賃貸住宅で失敗しない間取の見方③

買い手・借り手

賃貸住宅で失敗しない間取の見方③

残念な間取が量産される理由

前回まで実用性の低い残念な間取について記載しました。
<前々回の記事>賃貸住宅で失敗しない間取の見方①
<前回の記事>賃貸住宅で失敗しない間取の見方②

アパート建設業者の苦しまみれの一手が残念な間取を量産する!?

まともに機能しない1LDKやメゾネットを作るくらいなら、ありきたりの1Kにしておいた方がまだいいはずですが、なぜわざわざそんな間取りを作るのでしょうか?

 
理由はアパート建設業者の事情にあります。

アパート建設業者が新規受注するには下記の壁を乗り越えなければなりません。

  • 駅から離れた立地
  • 地形の悪さ
  • 建築費の高止まり
  • 他社との過当競争
  • 駅から離れた立地

    駅から近い間違いない立地はすでに開発されているので、新たに建築を受注するには微妙な立地の地主にトライせざるを得ません。

    で、そういうエリアは1Kがボコボコ空いているので流石に1Kで提案できず、エリアに供給実績がまだ少ない1LDKやメゾネットを提案します。

    地形の悪さ

    別に1LDKやメゾネット自体が悪いのではなく、まともな1LDK、メゾネットならいいのですが、そもそも地形が悪くてまともにプランが入らないということがあります。

    というか、入らない訳ではないのですが、効率的に入らないのです。

    アパートを建てるなら本当言うと8戸以上が望ましいです。4戸とか6戸とかだと1戸あたりの外壁・屋根面が多くなり建築費の割に家賃収入が伸びず投資として厳しくなります。

    投資を優先して無理くり8世帯以上にすると自ずと間取にしわ寄せが生じます。

    建築費の高止まり

    もちろんアパート建設代金が安ければ4戸だろうが投資として合いますが、現在は建築費が過去最高水準です。

    建築費が高くてこれならやる意味がないと言われかねないので、1Kより賃料相場が高い1LDKが多用されます。

    1Kよりも使いにくい1LDKだと将来的には1Kよりも賃料が下がる可能性もありますが、アパート建設業者にとってはとりあえず受注を取ることが最優先です。

    他社との過当競争

    確かにアパートは投資的な側面が強いですが、利回り軽視で相続対策で建築する地主は多くいます。そういった地主にとっては見せかけの利回りは高くても将来的にお荷物となるより、長い目で見て間違いない方がいいはずです。

    ただし、そのような地主の事情を汲んで低利回りだが間違いない提案をしていても、競合他社が利回りの高い提案をぶつけてくるとどうしても見劣りしてしまいます。

    「利回りが高い=リスク(空室&賃料下落リスク)も高い」というリスクとリターンのトレードオフという投資の大原則を理解している地主はむしろ少数であり、アパート建設の営業は他社よりも高いリターンをアピールせざるをえません。

    アパート建設営業は限られた地主に各社群がる仁義なき戦いなのです。

     
     
    つまり、アパート建設においての重要度は

    アパート建設業者の売上 > アパートの当初の利回り > アパートの将来&入居者の使い勝手

    なのです。

     
    中にはそもそも使いにくいと知りつつもアパートを短期転売するために最初だけ満室になればいいと思っている地主というか建売アパート業者もいます。

    残念な間取りを摑まされないためには

    そんな残念な間取であっても新築物件はよっぽど立地が悪くなければ満室もしくはそれに近くなるはずです。ロクに物件を見ないで決める入居者がいるので。

     
    特に会社都合の転勤で会社が家賃負担する「法人契約」の場合、駅から近い新築物件というだけで入居判断しがちです。住んだ後に苦労することでしょう。

     
     
    そんな残念な間取を摑まされないためにはどうすればいいでしょうか。

     
    残念な間取の難しさは間取図を見ただけだと気付きにくいことです。

    私がしたように間取図に家具を配置してみるといいのですが、間取図には縮尺が書いていないので、建築の知識がある人ではなければその間取図では家具がどの大きさになるかわからないでしょう。

     
    やはり、実際に現地を見るということになりますが、

    家具のサイズを把握していないとなりません。

    ベッドや冷蔵庫のサイズはわかりやすいですが、椅子の引きしろはどれくらい必要かとか、横になれるソファーのサイズはどうかとかよっぽど準備して臨む必要があります。

    1日で決める突貫スケジュールだとなかなかそこまで吟味して選べないでしょう。

    しかも、残念な間取りばかり作っているアパート建設会社は部屋は狭いながらも天井を高くしたりして、部屋を実際よりも広く、良く見せるノウハウを持っています。

     
    なので、最大の対処法は“疑わしきはやめる”ということになります。

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    shiro-shita

    仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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