相続対策の第一歩が踏み出せないワケ

不動産知識・テクニック

進まない相続対策に様々なギャップあり ​ 相続対策の第一歩が踏み出せないワケ

誰しもがいずれは何らかのかたちで当事者になる相続。

相続で莫大な資産を引き継ぐこともあれば、兄弟間で遺産相続を巡り骨肉の争いをしたり、もしくは知らぬ間に親の保証債務を引き継いだりと、相続は人生の一大イベントであると言っていいでしょう。

後悔しないようしっかりと備えたいものです。

しかし、相続対策というと、どこかネガティブでやる気が起こらないものです。

なぜでしょうか?

相続は人が死んだときに起こるものなので死について大っぴらに語ることを忌み嫌うということはありますが、それ以外にも相続対策をしようとする人が感じるギャップがあるように思えます。

相続対策が進まない理由① 相続対策=相続税節税対策となっているギャップ

相続対策という言葉はもちろん昔からある訳ですが、近年が相続対策のピークだったと思います。

平成27年の相続税法改正で基礎控除額が下がり相続税納税予備軍が増えたことで、アパートメーカーに税理士と銀行、それにつるむ不動産会社や司法書士がこぞって「相続対策」で集客しようと躍起です。

それらは主に資産家層を囲い込んでアパート建設を受注するのが最大の目的です。

アパートメーカーは工事を受注し、不動産会社はアパートメーカーからの紹介料とアパート竣工後の管理、司法書士はアパートの保存登記と将来の相続登記、銀行はローンを実行し、税理士は毎年の税務申告を代行します。

おだづもっこで利益山分けとなります。

ただ、儲かるからと営業に力が入ると、顧客への迷惑営業も増えます。

「相続対策セミナー=相続税軽減対策=アパート建設営業」

とすでに見透かされ、

相続対策というと売り上げ至上主義の業者が群がってくるイメージがあります。

カモにはされたくないので、自分の中で方針がはっきりするまでは相談すべきではないと思われています。

相続対策が進まない理由② ジェネレーションギャップ

さらに相続対策では世代間の意識差がしばしば足枷となります。

相続を受ける子はいつか必ず起こる相続に気が気でないのに、

当人は自分が死んだ後のことっていうのはありますが、

毎年除草に何万円も掛かるような原野や、増築を重ねゴミの要塞になった自宅、老人ばかりが入居している限界アパートも一向に気になる様子がなかったりします。

見かねて整理を手伝ってあげようとしても、

いざ何かを捨てようとすると「もったいない」の一点張りで埒があきません。

子の本心としてはどうせ相続税を取られるのであれば、生前に親のお金で処分業者を手配して、境界確定協議を一括発注したいのですが、ゴミ一つ捨てるのすら賛成しない親に、どうやって最低でも50万円は掛かる境界確定協議の必要性を理解させることができるでしょうか。

良かれと思って提案したことを散々拒否された挙句に、財産目当てと不審な目で親や兄弟から見られたのであれば全く浮かばれません。

相続対策が進まない理由3 一番しなければならない資産の把握・適正化が実は難しいギャップ

相続対策というと相続税節税対策ばかりがクローズアップされますが、本来の相続対策は、

  • 資産の把握・適正化
  • 分割(争続)対策
  • 節税対策
  • 納税対策
  •  
    からなるものです。

    このうち節税対策と納税対策が必要なのは限られた少数の方ですが、資産の把握・適正化は基本すべての人に関わることです。

    まず第一に資産の把握・適正化をしなければなりません。

    その資産の把握・適正化を具体的にいうと、

    保有資産の把握

    最初に保有資産を網羅する必要があります。未登記のものもあるかもしれませんし、登記や固定資産税台帳の情報と現況が違うものもあるかもしれません。被相続人予定者の親の財産の相続登記が未了だったりすることもあります。

    隣地境界の明確化

    できれば境界確定協議を行うことが望ましいです。物納する上では必須になります。

    越境の除去もしくは覚書の締結

    塀の基礎や軒が隣地にはみ出している、またははみ出しを受けていることはよくあります。是正するか、将来建て替えるときには是正する旨の書面を交わしておきましょう。

    付随する権利の把握(抵当権、地上権、水利権等)

    完済したローンの抵当権を抹消し忘れていたり、実は地役権が付いていたりってことがよくあります。

    権利の適正化(契約書の具備、アップデート)

    貸している不動産の賃貸借契約書がなかったり、あっても契約締結から長時間経つと賃料が変わっていたり、保証人がすでに亡くなっていたりします。

    相続税評価額の把握

    相続税評価額は一度計算しても時間の経過で変動していきますので定期的に再計算が必要です。

    市場価格の把握と売却の可否

    通常は市場価格は相続税評価より高くなりますが、実は実際の価値はそんなにないものや、現実的に買い手がつかないと思われるものもあります。買い手がつかないものは売却して納税資金に充てることはできなくなります。

    分割対策、節税対策、納税対策の必要性の確認

    以上のことを行ってやっと他の相続対策の指針を出すことができます。もちろん相続放棄をした方がいい場合もあります。

    それって超面倒くさいから相続が進まない

    これらはとても地味な作業ですが、作業自体にかなりの知識、手間を要し、一般の方ではなかなかやり切れないものです。かといって誰かに金銭を払ってまでやってもらう作業とまでは認識されてなく、それを請け負うと謳う業者はほとんどいません。

    その先にアパート建設が見えているのであれば、ある程度はおまけでやってくれるでしょうが、現実にはアパート建設する必要がある人の方が少数派なのです。

    面倒で難しい割にほとんど誰も真剣に取り合ってくれません。

    それこそが相続がネガティブに感じられる最大の要因なのでしょう。

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    shiro-shita

    仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

    不動産業界の雇用・労働環境は不毛だが、日本の企業全体が不毛な環境に陥りつつあるって話不動産業界の雇用・労働環境は不毛だが、日本の企業全体が不毛な環境に陥りつつあるって話前のページ

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