モノは借りずに買って売るのが合理的か
※本記事では転売ヤーを推奨しているわけではありません
転売ヤーへの規制は必要か?むしろ自由な市場に委ねるべき
転売ってコトバには悪いイメージが付きまといます。
転売ヤーが人気商品を買い占め、本当に商品を必要とするファン達は高値づかみを余儀なくされていたり、
不動産転売業者が無知な売主からあの手この手で不当な安値で買い取っていたり、
社会問題化により規制を求める人々もいます。
しかし、転売の規制は自由な経済行為を規制するということであり、実際に日本では大手メーカーが小売店に定価販売を強要したり、はたまた中古販売店を訴えたりと、自由な経済行為が歪められる事態が度々起こっており、そっちの方が問題です。
また、スーパーマーケットに陳列されている商品は基本、転売品で、そもそも転売は商売の基本的手法の一つです。すべての転売が規制されたら私たちの日常は成り立ちません。
転売は購入したものを箱もあけずそのまま高値で販売するイメージですが、購入して使ってみたものの気に入らずすぐに売るのはもちろん、しばらく使った後に売るのももちろん転売です。買った価格より高いかどうかは関係ありません。
転売の規制にはデメリットがありますし、限界があり、現実的に不可能です。
にわか転売ヤーが急増しメルカリやヤフオクをジャックしている状況をみるといびつには見えますが、それは2000年頃からはじまったインターネット情報革命がついに転売を民主化させるに至ったということであり、今は転売ヤーバブルですが今後より戻しがきて、結果、市場はより成熟するでしょう。
その成熟した市場では人々はもっとライトな転売を行うのではないかと予想します。
ヘビー → ライト
これまでの転売はヘビーでした。
特に不動産の転売は競売屋とか三為業者といった一部のプロがキャピタルゲイン狙いで行うアービトラージ取引であり、占有屋やサービサーといった曲者と交渉し、シロアリや雨漏れ、心理的瑕疵といったリスクを一切保険なく買い取らなければならず(取引条件にもよりますが)、そんな危ない橋を渡っていればたまにババを掴むので、その分というか一件一件の利益は厚めです。
まさにプロによるハイリスク&ハイリターンなビジネスでした。
また、転売屋の買い取り以外で一般の人が自宅を売る場合も、希望価格でのスムーズな売却をあまり期待できませんでした。それは、これまでは買主にとって日本の住宅は新築偏重で中古はイメージが悪く、ブラックボックスでした。というのは、売主が住んでいながらの販売だとろくに室内の確認できず、購入後も保証が一切付きません。なので買主にとって余程でなければネガティブな価格提示になります。そもそも、木造建物は築20年で新築時のたった10%の価格になるという査定方法をほとんどの不動産会社で採用していたので査定価格自体が安いということもありました。
(もちろんそれでも強気な売主はいくらでもいましたが)
それが中古住宅の流通量を上げるために国土交通省が行った取り組みもあり状況は改善しつつあります。住宅のコンディションを測るインスペクションが一般化され、不具合についての保険をかけられれば、中古住宅がブラックボックスではなくなります。
また、世の中の自宅を売却することの忌避感はなくなり、早ければ売ると決めたその日に不動産ポータルサイトに詳細な情報が掲載されます。
不要になったら気軽に大きな損失なく売却ができるライトな転売が可能な市場ができつつあるのです。
買い叩きづらくなったので不動産転売業者にとって決していいことではありませんが、状況が時代ごと変化していくのは当然であり、すでに多くの転売業者は「割安な物件を見つける」から「独自の付加価値を付ける」に目線を変えています。
(不動産市場にも転売ヤーが流れてきて投機的な売買が盛んですが、調整局面を迎えつつあると思います)
ライトな転売の成立要件
このようなライトな転売は特に家電商品なんかでは特に顕著です。
私自身、毎年のようにスマホ、PCを買い替えていますが、なるべく新しめの上位機種を選ぶようにしています。翌年に売るときはもちろん使用した期間相応の減価にはなりますがそれでもそれなりの価格を維持しています。
購入価格から売却価格を引いた差額が1年間の使用料となりますが、差額で考えると上位機種も中位も下位もそんなに差がなかったりします。それなら上位機種にした方が1年間快適に使用できます。
そのようなライトな転売が成立するために以下の前提が必要です。
・購入者と直接売買する環境があり、利用のマージンが低い
・商品に汎用性がある
・商品が成熟している
直接売買する環境とは要はメルカリのようなガリバーフリマサイトを利用できるかと言うことです。中古買取ショップだと彼らの利益があるので買い叩かれます。休日に市民公園で開かれるリアルフリマには近所の人しかきません。
汎用性というか、それなりのロットで生産され型番で検索掛けるとスペックがわかる商品は、中古で買いやすく、相場も形成されるのでより売買しやすくなります。
10年前はスマホが日進月歩だったので1年も経てばスペック的に大きく見劣りし中古はゴミでしたが、近年はさしたるイノベーションがなく、逆に言えば商品寿命が長期化しています。
そのような前提が成立しているのであれば古いものを使い続けるよりもライトな転売を繰り返す方が合理的です。
一生モノと思うと購入条件が厳しくなり、結果、いつまでも買えず不便なものを使い続けなければなりません。また、購入して長期使用すると売価が下がり差額(使用料)が拡大します。さらに、新製品購入後に旧製品を持ち続けると、場所を取り、日々売価が下がり、いずれは値が付かないどころか処分料を請求されます。
相性の悪いカテゴリー
ただし、ライトな転売が合理的なのは前提が成立しているときのみです。
先日デスクトップゲーミングPCを売却しました。2019年にカスタムオーダーで購入しそれをさらにカスタムしたものでトータルで25万円くらいでしたが、カスタム性が強すぎて中古市場で謎な商品になり、でかくて重いためメルカリでの売却を鼻からあきらめて買取店に行ったため売価はたった3万5000円でした。
仮にメルカリで売っても手取り(売価-10%マージンー送料)は倍にならなかったでしょう。カスタム品で汎用性が低く、PC市場はそれなりに成熟していますが、さすがに4年前のゲーミングPCとなると微妙ですし、でかいので梱包が大変で送料割高です。
不動産は内外装や設備機器の進化は成熟しきっているので前提を満たしていそうですが、登記費用や不動産取得税に引越し費用といった入替費用がかさむので転売が合理的とまでは言えません。やるなら好立地の有名デベロッパーのマンションでしょう。
一部のブランド品を除いた家具や衣服も転売向きではありません。家具は送料が高く、衣服は一度着ると減価が大きいです。
ただし、そのような転売不向きな商品カテゴリーは購入のリスクが高いのでそもそも新品価格が高騰しにくいです。
また、ライトな転売の成立要件を満たしていても使い潰すつもりで型遅れを底値で買うのは相変わらず合理的となりうる選択です。新型であれば1年後にそれなりの価格が維持する可能性は高いですが確実ではありません。特に私のような無類のガジェット好きでなければそんなこと考えることがそもそも面倒くさいでしょう。
市場のさらなる変化
ライトな転売だと、買値と売値の差額が使用料となり、購入でありながら感覚としてはレンタルに近くなります。特にローンで毎月返済となればレンタルとの境はほぼなくなります。
ライトな転売がより浸透していけば、ついに持ち家と賃貸のどちらがいいかといった無意味な論争にも終止符がうたれるかもしれません。
持ち家か賃貸かということより、ド田舎に注文住宅を大々的に建設したり、新築からずっと同じ家賃で賃貸に住み続ける方がリテラシーとしては危機的です。
なお、フリマアプリ全盛で買い取りビジネス(ヘビー転売)はダメかというとそんなことありません。前述したように付加価値をつけることに切り替えていくということもありますが、フリマアプリとの住み分けがされ生き残っていくでしょう。というか、セカンドストリートを展開するゲオは生き残っていくどころか好調です。
我々日本人はこれまで物を大事にするよう言われ続け、物を手放すことに抵抗がありましたが、ここにきてその呪縛から解放されました。衣服、家電、思い出の品から不動産まで夥しい不要物を処分しなければなりません。
むしろ、買い取りビジネスにとって莫大なビジネスチャンスの到来でしょう。
shiro-shita
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