「事故物件リスク」という モンスターを制御する方法①

貸し手

”事故物件リスク”というモンスターを制御する方法①

事故物件リスクは対処不能・制御不能のモンスターとなりつつある

心理的瑕疵がある不動産を事故物件と言いますが、心理的瑕疵とは人によっては忌み嫌うような過去があることです。

つまり、事件や事故に自殺、孤独死といったことです。

ただし、何が心理的瑕疵に該当するか規定はなく、その人の感覚で忌み嫌うことであれば心理的瑕疵となりえます。

現在、不動産オーナーや不動産業者にとって事故物件は過剰なリスクとなっています。

事故物件は可能性もリスクも無限大

例えば、「子供をアパートの一室に放置したことにより衰弱死して母親を逮捕」みたいなことがアパートの一室で起こった場合、

その部屋がハイレベル事故物件となるのは誰しも疑わないでしょう。
(その部屋に住むのに何のためらいも感じないという強者も中にはいますが…)

 
ただし、別の部屋であったとしても同一棟内に住むのは気がひけるという人や、周辺の別棟に住むのでさえ嫌という人も若干ですがいます。

心理的瑕疵であるかどうかはあくまでも受け手の感覚なので、不動産オーナー&業者の告知&調査義務はそういった方々にも対応しなければなりません。

それを怠ると、過剰に気にするとか、訴訟好きなモンスターチックな人に当たって爆死します。

 
心理的瑕疵により不動産の資産価値が数千万レベルで吹っ飛んだり、同じく数千万レベルの損害賠償責任を負ったり、周辺物件にも風評被害が及ぶことがあり得るのです。

事故物件このままだとヤバイっす

だったら何から何でも説明すればいいじゃんと思うかもしれませんが、

 
しかし、それだと、

まず、調査業務が過剰になります。

周辺への聞き込み、過去の入居者への聞き込みをしたとしても完璧に調査できる訳ではありません。

 
次に、気にならないようなことも文章として記載されると気になってきて、賃料&物件価格の減価要因となります。

以前、不具者は差別用語だということで障害者と称するようになりましたが、今度は「害」という字が差別だという人も出てきました。これまで白だったものが、徐々に灰色となり、いずれ黒になってしまうのです。

 
そして、このような過剰な対応の弊害は、いずれは不動産オーナー&業者にとどまらず社会全体に波及します。

 
心理的瑕疵により生じる経済的損失を補うため、あらかじめ入居者の賃料にその分を上乗せしなければならなくなったり、

高齢者、生活保護、シングルマザーといった社会的弱者は事故リスクが高いと賃貸物件から締め出されたり、

ひいては、格差の拡大、低所得層のさらなる貧困化が生じ社会が不安定化し、それを社会保障で穴埋めするとなると増税必至です。

事故物件の本当の問題点

事故物件に対する告知&調査義務が過剰と述べましたが、実はそれは本質的な問題ではありません。

本質的な問題は、事故物件の範囲とそのマイナス価値が不明確というより底なし沼的でマーケット関係者や顧客がその評価損を共有認識できず、ヘッジもできないことと、

第三者である被害者やその関係者への配慮からプライバシー保護の観点から情報開示に限界があり、そして、そのことが死について語ることを憚る文化と、隠す=重大事と受け取られ、発覚時のインパクトがかえって大きくなることです。

過剰な告知&調査はその本質的な問題による二次被害的なものです。

【事故物件の本質的な問題点】

    ・事故物件の評価方法が確立されていないことでかえって評価が下げ止まらない
    ・「個人情報保護&文化的側面」 VS 「告知&調査義務」

 
 
これらの問題を解決し、

心理的瑕疵があることによる評価減が明確になり、それを隠すより明示する方が合理的であると判断される

心理的瑕疵を明示しても被害者等から非難を受ける恐れがないので、事故物件情報が社会で共有され、買い手・借り手が適切に判断でき、不動産業者の調査も楽になる

というのが理想です。

 
そのためにはどうしたらいいでしょうか?
(次回に続く)

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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