買い手の交渉戦略を無力化するほどの売り手の強気はどこから来るか?
前回は不動産購入交渉のポイントについて記載しましたが、
【前回の記事】不動産購入時における交渉のポイントとは? 不動産の買い手の最適化戦略②
実際にはいくら戦略的に交渉しようが、いくら交渉力が買い手有利だとしても、売り手が頑なに譲歩しないこということが往々にしてあります。
なぜ売り手は折れないのでしょうか?
売り手の状況やマインドについて記載します。
売り手が折れないワケ
不動産を売却することは多くの人にとっては日常ごとではないので売り手は状況を客観的に捉えるのが難しくなります。
不動産会社に持ち上げられる
不動産会社にとって売り手は重要なお客様であり、各社競って売り手の獲得を目指し広告宣伝営業活動を行なっています。
売り手からの売却相談はそんな営業の成果となりますが、通常、売り手は複数の不動産会社に価格査定の相見積もりを取っているもので、不動産会社は競合他社を意識して査定額を高めに出さざるを得ません。
不動産会社の査定額は適切な市場価格に営業上のアピールが上乗せされているのです。
もちろん、売り手に対してそうとは言わないので、売り手はその価格を相場価格と誤認するのです。
メンタルがタフな世代が多い
統計データがある訳ではありませんが不動産の売り手と買い手では売り手の平均年齢の方が高いと思われます。
高齢者であることも多く、そういった世代だと、
戦後の貧困をもったいない精神でモノを捨てずに使い続け、
高度経済成長期には地価が右肩上がりとなり、平成バブルで付けた最高値がいまだに頭から離れない、
交渉ポリシーは合理性や相手の心情を慮ってというより、諦めずに強気で押しまくる。
そんな方の割合が他の世代より多いです。
価格についての考え方が違う
買い手が物件の価格を算出するとしたら、
類似した物件と比較して求める、もしくはその不動産を購入することで得られる価値を数値化し逆算して求める(収益物件なら利回りをもとに価格を算出する)のいずれかになると思いますが、
多くの売り手はその物件の取得価格にこれまで掛かった費用を加算して求めがちです。
また、買い手にとって不動産購入は新規プロジェクトに取り組むことなので、多少のリスクや予想外の出費を織込まなければなりません。
逆に売り手は物件を良く知ることもあり物件にリスクがあると微塵も考えないものです。
その差も価格の乖離の一因となります。
保有効果
人は現在保有している物については価値を高く感じる傾向があり、このことを保有効果と言います。
保有効果は下記を理由に生じると言われています。
住まいであれば、一般的には不便な環境であったとしても、それを全く苦にしないほど順応しているということも多く、保有効果がより働きやすいように感じます。
感情的反発
保有効果は物件に価値があると思わせるだけではなく、現状維持すなわち物件売却を押し留めようと作用することもあります。
不動産売却にはどうしても、負け組、斜陽といった悪いイメージが付きまとい、頭では不動産を売るべきと考えていても感情は後ろ向きで売却の手順を踏むことに躊躇いが生じがちです。
そんな中で、買い手から厳しい条件を突きつけられると強い拒否感につながります。
なので、買い手としてはそういった売り手の心情に配慮して傷付きにくい表現を用いたり、売り手の人柄や物件については盛り気味に評価することをおすすめします。
特に買い手の心情を無視してタフで強気な交渉態度の売り手に対してはそういった配慮が重要です。
強気な人ほど内心は寂しいものです。
こちらの心情に配慮しない売り手の心情を慮るのには抵抗があるとは思いますがそれもテクニックのうちです。
不動産売買とはこんなゲームである
もちろん、すべての売り手がこのような状況という訳ではありませんが、買い手からしたら迷惑な話です。
ただし、不動産業界の構造的な問題、ひいては社会構造の問題だったり、人間の潜在意識にかかわる問題なので、
よっぽど不人気物件だったり、よっぽどの不景気で買い手有利な状況にならない限りは不動産売買にこういった不条理は付きまといます。
このような不条理に納得できず、買い手の正論を受け入れてくれる売り手や仲介者を探し続けるというのも一つだとは思いますが、
不動産売買とはこういったルールのゲームであり、そのルールにおける最適化戦略を構築する方がよっぽどゴールに近いように思えます。
この記事はそういった考えをする人に少しでも参考になれば幸いです。
shiro-shita
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