売買がほとんど成立しない、仮に成立しても金額が低くほとんど商売にならないのですから仕方ありません。
仮に不動産会社があったとしても、
そのエリアでほとんど売買を扱ったことがないでしょう。だって売買がほとんど成立しないのですから。
そして、数少ないそのエリアの取引経験も、たまたま隣地の人に買ってもらったとか、東日本大震災の後で土取り場が必要だったとか、あまりに特殊な取引で参考にならなかったりします。
公的資料で調査してみたら?
さらに、そのような不動産の調査をするのには壁があります。
役所や法務局などの公的資料が市街地ほど揃ってないのです。
運良く国土調査を実施していればいいですが、そうでないと地積測量図があることは稀で、公図はありますが縮尺が大きく目安程度にしかならず、水道、下水の供給がなければそれらの図面もありません。
現地に行っても、不動産が広すぎてどっからどこまでかわからなかったり、樹木に覆われて探検家みたいな格好をしないと侵入すらできなかったりします。
誰もわかる人いないし、現地をみてもよくわからない、仮に調べられたからといって処分できるとは限らない
ほとんどの人はここで諦めます。
負動産価格算出するための不動産類型の把握
諦めずに負動産の価格を調べる方法を考えてみましょう。
対象が市街地から離れた原野、山林、農地の場合、以下のように不動産の類型を分けて考えてみるといいのではないでしょうか。
手前から順にお手持ちの不動産に合致するかを確認しますが、最後までいかずに手前で止まるにこしたことはありません。
類型1 将来化ける不動産
「今は田舎だが将来は都市化する!」
高速道路や鉄道が延線されて用地買収される見込み等があれば、価格はその時点の時価なのではっきりとはしませんが、それなりの価格で処分できます。
まぁ、そんなこと夢のような話でしょうが…。
類型2 現況で買い手がつく不動産
現在、収穫している農地や林業を営んでいる山林は経済的価値はあるので農家や林業者に買い手が付くかもしれません。
もちろん、宅地並みの金額にはなりませんが、田んぼ一枚いくらみたいな相場が地域で形成されていたりします。
農地だったらやっぱり農協が一番詳しいです。
もしくは原野でも隣地の所有者が取得すると有効活用できたり、もしくは、隣地が負動産化して荒廃するくらいなら引き受けると言ってくれるかもしれません。
山林はバブル期はゴルフ場開発、東日本大震災直後は土取り場としての購入の話がちらほらありました。今でもそんな話がない訳ではありませんが、与太話も多いので注意が必要です。
類型3 造成済みなら買い手がつく不動産
このあたりからだんだん暗くなってきます。
そのままでは買い手がつかないのであれば、その不動産を加工して商品性を上げる必要性があります。
造成工事をして、菜園用地、資材置き場用地、倉庫用地、別荘用地、ソーラー発電用地などとして商品化すれば、購入する人が現れるかもしれません。
とはいえ、造成費用は地形等によってピンキリですが、どんなに安くても1坪あたり5万円は掛かります。擁壁を組んだりすると1坪あたり10万円を超えます。
しかし、そういった立地だと例え造成工事をしても1坪あたり10万円以上ではなかなか売れないのではないでしょうか。
売れても収支が赤字なら、先行投資して造成工事する人はまずいないでしょうから、そういう不動産は最終フェーズに移行ということになります。
類型4 有償で処分
どんなに造成工事しても売れそうにないとか、法規制で造成できない、もしくは造成工事費用を捻出することができないといった場合、
最後は有償処分です。
ゴミを産廃業者に処分してもらうようなものですが、
ゴミと違うのは不動産なので焼却も埋め立てもできず、引き受けた側がずっと持って維持管理しなければなりません。
引き受ける側にとっては、その不動産を保有することで生じる毎年の維持管理費(固定資産税、除草費用など)と、所有者責任リスクといった諸々のしがらみを現在価値に割り戻していくらなら引き受けられるかという判断になります。
算式にするとこんな感じです。
| 不動産の引受価格 = 年間の経費 / (1+割引率)保有年数 |
割引率とは要は引受業者の利益で、慈善事業ではないので仕方ありません。保有年数は無限かもしれませんが、それだと価格がとんでもなくなるので、各社適当にある程度で区切るようです。
すごく簡単に言うと年間5万円の維持管理費が掛かる不動産を50万円で引き受けるとかそんな感じでしょうか。
実際はほとんどが負債です
はっきり言って、日本の国土の多くが4に該当すると思います。そんなことはないだろと思うかもしれませんが、日本の国土の74%もが都市計画区域外です。都市計画区域外に住むのは日本の人口のたった6%で、都市計画区域外で不動産取引の対象となるような経済性のある土地は限定的です。
市街地から離れた原野等の負動産は現実的に負債なのです。
不動産が売れないどころか、お金を払わなければならないなんて!
と思うかもしれませんが、
いくら不動産であっても商品性がなければ誰も買うはずありません。商品にしようとすると原価割れになりますが、それは何も特別珍しいことではありません。スーパーやドラッグストアで売っている商品は企業努力の賜物でやっと採算が見込めて世に出されていますが、作るだけ赤字となった不採算商品は5万とあります。
そうなると、政府が検討している土地の所有権を放棄できる制度の実現が待たれますが、
本当にできるのか現時点では不透明です。
<過去の記事>土地の所有権を放棄したい時に放棄できる制度 放棄された土地は国が有効活用?
今後は有償で処分するケースも増えていきそうですが、
業者が目先の一時金欲しさに不動産を引き受けて、あとは野となれ山となれみたいな感じで不動産は荒れ放題、業者は音信不通になり、見かねた隣接者や自治体が登記簿を確認して前所有者に連絡してくる、ということもあるかもしれません。
いくら有償処分とはいえ、まともな業者かは見極めるべきです。
その上でも、いきなり有償処分ではなく、しっかり類型を見極める手順を踏むことで、提示された処分価格が妥当かも判断がつくようになるでしょう。
shiro-shita
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