不動産売却のチェックポイント1 権利証・登記識別情報通知 ​

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不動産売却のチェックポイント1 権利証・登記識別情報通知 ​

「不動産を売る。」

一般的なライフスタイルの人であれば、頻繁に不動産の売却を経験することはないので、細かいとこまで自分でわざわざ確認しないで不動産会社に一任した方が合理的と思うかもしれません。

 
しかし、不動産売却は頻繁に経験しない分、人生の中でも重要なイベントであり、一歩間違うと取り返しのつかないことにもなりかねません。

それに、プロの不動産会社といっても、現実的には玉石混交であり、顧客の利益よりも自社の利益を優先する会社は多いです。

 
 
不動産会社の仕事をチェックしたり、よりスムーズに不動産会社と話ができるよう、売主自身が売却について知識があるに越したことはありません。

今回から何回かに渡り不動産売却のチェックポイントについて記載していきますので参考にしていただければと思います。

不動産売却のチェックポイント1 権利証・登記識別情報通知

権利証は不動産売却の絶対的必要書類ではない

不動産の最重要書類と言えば権利証(登記済権利証)を思い浮かべる人が多いでしょう。

権利証は今は登記識別情報通知というものに置き換えられていますが、昔のまんま売買も相続も何も登記していない不動産はかつての権利証が今でも現役です。

 
権利証というと火事になっても火の中入って持ち出すくらいの重要書類に捉えている人もいますが、

これがないと不動産の所有者ではなくなるとか、不動産を売ったり、抵当権設定できなくなるということはありません。

権利証が紛失しても日常的な利用で困ることはありませんし、売却も抵当権設定も可能です。

 
権利証がない状態で売却等を行う場合は次の3つの方法があります。

(1)法務局による事前通知

法務局が本人宛に郵便を出し、それに実印を押して返送することで確認をします。

費用は無料です。

ただし、事前といっても法務局に登記申請してから郵便が発送され、それを期間内に返送しないといけないので、代金渡したものの登記できなかったということが起こりかねず、取引の安全性が担保されないことから、通常の取引ではあまり利用しません。

いくら売主が期間内に返送するから大丈夫と言っても、仲介する不動産会社や登記申請する司法書士に反対されます。親族間売買といった特殊な取引のみで利用される制度とお考えいただければと思います。

(2)公証人役場での本人証明

売却等する前に公証人役場に本人が行って公証人の面前で認証書類を作成し、それを登記申請時に権利証の代わりに法務局に提出します。

費用は1万円も掛からず、取引の安全性も担保されますが、

公証人役場を予約して、本人がそこに行ってと面倒なのであまり利用されません。

(3)司法書士による本人確認情報作成

売却による所有権移転登記や抵当権設定登記を代理する司法書士が、登記申請前に所有者本人と面談、聞き取りして本人確認情報を作成し、それを法務局に提出します。

費用は司法書士により3万〜10万円掛かるのと、本人が司法書士と面談する必要がありますが、

権利証を持っていても司法書士とは基本的には面談する必要があり、実質的には手間なしで確実な方法なので、通常の取引では主にこの方法を利用します。

登記識別情報通知って?

平成17年頃から法務局は権利証に代わって登記識別情報通知を交付するようになりました。A4ペライチの緑色の紙で、下部にシールが貼ってあり、めくると12桁の番号が記載されています。

この番号を知っている人が所有者であり、書類自体に効力はないということになっていますが、

実際は権利証と同じように大切に保管してください。

 
そして、書類自体に効力はなく、番号を知っている人が所有者とはいえ、番号を確認するためにシールを剥がすのはNGです。

一回剥がすとくっつかなくなる(もちろん糊を付ければくっつきますが、剥がれなくなる)だけではなく、

シールが剥がれた登記識別情報通知だと、それを提示された司法書士は番号が第三者に漏洩している可能性があると、二重三重に確認しないといけなくなります。

登記識別情報通知はもらったまんまの状態で保存するのが一番です。
 

ちなみに登記識別情報通知が紛失した場合、発見者の悪用を避けるために法務局に「登記識別情報の失効申出」はできますが、再発行はできません。

紛失した状態で売却等を行う場合は、権利証を紛失した場合と同じ方法になります。

つまり、所有者にとっては登記識別情報は昔の権利証と何も変わらず、特にスマートだったり、セキュリティ対策万全なものではなく、中途半端な役所仕事の産物です。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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