引き続き不動産売却のチェックポイントについて記載します。
<第1回>権利証・登記識別情報通知
<第2回>抵当権等の不動産に設定された権利
<第3回>完璧な隣地との境界の状態とは!?
<第4回>室内外の動産ってやっぱりゴミなの!?
<第5回>修繕履歴を残しインスペクションするのが最近の不動産売買の流れ!?
<第6回>販売は住みながら? 空家にしてから?
<第7回>リフォームやホームステージングをして売るべきか!?
<第8回>売却条件の決定 価格以外で最も重要なことは!?
不動産の売出し価格決定までのプロセス
これまで確認した物件の状態 -境界杭の欠損や設備の不具合など
これまで考慮した売買条件 -公簿売買or実測精算、瑕疵担保責任負担の有無など
そして、土地や建物の資産性を総合的に判断して不動産の売出し価格を決めます。
基本的には土地、建物の資産価値を算出した上で諸条件を考慮して価格を増減します。
土地、建物の資産価値
純粋な土地、建物の価値です。
不動産の資産価値の算出には不動産鑑定士といった専門の資格があり、また、財務省が出している路線価に国土交通省の地価公示、都道府県の地価調査、市町村の固定資産税評価と、様々な基準や評価方法が確立され真の価値に迫ろうとしています。
その基準や理論についてはたくさんの書籍、様々な情報がありますのでここでは割愛させていただきますが、不動産の価格の8割以上、ものによってはほぼほぼ全てが純粋な土地、建物の価値です。
逆に言って、残りの僅かな価格構成要素について、わざわざ解説しているのがこの不動産売却のチェックポイントとなります。
不動産会社による査定
土地や建物の資産価値を調べる最も一般的で現実的な方法は不動産会社に査定を依頼することです。
査定を依頼すると、よっぽど辺鄙なところにある物件や、よっぽどやる気のない不動産会社でなければ喜んで無料査定してくれるでしょう。
なぜなら、査定依頼は販売依頼、売買成立時の仲介手数料につながる入口だからです。
要は査定は不動産会社にとってビジネスの根幹にかかわる営業なのです。
何だ営業かと思うでしょうが、この売却チェックポイントは不動産仲介会社抜きで不動産を売るための知識、テクニックを解説しているというよりは、不動産仲介会社の仕事をチェックしたり、よりスムーズに不動産仲介会社と話ができるように記載しています。
まともな不動産会社であることが大前提にはなりますが、やはり成約時に手数料を払ってでも売却の仲介業務を不動産会社に依頼する方が、自分で全部やるよりも総合的にメリットがあるのではないかと思います。
そして、不動産会社の査定は、その不動産会社がまともであるかを見極めるいい機会です。
どのようなところで見極めればいいのでしょうか。
査定書での不動産会社判別法 査定額が一番高い不動産会社に任せる!ってのは危険がいっぱい…
査定書の記載額の意味は会社によって異なる!?
まずもって、不動産会社の査定書は全国一律の雛型や統一的基準がある訳ではありません。
各社バラバラなので、査定書に記載されている金額の意味合いが異なることがあります。
以下の3通りが考えられます。
1.査定価格
土地建物の資産価値です。
通常は現状のままの不動産を売却することを想定して価格が算出されています。
この価格は市場が完全に公開され情報格差がなければ、究極的にはどの不動産会社が査定をしても同じになります。
(実際は不動産市場には不透明性があり、査定には予測の部分も盛り込まれているので、会社によって異なることになります)
2.販売提案による価格
そのまま査定価格で売るのならどの不動産会社に依頼しても同じです。
その会社なりのノウハウ、工夫でより高く、早く、安全に売却するのが不動産会社の力量の見せ所です。
その価格が販売提案による価格です。
本当に有利な条件で売れるという信憑性と、そのために払うコストやリスクが重要な判断要素となりますが、もちろんチャレンジ的要素を多分に含むので確実ということはありません。
3.売出価格
販売を開始する価格です。
不動産の売買では買い手との価格交渉が付き物なのでそれを見越して査定額から上乗せしたり、査定額によらず売主の強い意向により売出価格が決定されたりします。
不動産会社の査定書にこれらの言葉がそのまま出てくることはまずありませんので、突っ込んで確認して正確な意味合いを把握する必要があります。
査定額は正確に、販売提案価格は高く、売出価格は査定額と販売提案価格を加味して売主が決めるのが基本であり理想です。
不動産会社の専門性、企業努力、誠意
査定書で突っ込むところはまだあります。
その中身こそが不動産会社の本当の実力です。
質問に対し曖昧な説明しかできないようでは専門サービス業としてイマイチです。
昔は資産価値を適正に見積もれて、安全に取引できればまともな不動産会社と認識されましたが、現代ではそれはできて当たり前です。
そして、最も危険な査定書は、根拠が不明確であるにもかかわらず査定額や販売提案価格が高いものです。
売主としてはとにかく金額が高い査定書を採用したくなるのが人情ですが、不動産会社が仲介する前提の査定では価格を高くするのは簡単で、売主の歓心を買うために高い査定額を採用する不動産会社は多くいます。
中古車買取店の見積だと実際にその価格で買い取らなければなりませんが、不動産会社の査定はその会社が買い取る訳でも、その価格で売れない場合に責任を負う訳でもないのです。
提案内容が売主の実情に合っているか
その会社独自のノウハウ、工夫により有利な条件で売れるよう提案すると言いましたが、全ての売主がそれを望んでいるわけではありません。
「100万円掛けてリフォームして300万円高く売る!」
と提案されても、そんなお金ないから不動産を売るんだよって人もいます。
提案はあくまでも売主の希望とテイクできるコスト、リスクに見合ったものでなければなりません。
査定書提出が売主と不動産会社の「はじめまして」の機会で、不動産のことは調べていても、売主のことはわからないということもあり、その場合はピントのずれた提案になるかもしれません。
しかし、不動産会社には売主と話をしながら売主の考えを飲み込んで戦略を変更できるくらいの洞察力とヒキダシの多さが求められます。
キャンペーンや具体客を匂わすなど本質とは違うアピールをしてきても…
「専属専任媒介キャンペーン」とか銘打って期間内だと特典を受けられることを推してくる不動産会社があります。
キャンペーン自体は大変結構なことで、売却にあたる提案内容が良く、なおかつキャンペーンも行っているのなら願ったり叶ったりです。
しかし、売却にあたる提案内容が薄いのをごまかすためのキャンペーンなら注意です。
キャンペーンによって得るものと、売却遂行能力が低い不動産会社に依頼することで被るリスクを天秤に掛けてみましょう。
併せて、「実はこういった物件を欲しがっていたお客様がちょうどいて…」みたいな話も注意です。
キャンペーン同様に売却遂行能力が高い上に、具体的な顧客も抱えているならいいですが、依頼を受けるためのギミックであることもあります。昔の不動産屋はよくそんな手口を使いました。
せめて紹介はその顧客限りにして、不成約であればその不動産会社への売却依頼を打ち切った方がいいでしょう。
不動産会社選びは重要!
不動産売却における不動産会社の役割は非常に大きく、売主と不動産会社の二人三脚でゴールを目指すくらいの感じです。
これらのポイントに注意しながら、目的や思いを共有して不動産売却プロジェクトを遂行するパートナーとなる不動産会社を選択しましょう。
shiro-shita
最新記事 by shiro-shita (全て見る)
- 弊社の第6期が終了しました - 2024年11月18日
- 【解説】負動産の処分プロセス - 2024年11月1日
- 【解説】不動産賃貸のプロセス - 2024年10月28日