前回、賃貸物件におけるプロモーションの検証方法について解説しました。ただし、これはNGっていうのは例示しましたが、こうすると効果抜群という方法まではありません(実は細かいテクニックはありますが抜本的に変わる程ではない)。
【不動産会社に依頼した入居者募集が決まらないときにやること 不動産オーナーによる物件マーケティング戦略の検証その1】
【不動産会社に依頼した入居者募集が決まらないときにやること 不動産オーナーによる物件マーケティング戦略の検証その2】
大手ポータルサイトの枠内という制約と、ポータルサイト外だと現時点では顧客になかなか届けられないという情報導線の問題があるからですが、
一方で、顧客が求めている情報はほぼ判明しています。
今回は顧客が賃貸物件のどんな情報を求めているか、それはどうしたら提供できるか掘り下げて考えてみたいと思います。
Contents
顧客が求める情報

どんな人にマッチする物件なのか
不動産以外の一般商品であればどんな顧客をターゲットとする商品なのかは最初に決めることで、顧客ターゲットゾーンがどこかはっきりとパッケージに書いてはいないまでも、パッケージのデザインから、広告も含めてターゲットゾーンを意識して作るので自ずと滲み出ます。
不動産の場合、顧客は直接ターゲットゾーンがどこか尋ねることはありませんが、自分がお門違いの客ではないか不安があり、どんな人にマッチする物件かを直接的な言及または滲み出るイメージで知りたがります。
ただし、アパート等の不動産の場合、新築時であれば、例えば若い単身サラリーマンとか、子供がいる夫婦向けとか、コンセプトを持って作られますが、そこから年数が経つと、周囲の環境や、入居者のステータスが変わって、どういったコンセプトの、どういう人に向いた物件であるとオーナーや不動産会社でもはっきり認識していなかったりします。それで、下手に物件コンセプトを打ち出して、本来ニーズがあるゾーンを外したり、ゾーンを狭めるよりかは、顧客の側で解釈してもらおうと考えがちです。
対して顧客は、よっぽど気になる物件以外は自ら情報を整理して解釈するような脳に負担が掛かることはしないので、物件は他の物件に埋もれやすくなります。
物件の短所
世の中に出回っている商品に完全なものはないと誰もが知っています。
例えばパソコンなら、安価で性能が良くてサポートが充実している一流メーカー品などは売っていません。
どこかを良くしようとすれば、逆にどこかに皺寄せが来たり、値段が高くなるのは当たり前です。
賃貸物件を選ぶ際に、物件の長所がどれだけ生活を充実させるかという観点はもちろん重要ですが、物件の短所が顧客にどれほどの負担を強いるかもそれと同じくらい重要です。
顧客としては、多くの人にとってデメリットでも、自分のライフスタイルにとってはそうならないのなら、とても自分向きな物件と評価するでしょう。
駅が遠い物件でも、部屋が広くて設備が充実していれば、在宅勤務の人にとってはベストな物件になります。
落とし穴がないか
先程例示した、安価で性能が良くてサポートが充実している一流メーカー品のパソコンは実は売ってなくはありません。
ただし、実はOSのサポートが切れているとか、不要な有料サブスクサービスの加入が条件だったり、むしろ、落とし穴があります。
当たり前ですが顧客は住まいでハズレを引くことを嫌がります。
棟内に問題入居者がいたり、めちゃめちゃ結露しやすかったり、よくわからない名目で毎月料金を徴収されたり、
一見すると良さそうな物件ほど、実は落とし穴があるのではと警戒するものです。
特に昔の不動産会社は物件の悪いところをあえて外して写真を撮ったり、顧客に気付かないよう小細工したりするところもあり、その悪いイメージはいまだに引きずっています。
詳細な情報を提供して、落とし穴が存在する余地を極力減らすことと、都合の良い情報だけを提供するのではなく正直さがほとばしるトーンで物件情報を伝えることが肝要です(そのためには本心から正直である必要があります)
第三者によるクチコミ
落とし穴とも関連しますが、近年はサービス提供側でいくらお得さや質が高いことを謳っても、顧客はそのまま受け取らなくなりました。
顧客は当事者ではない第三者の評価を参考にしたいと考えます。要はクチコミです。
賃貸物件においても実際に物件を利用した人が「安心して住めた」とクチコミをすれば多くの顧客の警戒を解いたり、背中を押したりするでしょう。
しかし、不動産物件に限っては現時点でそれを知る機会はほとんどありません。
一般商品のクチコミはネットに溢れていますが、クチコミはある程度以上のサンプル数がなければまともなクチコミとして機能しません。それなりのサンプル数を確保するにはその商品の利用者が何千、何万といなければなりません。
対してその賃貸物件に実際に住んだ人自体が数人とか多くて数十人です。仮に全員にクチコミしてもらったところでたかが知れています。
顧客からニーズはあってもクチコミを賃貸物件決定の参考にするのは難しいでしょう。それ故なおさらにそれ以外の情報の充実が求められます。
明確な料金
物件にもよりますが、契約時や月々の費用の計算が難しいものが多々あります。
私のようなプロの不動産業者ですら理解できないものもあるので、一般の方は無理でしょう。
そして、計算ができたとしても、その料金を支払うことに納得感があるかはまた別です。
「契約時に除菌費用が2.2万円で、消臭費用がそれと別に1.65万円」と言われて、
「お得で嬉しい!」と思う人は誰一人いないでしょう。
誰も心から望むことのないサービスを、抱き合わせで売り付ける商法は、顧客に不満をくすぶらせ、いずれ回り回って不動産会社やオーナーの首を絞めることでしょう。
弊社での物件情報
顧客ニーズに対し、どのように応えるか?
手前ミソではありますが、弊社の取り組みをご紹介したいと思います。
こんな感じで情報提供しています。
【掲載例】一棟情報
【掲載例】各部屋情報
ブログ記事

物件情報はブログ記事形式で作成しています。
自由度が高いのと、ある程度テンプレートを作ってしまえばばそれを使い回せるからです。
物件のコンセプトや立地については一棟情報に、
物件の料金や詳細情報は各部屋に記載するようにしています。
記事のリンクはFacebookやXといった大手SNSにも掲載します。
動画
不動産情報は時代とともに比重がテキストから画像に移ってきましたが、次は動画ではないでしょうか。30枚の写真よりも30秒の動画の方が絶対的にわかりやすいです。
私はスマートフォンで撮影し、無料のCANVAで少し編集する程度で、はっきり言って大した動画ではありませんが、物件を本気で検討する人にとっては役に立つコンテンツのはずです。
寸法

間取図には寸法も入れています。建物の設計図面には寸法が入っていますが、それだと壁の中心線で測っているので壁厚数センチの誤差が生じ、最悪、家具が入らないということも起こりえます。
寸法は物件を借りるかどうかを検討している顧客にとって必要な情報というより、借りる契約をしたが、家具を配置するのに知りたい情報です。契約後、引き渡し前に、採寸のためにもう一度部屋を見たいというリクエストが結構ありますが、不動産会社も含めてみんなで立ち会ってとなると大変なので、予め測って載せておきます。
家具の配置イメージ

どこにどう家具を配置しようが顧客の自由ですが、
冷蔵庫や洗濯機の置き場は決まっており、実はその場所がめちゃめちゃ使いにくいことがあります。
下駄箱と思って開けてみたら洗濯機があったり、冷蔵庫の置く場所がキッチンから遠かったり、最悪なのはそれに入居してから気付くことです。それこそ落とし穴です。
そんな残念な思いをさせないよう、配置イメージも載せるようにしています。
料金

もちろん料金も掲載しています。
課題
とはいえ、弊社の情報提供が壁を打ち破れているという訳ではありません。
依然として、これらの情報をどのように顧客に届けるかが課題です。
ポータルサイトにリンクを貼ることはできません。ポータルサイトはそりゃアクセスを独占したいですし、運営しているのは大企業なので。
これらの情報にアクセスするのは、ポータルサイトから弊社に問い合わせたり、もしくは物件名をネットで検索した場合で、その時点でかなり限定的となります。
理想は、ポータルサイトで辿り着かなかった顧客の一部にも情報を届けることです。
ポータルサイトでの検索は一般の方には案外むずかしいもので、ある程度コツを掴まないと、あまりにも大量の物件が表示されたり、逆にほとんど物件が出てこなかったりします。ポータルサイトで物件に辿り着かなくても、物件にマッチしている人は世の中にいるはずです。
それならYoutubeや大手SNSはそれ自体に大きなアクセスがあるので、物件を知る切っ掛けがポータルサイトではなく、そっち経由ということも可能性はあります。
ただし、現実的には期待できないでしょう。偶然にYoutubeでいい物件に出くわすとか、ポータルサイトではなくSNSで物件を検索するというのはまずないことです。
弊社に限らず様々な不動産会社がポータルサイト以外で物件情報を伝えようと様々な取り組みをしていますが、顧客への情報導線が確立していないので、なかなか効果を実感できてはいないと思います。
弊社の情報提供であれば特殊な機材は不要で、特にお金の掛かるサービスの契約も必要ありませんが、労力が掛かることは確かです。弊社なら私がやればいいですが、普通の不動産会社だと人件費の掛かっているスタッフには収益を上げてもらわないとなりません。効果を実感できない業務を継続するのは難しいでしょう。
まとめ
今は顧客への情報導線が確立していませんが、とはいえ、顧客ニーズがあるならいつかつながる可能性もあるでしょう。
特にAIが世の中に浸透していけば、顧客はポータルサイトでは検索せずに、AIに尋ねるかもしれません。
そうなると、AIが拾い上げる情報ソースにはポータルサイトの情報も含まれるでしょうが、それ以外のネット情報もあるでしょう。
その際、ポータルサイトの表面的な情報に対して、充実した情報を提供している物件はアドバンテージを持つはずです。
それと、例えば大手賃貸仲介会社の店舗には多くのスタッフがいて、彼らは顧客来店時の応対がコア業務ですが、今後、多くの顧客はよりネットの情報に比重を置き、不動産会社への来店は減るのだと思います。
となると、そのスタッフに客待ちで店舗に待機させるよりも、ネット情報を充実させる業務をさせた方が生産的と考えられなくもありません。
というか、不動産の営業職は人気職種ではないので、人手不足の中で営業マンを募集するより、アルバイトや外注スタッフに現地調査を依頼し、顧客対応は来店よりもネットにした方がいいと判断する会社がいずれ増えてくると思います。
そんな将来の不動産業界の在り方を見据え、今から物件情報の充実を図ってはいかがでしょうか。
shiro-shita
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