不動産賃貸経営の限界点

不動産知識・テクニック

不動産賃貸経営の限界点

物件の築年数が経つ程に不動産賃貸経営の難易度は上がる!

不動産賃貸経営は事業なので当然に投資効率を追求します。

 
物件を取得して賃料収入を得る、

リフォームをしてその修繕効果を得る、

 
物件によって投資効率が高いものもあれば逆のものもありますが、

築年数が経つ程に投資効率が低くなるのは全物件に概ね共通しています。

 
何らかの判断をする際に取りうる選択肢を比較して結論を出すのですが、築年数が経つ程にどの選択肢であろうとジリ貧を抜け出せないということになりがちです。

 
言い換えると、築年数が経つ程に不動産賃貸経営の難易度は上がります。

当たり前のことのようですが、具体的に築年数が経つとどのようなことが事業の障害となるのでしょうか。

築年数が経った物件の壁

減る収入、増える経費で収益化できない

技術が進歩した現代では建物は修繕し続ければ半永久的に使用することができますが、

逆に言うと修繕し続けなければ維持できません。

そして、修繕コストは築年数が経つ程に年々右肩上がりとなります。

 
対して収入は建物のコンディションが同じなら逓減していきます。

世の中が求めるサービス水準は技術の進展とともに上がりますし、他の要素が同程度なら普通は築浅の物件を選びます。

 
なので、築年数が経過するとコストは多額になるもののリターンは減少していき、いずれ損益分岐点を下回ります。

そこが事業の限界点です。

 
築年数が経つと事業として成り立たなくなるのは基本的にこのような理由からです。

 
しかし、築年数が経つ程にさらに別の問題も起こりやすくなります。

リスクが制御不能に

設備の劣化や不具合が起こると修繕が必要なだけではなく、時として賠償責任を負うことがあります。

 
雨漏れで入居者のパソコンが壊れ、修繕期間中は一時的にホテルに滞在してもらった

 
築年数が経つ程に劣化、不具合が多くなるので、損害賠償リスクも築年数が経つ程に高くなる傾向にあります。

 
また、築年数が経つと以前の賃貸条件では入居が決まらないので、賃料を下げたり、初期費用を落としたりすることが多くなります。

すると訳アリな方々が入居することが増え、家賃滞納、周囲からのクレーム、事件事故、と言ったトラブルも増加しがちです。

トラブルにより管理に割く時間や手間が増え、他の入居者が退去して収入が減ったり、最悪は心理的瑕疵物件となり資産価値を大きく毀損する恐れもあります。

築年数が経つ程にリスク発生率が上がり、リスクの種類によっては事業継続が危ぶまれるダメージを受けるということもあり得ます。

承継対策・出口戦略を取りにくい

物件は決して売らずズタボロの限界になるまで使う勿体ない精神の塊の方は結構いますが、

実際に手放すかは別にして、物件をいつでも売れる(出口戦略)、誰かに引き継げる(承継対策)状態にしておくのは、万が一の際のリスクヘッジというか現代的な不動産賃貸経営では半ば当然のこととなっています。

そのためには、物件の収益性・建物コンディションが保たれており、入居者や近隣との揉め事がなく、それらのエビデンスとなるドキュメントが揃っていることが重要です。

 
しかし、築年数が経つ程にそれとは真逆のグダグダな管理状態で、ドキュメントどころか当事者同士の記憶と人間関係に依った誰も引き継げない状態になっていることが多いです。

その理由のほとんどは物件が築古ならオーナーも高齢(オーナーが法人なら社長が高齢)で昔ながらのアナログなやり方をしているからですが、

トラブルが頻発しドキュメンテーションしようにも件数が多すぎたり、収益性が低いためまともな不動産賃貸管理業者に依頼できないということもあります。

 
そんな状態で何とか頑張って保有しても、売るに売れない、相続人に承継できない物件になってしまいます。散々買い叩かれるか、自分の代で責任を持って立退き・解体するしかありません。

そして、空室が多いと相続税評価の圧縮効果も低くなりますし(賃貸割合の減少)、ドキュメント不備はトラブル時の対抗力を毀損します。

壁を越えられのは努力不足ではなく自然なこと…

健全な賃貸経営を行う上では

  • 収入が経費を上回る
  • 身の丈に合ったリスクテイク
  • 承継対策・出口戦略を講じられる
  •  

    ということが大前提ですが、

    築年数が経つ程に難しくなるのです。

    それは経営に工夫が足りないということもあるかもしれませんが、基本的に賃貸用不動産はいずれはそうなるものなのです。

    確かに修繕すれば建物を使うことは可能でも建物の寿命の前に事業としては限界が来る。

    そういうものだと思って前々からご準備いただければと思います。

    The following two tabs change content below.

    shiro-shita

    仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

    賃貸物件の修繕 バリューアップのコスパを考える賃貸物件の修繕・バリューアップのコスパを考える前のページ

    弊社の2期目が終わりました次のページ弊社の2期目が終わりました

    ピックアップ記事

    1. 不動産管理業はこれから厳しい!?将来誰も不動産管理してくれなくなる前に”アセット…
    2. アパート1棟買っちゃいました ~個人的不動産投資談①~
    3. これを読むと不動産業界では働きたくなくなる!? 不動産会社での雇用・労働の実態と…
    4. 大家・管理者のための入居審査の勘所
    5. 不動産向け融資が凍結されている今、「しょっぱい不動産投資」で糊口を凌ぐ

    関連記事

    1. 住宅購入の諸経費を安くするポイントは耐震基準にあり

      不動産知識・テクニック

      住宅購入時の諸経費を安くするポイントは耐震基準にあり

      住宅購入のお得感は旧耐震と新耐震で分断される住宅購入時には物件代金…

    2. アパート・マンション自主管理マニュアル⑫契約・引渡しの流れ

      不動産知識・テクニック

      アパート・マンション自主管理マニュアル⑫「契約・引渡しの流れ」

      自主管理における賃貸借契約から物件引渡しまでの事務手順第1…

    3. 不動産の売り手はなぜ折れないか?

      不動産知識・テクニック

      不動産の売り手はなぜ折れないか? 不動産買い手の最適化戦略③

      買い手の交渉戦略を無力化するほどの売り手の強気はどこから来るか?前…

    4. コロナショックでテレワークに適した理想的アフターコロナ住宅をお得にゲットできるか!?②
    5. 住まいプランハック 【持家・賃貸・投資ミックスプラン】

      不動産知識・テクニック

      住まいプランハック 【持家・賃貸・投資ミックスプラン】

      大は小を兼ねるはムダ!中ぐらいの住まいを基準にする!多くの人が求め…

    6. 不動産知識・テクニック

      アパート・マンション自主管理マニュアル②「入居者クレーム対応」

      第2回は入居者からのクレーム対応についてです。アパート・マンシ…

    1. 賃貸物件に前向きに高齢者を受け入れる ​ために

      不動産知識・テクニック

      賃貸物件に前向きに高齢者を受け入れるのにまずはソフト面から改善を アパートオーナ…
    2. フリーランス&ぼっち法人は生産性向上のために何に投資すべきか

      個人的なはなし・意見

      フリーランス&ぼっち法人は生産性向上のために何に投資すべきか?
    3. しょっぱい不動産投資「築古戸建」編

      不動産知識・テクニック

      しょっぱい不動産投資「築古戸建」編
    4. 不動産の価格以外で重要な条件とは!?

      不動産知識・テクニック

      不動産売却のチェックポイント8 売却条件の決定 価格以外で最も重要なことは!? …
    5. 祖父の愛したゴミと不動産② なぜ人は暗さに陥るか

      個人的なはなし・意見

      祖父の愛したゴミと不動産② なぜ人は暗さに陥るか
    PAGE TOP