ネットをフラフラ見ているとこんな記事が
家の勝ち組「10年やどかり族」という生き方
「持ち家」か「賃貸か」を悩むのは、もう古い?
https://toyokeizai.net/articles/-/244817
やどかり族って、購入したらずっとその家に住むでも、ずっと賃貸に住むでもない、新しい住まい方として提唱されています。
割安物件を購入し、10年ほど暮らしたら購入価格よりも高く売却して、その時のライフプランに合った住まいに買い替えていく住まい方です
やどかり族になるとどんなメリットがあるか
一般的なライフプランだと、
20代で親元を離れ一人暮らし、結婚して夫婦で生活、妊娠・出産、子供が成長すると一人部屋が必要になり、子供が独立すると夫婦二人に戻り、最終的には配偶者と死別して一人暮らしや施設暮らしをしますが、
購入したらずっとその家に住み続ける住まい方だと、そういった家族人数の変遷への対応が難しく、子供が独立すると郊外の広い家に夫婦二人で寂しく住むってことが多くなります。
逆に賃貸であれば住み替えればいいのですが、高齢になると受け入れてくれる物件が著しく減ってしまいます。
そこで両方のいいとこどりをするのがやどかり族です。持ち家購入して、家族構成等の変化に合わせて買い替えていくのです。
ただし、普通に家を購入すると10年後の売却価格は購入価格を下回るので、周辺の賃料相場と物件価格を比較したりして将来価値が上がる物件を選びます。
やどかり族って本当に成り立つの!?
やどかり族はとても素晴らしい住まいプランですが果たして本当にできるのでしょうか。
価値が上がる物件を選ぶというが…
買い替えるたびに立地のレベルを落としていくとか、築古の物件にしていくのではなく、あくまでも相対的な価値が同じで間取りといった機能が違う物件に買い替えていくのであれば、
10年間住むことで生じる建物の償却分と同等以上の地価や希少価値の上昇が必要になります。
事例のマンションは専有面積76.30㎡(23.08坪)なので購入時の坪単価は259万円(5980万円÷23.08坪)で、売却時は120万円高く6100万円で売れたので坪単価は264万円で1.9%のアップです。
実は仙台近辺ではリーマンショック後に落ち込んだ最安値と東日本大震災バブル後の最高値を比較して50%アップなんてざらにあるので驚きはしませんが、
東京でもオリンピック景気と資材高騰・人材不足による建築単価アップがありマンション価格上昇圧力があったはずです。
なので、数%アップは決して珍しい現象ではないと思いますが、
それは立地や物件の選び方に因る自然的上昇もあるでしょうが、リーマンショックや震災にオリンピックといった偶発的イベントに因る上昇が大きいでしょう。
ですので、価値が上がる物件を見極めるのに必要なのは、偶発的イベントの発生を予見する能力です。
・・・
そんな能力が備わった人は普通いません。
しかも、運良く住まいが値上がりしたとしても、買い替える住まいは逆に市況が良い時に購入しなければなりません。
不動産買替によるコストは馬鹿にならない…
なお、物件を売買する際には諸経費が掛かります。
売却時には仲介手数料、抵当権抹消費用、
購入時には同様に仲介手数料、ローン保証料、登記料といった費用が必要です。
概算で売却時に200万円、同額の物件を買ったとしたら購入時に300万円は掛かるでしょう。
120万円の値上り益では賄いきれないので別途用意する必要があります。
しかも、それは売却してそのまま次の購入物件に移り住んだ場合です。
基本的には、それまでの住まいを退去して室内を空にしないと買い手から売却代金はもらえず、売却代金を受領しないとそれまでの住宅ローンは完済できず、完済しないと次の住宅ローンを組むことはできないので、それまでの住まいを売却してから次の住まいに移り住むまで一時的にどこかに仮住まいしなければなりません。仮住まいといっても普通に賃貸物件を契約するので契約金に数ヶ月分の家賃で50万、100万掛かります。しかも、短期契約は大家に嫌がられます。
もしくはそれまでの住まいの売却前に次の住まい分を上乗せでローンを組んで一時的に2物件分のローンを支払います。約2倍のローンを支払えるかという問題と、そもそもローンを組めるかという問題があります。
費用を圧縮するためにはこの買い替えの時間的ロスを最小限にしなければなりませんが、そのためには、それまでの住まいを住みながらにして高値での購入者を見つけ、即座に次の10年後に値上りする物件を購入する必要があります。
天文学的な確率とまでは言いませんが、あまり現実的な話ではありません。
やどかり族を目指すとたぶんこうなる
やどかり族を実現するのは難易度が高いので、
10年後に値上がりする物件という条件が厳し過ぎていつまでたっても物件を購入できない、
もしくは、購入したものの10年後に値上がりしていなかったり、値上がりしても次の物件も値上がりしていて購入できないということが起こります。
結婚直後にDINKS用マンションを購入して、10年後には子供部屋のある物件に住み替える計画だとしたら、子供が大きくなってもDINKSマンションに住み続けなければならないかもしれません。
そして、やどかり族が成り立つには、負け組が二組必要です。
一組目は10年後に値上がりする物件をその前に売ってしまう人、
もう一組は10年前はもっと安く買えたのに値上がり後の価格で買ってしまう人
倫理上の問題を指摘している訳ではなく、競争社会で勝者になる覚悟と実力と運が必要ということです。不動産の転売業者になったつもりでやらないと成り立たないでしょう。
それでも住まい方の多様化には大賛成!
やどかり族は万人ができるほど簡単なものではないので、普通の人が安易に手を出すのは考えものですが、仮に10年後に値上がりしたらラッキーくらいの気持ちで、しっかり物件を選びつつ、思惑通り値上がりしなくても対応できるくらいでやるならいいことだと思います。
実際に私の知り合いでも実行しうまくいっている人もいます。
そして、やどかり族が避けているように、子育てメインに広い間取りの家を終の棲家として35年ローンで購入するって住まい方はすでに当たり前ではなくなっています。
今後、様々な住まい方をする人がもっと増え、世の中も住宅ローンといった制度もそのことにより寛容になっていくのだと思います。
やどかり族は少し極端ですが、このような議論が盛り上がり、住まいの多様化社会が加速していくことを私は期待します。
shiro-shita
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