不動産知識・テクニック

【解説】負動産の処分プロセス

負動産は処分が鉄則

前回まで不動産の活用プロセスおよび、方向性を売却または賃貸に定めた場合のそれぞれのプロセスについて記載しました。

前々々回の記事:【解説】不動産活用の検討プロセス
前々回の記事:【解説】不動産売却のプロセス
前回の記事:【解説】不動産賃貸のプロセス

しかし、不動産によっては、売却や賃貸について比較して検討しようにも、売却した場合の価格や賃貸した場合の参考になるデータがいくら探しても見つからない、とか、不動産会社に訪ねても気乗りしない感じで遠回しに断られたりってこともあるかと思います。

 
多分ですが、その不動産は「負動産」なのではないでしょうか。

 
もしあなたが所有している不動産が本当に「負動産」であればなるはや・・・・で処分に向けアクションすべきです。

今回は負動産の処分プロセスについて記載します。

負動産とは

負動産とは下記のような不動産をいいます。

  • 資産価値がない
  • 売却が困難
  • 賃貸も困難
  • 管理費や固定資産税などの税負担がかかり持っているだけでマイナス
  • 

負動産は地方にある古家や山林、農地、空き家、リゾート地の別荘やマンションに多いです。
もしくは、市街地でも、道路に接してなく建物が立たない、擁壁の再建築が必要で再築費用が土地価格を超える、災害レッドゾーンでほぼほぼ建築不可みたいな物件も(駐車場や貸看板等で収益を生まなければ)同様に扱われます。

負動産は資産価値も使いみちもないので一般的経済合理性の観点では買い手や借り手が現れません。よって検索しても売却事例や賃貸事例が見つからないのです。

昨今、負動産は社会問題化してテレビ、マスコミ等でもよく取り上げられています。

空家や所有者不明土地も同様に社会問題化しており、所有者不明土地は日本全体で九州の面積を超えると言われていますが、空家と所有者不明土地は資産価値が低く積極的に関係者が取り扱わないことが主因であり、つまりそれらも負動産問題の一部です。

負動産はそのまま所有していても何もいいことがなく、費用も掛かり、時間が経つほど二次相続等で解決が困難になります。さらに、人口減少しコンパクトシティに舵を切る日本において、市街地が狭まることはあっても広がることはほとんどないでしょうから、負動産はさらに増加し、より重大な社会問題となっていくでしょう。

 
あなたが負動産に関わっていることは特別アンラッキーなことではありません。当事者(負動産を単一もしくは持ち分ですでに所有)、予備軍(親族が当事者で将来的に相続する)を合わせるとものすごい人数となるはずです。

しかし、その割には負動産について危機感を持って具体的に行動している人の割合はまだそこまで多くありません。

早めに動いて自分だけでも助かりましょう。

賃貸はどうなのか

とはいえ、負動産処分の難易度が高いのは事実です。一般的に資産価値がないものなので、特殊な価値観を持った引き受け手にめぐり逢わなければなりません。

多くの方は着手したもののあまりの困難さというか手応えのなさ、なす術のなさに諦めてしまいます。

 
そこで、処分ではなく賃貸という手もあるのではないかと思ったりします。

別に儲けるためではないので賃料は固定資産税払える程度でいいし、それで住んでる人が管理してくれれば安心だし…

 
確かにそれも一つの手ではありますが、

賃料をほとんど取っていなくても所有者としての責任はあり、災害や事件等があれば対処しなければなりませんし、

賃貸なのでいつかは戻ってきて、その時期はあなたが子孫に相続で引き継いだ後かもしれません。

さらに言えば、ただ同然だから借りる人は案外トラブルになりやすいものです。私の知っているケースでは月額数千円で貸したら、借り手が主催している団体の協賛金を毎月賃料と同額払わされた上に、毎年植栽管理費用として数十万円請求されている人がいます。

 
賃貸にするならしっかりとした商品にしてしっかりと賃料を取り、収益が上がる資産にすべきです。

そこまでの覚悟なくとりあえずグダグダ賃貸だと単なる問題の先送りか、もしくはトラブルの元です。

 
基本、負動産は処分です。

まずは売却を試みる

ここから具体的な負動産処分のプロセスとなります。

まずは販売してみましょう。

負動産には一般的な価値基準からすると資産価値はありませんが、世の中には一般的な価値基準の人だけではありません。人々の価値観や趣味嗜好は多様なので、もしかしたら物件に価値を感じたり、使いみちのある人がいるかもしれません。先ほど人口減少、コンパクトシティと申し上げましたが、逆に山籠もりやキャンプ、二拠点生活等と非市街地にも一定のニーズがあります。そういった価値観の人に刺さらないか試みるのです。

不動産会社

まずは不動産会社に販売を依頼します。

【不動産会社のメリット】
・売価が最も高くなりやすい
・取引の安全性が高い

【不動産会社のデメリット】
・仲介手数料が掛かる
・取引成立の可能性が低いと判断されると扱ってくれなかったり放置される

負動産なのでそもそも売れたらラッキーです。
仲介手数料が掛かるといっても売れた金額の中から出せばいいのです。
(ちなみに今年2024年に宅建業法が改正されどんなに低額売買でも不動産会社は33万円(税込)まで(依頼者の了解があれば)請求していいことになったので売買価格が手数料以下だと赤字になります。ただし、それでも後述する有料処分よりは絶対的にましです)

売れた場合、ほとんど費用が掛かることはなく(場合によってはプラス)、トラブルの可能性も低いので、まずは不動産会社に依頼してみましょう。

マッチングサイト

近年は不動産会社を介さずに売り手と買い手が直接売買するWEBサービスが出てきています。フィールドマッチング、ジモティーといったサイトです。

【マッチングサイトのメリット】
・不動産会社の都合によらず売り手が主体的に販売できる
・マッチングサイトならではの買い手がいて意外なマッチングを期待できる

【マッチングサイトのデメリット】
・多くのサイトでは売り手にシステム利用料が掛かる
・サービスが未成熟で取引の安全性が不動産会社より低い

最近利用者が増加しつつあるサービスで、特に山籠もりやキャンプ、二拠点生活等の非市街地ニーズを持つ方との相性が良かったりします。

ただし、不動産会社のように売買契約時に重要事項説明してくれたり、サイト運営者が売買に一定の責任を持ってはくれないので、売主は商品提供者として責任ある対応が必要になります。

有料での処分

残念ながら売却ができなかった場合は有料処分を検討せざるを得ません。

国庫帰属制度

国による制度で2023年から開始されました。

国の制度なので利用条件があります。

  • 相続または遺贈により取得した不動産限定
  • 対象の不動産は土地のみで要件がある
  • 審査が数か月に及ぶ
  • 負担金が掛かる

土地の要件は、建物がない、他人の権利が付いていない、境界が明白、崖がない等です。

費用は審査手数料と負担金で20万円以上掛かります。申請を専門家に依頼するとその費用はまた別に掛かります。条件を満たせばどんなに市場価値がマイナスな不動産でも引き受けてくれますがトータル費用はそれなりになります。

例えば相続した実家を売るとなれば、古屋を解体して境界を明らかにして負担金を払うので数百万円の出費になります。
(境界確定までは求めないと法務省HPには記載されていますが、境界を明らかにするために多くのケースで境界確定が必要そうです)

1haの森林となれば境界を明らかにした上で、崖や法面が一定程度に収まっていることを確認するために高低測量までしなければならないかもしれません。測量の一大プロジェクトです。

 
制度が開始してあまり期間が経ってないので実質的に”使える”制度なのかまだわからないところがありますが、現時点だと申請件数に対して帰属件数は半数以下です。審査中件数が多いかと思いますが、却下、不許可、取下げも相当数発生しているようです。

帰属承認となれば掛かる費用は次に説明する処分業者の費用よりは安くなると思いますが、それでもそれなりの費用と労力になるので、制度の利用可否を見極めた上で手続きに着手すべきです。

処分業者

産業廃棄物のように有料で民間業者に引き取ってもらいます。

業者から提示された処分費用を了承すればすぐに引き取ってくれますが、費用はそれなりに高額になりがちです。
というのは、ごみのように燃やしたり埋め立てたりできず、負動産を所有しているデメリットをただそのまま業者に肩代わりさせるだけなので、業者が提示する費用はその後何年、年十年と所有する間のリスクとコストを一時金に換算したものになるからです。

あまり大きな声では言えませんが怪しい業者が多いのも実情です。

他社より処分費用が安いと思ったら、引き受け後は管理も固定資産税納税もせずに放置した挙句に夜逃げする業者もあると聞きます。近隣や市町村にとって大迷惑な話です。すでに名義が変わっていれば元の所有者が責任を問われることはないとは思いますが、現所有者と連絡がつかないと登記を見て前所有者に連絡をしてくる可能性はないとは言えません。

まとめ

記載している方法以外では、

負動産当事者ではなく、まだ予備軍の段階で相続まで時間があれば、資産性のあるものは贈与税が掛からないようゆっくり生前贈与してもらい、実際に相続が発生したら負動産は相続放棄するという方法もあります。周辺住民や日本国家にとっては迷惑ですが合法です。

この方法は自分が負動産予備軍だと早めに認知して、親族に協力してもらうので、自身のリテラシーと親族の理解と親族との良好な関係が必要で、かつ、負動産以外の資産の大小にも関わるので万人ができる訳ではありませんが、負動産は回避のしようがあるということです。

回避のしようがあるということは、どんな理由にせよ回避しなかった方は自己責任です。

 
前述したように今後さらに負動産は増加し、社会問題として深刻度を増していくと思われます。

国民の困ったという声に応えて政府は救いの手をさしのべてくれるかというと、

私はさすがにそこまでは面倒見てくれないのではないかと思います。

社会保障費が増大し、防衛費も上げていくのに、人口減少で国の余力が逓減しています。負動産で困る人を救うというより負動産にすら相続税を課したいでしょう。市町村も同様で特に郡部の市町村の多くは財政が火の車なので負動産の固定資産税すら貴重な財源でしょう。弱者支援はするでしょうがその対象は今日食べるものがないような人で、負動産とはいえ資産を有している人ではないと思います。

 
もしかしたらの期待は持ってもいいですが、基本、自分で処分を目指してなるはやでアクション開始していただければと思います。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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