土地の所有権を放棄したい時に放棄できる制度 ​

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土地の所有権を放棄したい時に放棄できる制度 放棄された土地は国が有効活用? ​

少し古い話ですが、土地の所有権を放棄できる制度が政権の来年の骨太の方針に盛り込まれるそうです。

全く資産価値がないのに相続人から譲り受けざるを得なかったいわゆる“負動産”問題に即座に取り組む政権の姿勢はとても評価でき、

個人財産権を認めながら不動産については資産を放棄する自由がなかった制度的瑕疵を改める上でも意義があり、

いくら所有者責任とはいえ遠方の山や田畑を個人レベルで管理できるものではないという現実論に即しても、

このテーマについて政権が国民的議論を促し将来の道筋を付けていくことは全くもっていいことだと思います。

個人には”負動産”でも国からするとポテンシャルあり!?

これが実現すれば負動産問題にお悩みの人は救われます。

都内在住の方が東北の郡部にある実家を相続で譲り受け、最初は自分が育ったところで思い入れもあるし、父の兄弟が生きているうちは物議を醸したくないと売るのに抵抗があったものの、いざ売ろうとするとどの不動産屋も及び腰で、せいぜい現地も見ないでネット広告するくらいが関の山で一向に売れる気配がない。年に2回除草と様子見を兼ねて行っているが、自分も70歳を超えいつまでこんなことができるかわからず、子供も全く頼りにならないというか拒否感が強く、焦ってきたがどうしようもない…。

そんな人なら飛びつきます。

そして、こういったどうしようもない不動産であっても国のような大きな組織がまとめて管理管轄することで様々な可能性があります。

スケールメリットを生かして管理を省力化したり、公共施設用地にしたり、農業や林業等に活用したり、若手起業家に利用してもらって地方創生を後押ししたりできるかもしれません。

とはいえ、ほとんどははっきり言ってゴミ

しかし、そんなにうまくいくものはどれほどあるでしょうか。

確かにごく一部は国なり自治体に譲渡されることにより有効活用できるものもあるでしょうが、ほとんどは間違いなくマイナス資産です。煮ても焼いても食べられません。

それでも、安全対策上は多少の維持管理をせざるを得ず、経費が掛かる上に、固定資産税収入が入らなくなるので二重の痛手となります。

それならば、資産の放棄というより、ゴミの処分と捉えて処分者に相応の費用負担をさせるという考えもありますが、

費用負担の程度によるものの、これまでまがいなりにも資産だと思っていたものを有償処分するのは抵抗があり制度利用はなかなか進まないでしょう。

手続きの要件を厳格にして対象者を絞る方法もありますが、それだと骨太とは名ばかりの骨抜き政策です。

結局、つきつめれば誰に負担を押し付けるか、所有者だけに負担させるのか、国や自治体、つまり税金として広く国民に負担させるのか、それとも放置を黙認して周辺住民に我慢してもらうのかという問題なのです。

成立には障壁あり!?

この問題は社会問題化しており、所有者不明土地は九州の面積を超えるほど莫大ですが、当事者の数ははっきりとわからないものの予備軍を含めなければ今のところ莫大って程ではないはずですし、その当事者が団体で政治家に陳情している訳でもありません。

そして、その当事者は本当に要らないのであれば相続全体を放棄するという選択ができます。相続財産をいいとこどりする人を救済する政策との誹りを受けるかもしれません。

政党の支援団体でもなく、当事者ではない大多数の国民の不況を買う恐れがあれば、政治的にはあまり手を付けたくないのではないでしょうか。

しかも、不動産を譲り受ける国にしろ自治体にしろ現状の人員で対応できるか不安があり、固定資産税収入を失う自治体からは反発が予想されます。役所受けの悪い政策でもあります。

安倍さん本気ですか!?

現時点では政策が具体的にどのような中味になるのかわかりません。

それ以前に単なるポーズで終わるかもしれません。

個人的には”有効活用できる”とか大風呂敷を広げずに、まずは現状認識をしっかり行い周知すべきではないでしょうか。

将来、無価値やマイナス資産となる不動産の予測データや、買い手の需要がなく不動産取引が成立していないエリアを集計して公表したり。

多分、相当国民を暗くさせる結果になるとは思いますが、それが現実であれば知っていた方がいいでしょう。

人気取りのためにできないことをできると言ったり、甘い目論見をもとに制度設計されるのが最も困るのです。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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