ブームが去ったシェアハウスはオワコン?それとも今が狙い目?
不動産投資の一形態にシェアハウスがあります。
シェアハウスは入居者ごとに個室はあっても、玄関やリビングにキッチン、風呂トイレは複数人でシェアする賃貸物件です。
普通のアパート・マンションの賃貸にくらべ関係者それぞれに下記のようなメリットがあります。
- 入居者:独立型(普通のアパート・マンション)より料金が安い
- オーナー:一組の家族等に一括貸しするより、複数の入居者に分割貸しする方がトータル収入が増える
- 社会:シェアメイトにより孤立を防げる
一見するといいことづくめのようですが、
仙台圏において、近年は新たなシェアハウスの開業をあまり聞かないというか、市場自体が伸び悩んでいます。
なぜでしょう?
このまま盛り下がっていくのか、それとも復権はありえるのか、私なりに分析してみたいと思います。
シェアハウスの隆盛と没落
2010年代シェアハウスブーム
住まいの設備を複数人でシェアするスタイルは昔からあり、下宿や共同便所に共同井戸と、日本人の庶民の歴史はむしろシェアが当たり前でしたが、いわゆる今どきのシェアハウスは下宿が時代とともに少しずつアップデートをした結果というより、2012年放送開始した「テラスハウス」の大ヒットによります。
首都圏ではドラマさながらのおしゃれなシェアハウスが次々にオープンし、通常の賃貸よりも賃料が高い物件がたくさんありました。
不動産業界では他業界よりも首都圏と地方の格差が大きく、首都圏の流行が地方には波及しなかったり、来ても鳴かず飛ばずで短命に終わるということはよくありますが、シェアハウスは仙台圏でも隆盛を誇りました。
といっても首都圏のような高付加価値物件の新築をするのではなく、安く買った築古物件をシェアハウスにして高利回り化したり、普通の賃貸物件を借りて複数人に転貸して差益を得るようなスキームで、低額ではじめられるビジネスのため多くの人が参入しました。
ブームの終焉
しかし、2018年にかぼちゃの馬車事件が発生します。
入居者のいないシェアハウスを高額で売りつけていた会社が計画倒産したのです。しかも、物件購入資金を融資していたスルガ銀行もグルという。
これにより過熱していた市場は一気に冷え込みます。
当時、問題の会社以外にも新築建売シェアハウスは不動産投資商品として多くあり、賃料も稼働率も強気に設定されていましたが、それらはすべてが割り引いて見られるどころか同じ穴の狢として扱われ、
金融機関はよっぽどじゃない限りはシェアハウスの新規融資にネガティブというか、スルガ銀行がシェアハウス以外のアパート・マンション融資でも不正を行っていたことで不動産融資全般にストップが掛かります。
また、同年には民泊新法が施行されます。適切な民泊運営のための法律ではありますが、実質的には民泊を規制するもので、これを機に多くの民泊オーナーが事業から撤退を余儀なくされます。シェアハウスと民泊は流行った時期もビジネスモデルも近似していたのでシェアハウスと民泊のどちらも手掛けるオーナーが多くいました。
さらに悪いことは続き、2020年にはテラスハウスの出演者がSNSでの誹謗中傷により自死し、それを理由にテラスハウスは放送打ち切りとなります。
シェアハウスブームの立役者だったテラスハウスが最悪の終焉を迎えたことで、テラハ的なライフスタイルは憧れから一転してタブーになります。
2024年現在もこれらスキャンダルの余波は続いているというか、山が高ければ谷も深い的に低迷している感はあります。
しかし、スキャンダルの影響によってのみ辛酸をなめているのであれば、これらのスキャンダルはシェアハウスを舞台にして起こっただけで、シェアハウス自体を否定するものではなく、シェアハウスに社会的必要性があれば、いずれは復権すると考えられます。
今が底でこれから回復基調に転じるか、
それともまだしばらく浮上の兆しはないのか、
より具体的に検証する必要があります。
仙台のシェアハウスの概況
仙台のシェアハウスをネットで検索し、そこから情報が全然更新されてないようなものを除くと、今も積極的に運営しているのは15件くらいのようです。
それらはをざっと見ると2020年以降の開業を謳っているものはないので、多分ですがブーム期に開業したのだと思います。
つまりはこれらが仙台におけるサバイバーということになります。
運営者をみてみると、大手会社が全国ネットワークでやっているようなものはありません。また、ブーム期にあった賃貸物件を転貸していると思わしきものもありません。運営者は地元企業や個人で、個人でありながらも物件を所有して運営しているようです。
私はブーム期に、シェアハウス用地を全国で探している企業や、シェアハウス転貸可能物件の問い合わせを個人から受けましたが、それらは結局着手しなかったか、着手しても撤退したということになります。
サバイバーは地元の中小法人の割合が高いですが、ビルや戸建を一棟買いしてリノベーションしたり、新築で建てたりしています。ある会社は都心部立地でビジネスマンをメインターゲットに、またある会社は少し住宅地よりでテラハ色を出していたり、さらに別の会社は学生寮的なノリを出しています。
個人の物件は手作り感が前面に出ていて、かえってその雰囲気がシェアハウスのカルチャーにフィットするのでしょう。
一見するとどこもそれなりに運営しているように見えますが、
中小法人とはいえ、一棟リノベや新築となれば数千万円~数億の投資が必要です。当然、融資を受けているでしょうから、その返済、また運営に人件費が掛かるので、月間100万円単位の売り上げが必要になるはずです。ある物件でざっと試算してみましたが、7~8割の入居率を保つ必要がありそうです。
個人運営の場合、多分オーナーがポケットマネーではじめ、自らが管理(共用部の清掃や消耗品の補充)を行っているのでしょうから、限りなく損益分岐点は下がります。しかし、それ故に規模の拡大は難しく、オーナーに運営疲れの懸念があります。
シェアハウスは入居者獲得が壁
私には仙台サバイバーの具体的状況はわかりませんが、個人的に課題と感じたのが入居者獲得手段です。
中小法人にしろ個人にしろ当然ながら売り上げの原資は入居者からの賃料となりますが、シェアハウスの場合は普通のアパート・マンションよりも入居期間が短い傾向にあり、反復継続して入居者を獲得していくことがビジネスの大前提となります。
で、その入居者獲得手段が下記となります。
- ポータルサイト
- 不動産会社
- 自社サイト
- 紹介や独自ネットワーク
ポータルサイト
シェアハウスのポータルサイトとしては「ひつじ不動産」が最もメジャーです。
ただし、残念というか当然ながらSUUMOやathomeといった普通のアパート・マンションのポータルサイトにくらべて使い勝手が大きく劣ります。
条件指定で物件を絞り込むにはユーザー登録が必要で、そもそもシェアハウスは光熱費といった課金項目が複雑な物件が多いということもありますが、物件ごとの情報比較が困難で、掲載されている物件写真が画一的なこともあり、特に私のようにathomeに慣れた人だと物件を絞り切る前に脱落してしまいます。
シェアハウス探しのプラットホームとしては弱いです。
不動産会社
残念ながら現時点で不動産会社はシェアハウスの入居の窓口としてあまり機能していません。
普通のアパマンの窓口として不動産会社が機能しているのは、不動産会社の継続的取り組みによる蓄積とポータルサイトがあるからで、シェアハウスについてはそれらがありません。
不動産会社がシェアハウスの入居に力を入れ続ければいずれは窓口機能を担えるのでしょうが、実は不動産会社とシェアハウスは相性がイマイチです。
シェアハウスのメリットに、入居までの期間の短さ、初期費用の安さがありますが、不動産会社が間に入ることで重要事項説明の作成・説明が義務化され、また、入居者には仲介手数料の負担が発生します。
不動産会社の手数料は入居者ではなくオーナーが払う方法もありますが、短期入居が多いシェアハウスではオーナーも多くは支払えません。
自社サイト
日本全体で言えば成功している自社サイトはあるでしょうが、それはごく一握りです。
また、成功しているサイトにある程度のノウハウはあっても、物件の立地や設立のタイミングにも左右され、再現性があるとまでは言えないのではないでしょうか。たまたまに頼るビジネスを拡大させることはできません。
少なくとも仙台のシェアハウスで自社サイトが高いアクセスを集めてそうなものはありません。
紹介や独自ネットワーク
例えば運営会社が外国人材派遣業もやっていて、そこから入居者を当て込めるのであればシェアハウスの成功は約束されています。
ただし、そういうネットワークを持っている人でないとシェアハウスで成功できないとなると、一般投資家はシェアハウスに手を出せなくなり、市場の拡大は望めません。
どれも現時点では課題があり、現時点ではシェアハウスの入居者獲得に常套手段はありません。
仙台サバイバーの具体的状況がわからない中で断定的なことは言えませんが、入居者獲得手段の模索は続いているのではないでしょうか。
シェアハウスに大手ポータルサイトはできるか?
シェアハウスにとって入居者獲得手段が課題ですが、
それは、ひつじ不動産が大幅にパワーアップしたり、SUUMOやathomeのようなサイトが立ち上がれば解決されます。
果たしてそれは実現されるのでしょうか?
未来のことはわかりませんが、現時点でできていないことからすると望みは薄いと思います。
ポータルサイトのような派生サービスはある程度以上の市場規模があれば自然発生しますが、それがないということは市場が小さいのだと思います。仙台市の賃貸住宅は20万戸以上ですが、仙台のシェアハウス15棟程度にそれぞれ20室あっても300戸程度なので比較になりません。
今後、市場の拡大が予想されればまた別ですが、シェアハウスの場合はブームに踊らされた経緯もあるので、派生サービスローンチの判断は慎重に行われると思います。
シェアハウスにまつわる不都合な壁
市場が小さいことがシェアハウスが伸びない理由となりますが、市場が小さいのは需要がないからでしょうか?
住まいの費用を安くしたいという需要は日本の没落傾向からしてより高まることが予想されますし、共同生活にはセーフティーネットの機能も期待できることから、長期的に見てシェアハウスビジネスには需要があるように個人的には思います。
なら、
シェアハウスは時代を先取りしすぎている?
シェアハウスには別のボトルネックがあるのか?
個人的にはシェアハウスに超大手企業がほとんど参入していないことが気になります。
それはもちろん市場が小さいということが主要因だと思いますが、それ以外のシェアハウス特有の問題も影響しているのではないかと想像します。
例えばシェアハウスにはトラブルが不可避であることです。
様々な人が一つ屋根の下で暮らしていれば気の合う人ばかりではありません。シェアハウスで素敵な仲間と出会う可能性があれば、生理的に受け付けない人と出会う可能性がそれと同等にないと辻褄が合いません。
不快感が憎悪になり、それが他人への中傷・攻撃になったり、さらにエスカレートして事件につながる可能性を否定できません。
実際にはそのようなことは少なく、私自身はシェアハウスでの大事件を見聞きしたことはありませんが、少なくともトラブルの可能性があり、それをヘッジする確実な手段がない以上、超大手としては参入が難しいのではないかと思います。どこぞの個人オーナーであれば、トラブルが起きても当人同士の問題と突っぱね、余程でなければマスコミやSNSも騒ぐことはないでしょうが、超大手だとそうはいきません。
また、シェアハウスでは人種問題にも向き合う必要があります。
番組のテラハでは内気な新人がシェアメイトと過ごすうちに少しずつ馴染んで自分の殻を破っていくという成長ストーリーがあったと思いますが、そのように他人の価値観を受け入れていくというカルチャーがシェアハウスにはあり、シェアハウスは多様性の象徴でもあります。
しかし、ダイバーシティ推進と口ではきれいごとを言いながら、外国人の料理の仕方、ごみの始末、体臭や香辛料に多くの日本人は嫌悪感を示します。
日本では表立った人種差別はありませんが、その一方で在日外国人は公共交通機関で日本人が自分の隣に座ってくれないと嘆いています。大半の日本人は頭では多様性に理解を示しつつも、心からの受け入れにはまだ準備ができていないのです。もしかしたら他人種を受け入れられないというのは種としての宿命なのかもしれません。
シェアハウスでは入居者のボリュームゾーンの一つが家賃を低く抑えたい東南アジア系です。
運営者としては受け入れない方がトラブルはないのかもしれませんが(掃除も楽)、収入的に厳しくなりますし、この時代に彼らを表立って拒否することはできません。特に超大手だと大炎上しかねません。
もしかしたらこのような微妙な問題を理由に超大手が参入しないのかもしれません。
仮にそうだとしたら超大手だけではなく、シェアハウス業界に参入してグロースするといずれこれらの壁に阻まれるということです。
現状の市場は小さく、それが成長したところで天井があるとなると大口投資家にとっては魅力的な投資先ではなく、投資がされなければ市場は滞ります。
たぶんシェアハウスは当面このまま それでも地道にシェアハウスを運営すべき理由
個人的な意見ですが、当面はシェアハウス市場が急拡大することはないと思います。
ブームの反動とスキャンダルの悪影響が続いていますし、ビジネスとしての障壁もあります。
しかし、だからといってシェアハウスビジネスはオワコンかというとそうではありません。
市場全体の急拡大はなくても、個人や中小企業のプレーヤーがそれなりの収益を上げることは十分可能だと思います。
シェアハウスは発展途上で超大手も参入していないので、顧客の潜在需要をキャッチアップされてないエリアは沢山あるでしょうし、人口が減少し空き家問題がクローズアップされる中、シェアハウス開業の候補となる物件は山とあるでしょう。
それにビジネスとしての障壁はあっても、前述したように住まいの費用圧縮、セーフティーネットの観点からも長期的に見ればシェアハウスの需要があると思います。
今から地道にシェアハウスを運営し、シェアハウスビジネスの障壁に向き合いながら試行錯誤すれば、いずれは大きな花が咲き貴方の懐を温めるとともに、社会的課題解決を成し遂げられるかもしれません。
そのためのキーワードは私は「地道」だと思います。
ブーム期はにわかシェアハウスオーナーが雨後の筍状態で、彼らの多くは入居者間のトラブルには無責任で、違法もしくはグレーな増改築は後を絶たず、収支の悪化が起きると投げ出してしまうような人でした。
ブームの反動はそのような無責任運営のツケでもあります。
運営者が長期的に社会的要請に応えていくためには、むしろ最初はグロース・スケールを目指さずに、入居者間のトラブル対応といった属人的ノウハウを蓄積させ、運営者個人が真のシェアハウスホストを目指すべきだと思います。シェアハウスホストとしての実績を積むことで、その評判が入居者獲得にもつながるのではないでしょうか。
なので、企業よりも個人的な商いとしてのスタンス、規模が適当ではないでしょうか。
そんなスモールにやっていては何年経っても埒が明かない、仮に花が咲いてもその頃はもう自分が働けなくなってると思う人もいるかもしれませんが、そもそも社会的要請に応えるためにやっているのであれば、スケールできるほどの金銭的な見返りがなくてもいいはずです。
急がば回れで地道に信用をストックしていくべきなのだと思います。
ちなみにこちらが個人運営のシェアハウスの具体例です。参考までに。
〜仙台浪漫〜
shiro-shita
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