引き続き不動産売却のチェックポイントについて記載します。
<第1回>権利証・登記識別情報通知
<第2回>抵当権等の不動産に設定された権利
<第3回>完璧な隣地との境界の状態とは!?
<第4回>室内外の動産ってやっぱりゴミなの!?
<第5回>修繕履歴を残しインスペクションするのが最近の不動産売買の流れ!?
<第6回>販売は住みながら? 空家にしてから?
<第7回>リフォームやホームステージングをして売るべきか!?
<第8回>売却条件の決定 価格以外で最も重要なことは!?
<第9回>不動産会社の査定書の注意点 & マユツバな会社の判別法
売出価格を無暗に高くするとどのような弊害があるか?
不動産会社の査定価格で売り出さないとならないか?
そんなことありません。
不動産会社の査定価格はあくまでもその会社が考える売却予想価格もしくは販売提案価格なので、その価格なら必ず売れる訳ではありませんし、逆にもっと高く出したら売れないと断言することもできません。
査定価格とはその程度のものなので、不動産会社が行なった価格査定をベースにしながら、売主としてはもう少し上乗せして売りたいとか、急いでいるから少し低めでみたいなやりとりで販売価格を決めるのが一般的です。
また、抵当権を付けている銀行への完済金や引越費用といった必要額を算出していくと、そもそも査定額で売れても必要額を賄えないかもしれません。
その場合は必要額が賄える金額で売りに出さざるを得ません。
いずれにせよ価格の最終的な決定権は売主にあるので、極端な話、査定価格の倍で売りに出すこともできます。
相場より高い価格で売りに出すデメリットとは?
不動産会社は一応、適切な相場環境を形成するため相場価格で売るよう助言する義務があり、あまりに相場からかけ離れた高値で売ろうとすると、価格を下げるよう主張してきたり、中には販売を辞退する不動産会社もいます。
どうしても自分の希望価格を貫きたいのであれば、何もその会社にこだわらず、違う会社に依頼すればいいでしょう。不動産会社なんていくらでもいるので、言いなりの価格で販売活動してくれる会社も中にはいるはずです。
そこまで強いこだわりはなくても、
「とりあえず最初は高い金額で出してみて、飛びついてくる人がいればラッキー、買い手が出ないなら少しずつ価格を下げていく」
そのような“逆オークション方式”は一見すると「理想的高値での売却の可能性もありつつ、必ず最高値の買い手が購入者になるシステム」のように思えます。
しかし、相場より著しい高値で売りに出したり、逆オークション方式にはデメリットもあります。
デメリット1 買い手に様子見される
不動産を購入したいと思っている顧客がいても、いざ売りに出された不動産の価格が予想を上回る場合、普通は躊躇します。
それで、売れるまで時間が掛かったり、そもそも売れなかったりするというデメリットがあります。
それでも、時間が掛かるのは全然問題ないという売主もいると思いますが、買い手のマインドに影響を与えるのです。
顧客の中にはどうしても欲しかったり、価格相場がわからなくて高値で購入する人も少数派ながらいます。
しかし、その少数派が手を上げなかった場合、価格を下げざるをえませんが、徐々に下がると多くの人はもっと下がるのではないかと思って様子見します。
買い手にとってもっとも合理的な判断は、いくらなら買うと最初から決めておくことで、それなら価格はそこで下げ止まり、売主としてもありがたいのですが、そのような合理的判断ができる買い手もまた少数派で、ほとんどは場の空気に流されてしまいます。
つまり、この戦略は売主にとって、相場度外視で高買いする少数派がいれば勝ち、ある程度の価格で購入する合理的な少数派がいれば引き分け、それがいないと負けになります。
勝ちと引き分けだけの有利なゲームではなく、フェアなゲームなのです。
デメリット2 競合物件を利する
高い価格で市場に物件を供給することで、競合している物件が割安に見えてしまいます。
競合物件を買うかどうか迷っている顧客の背中を押す結果になりかねません。
その顧客は最初から適正価格で売り出しすれば購入したかもしれませんので、物件の買い手候補が減ってしまいます。
デメリット3 本気で検討できない
金融商品や貴金属といった価値がわかりやすいものであれば、買い手側がその商品にいくらまで出せるか算出しやすいので逆オークション方式でもいいかもしれません。
しかし、不動産の場合、土地なら、そのロケーション、道路付け、土地形状からどのような建物を作ればいいかプランニングした上で、土地代金、建物工事費に諸費用を含めたトータルコストと、得られる収益・便益が見合ったものであるかを検討しますし、中古建物なら、同じくロケーションに、間取、建物や設備のグレードが目的に合うものかを見極めた上で、不動産価格にリフォームやコンバージョン費用を含めたトータルコストで判断します。
しかも、多くの場合は融資する金融機関ありきとなります。
つまり、物件ごとに工事業者や金融機関を交えて個別に綿密に計画しないといくらまでその不動産に出せるかわからないのです。
それを、いくらで買えるか不明確、そもそも買えるかどうかも不明確な状態ではよっぽどでない限りは本気で検討できません。
本気の検討ではないので細部を詰めずに余裕を持った予算組みとなり、かえって購入できる金額は下がるのです。
常識的な価格設定が無難
将来的にはビッグデータやAIを利用することで不動産のプランニングや予算組みに要する時間は短縮され、売却方法にオークション・逆オークション方式を採用するケースは増えると思いますが、
今のところは、従来のやり方ー売買条件は固定して集客して、具体的な顧客が出たら、相対で売買条件の詳細を詰めるのが無難だと思います。
そして、条件を固定する以上は、あまりに相場からかけ離れた設定は避けるべきなのです。
遠回りな話でしたが、結局は一般的な結論なのです。
shiro-shita
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