資産家の未利用地は納税用不動産かも

売り手

相続対策はアパートを建てるだけではなく、納税用にあえて活用せずに残しておくことも  ​

節税対策をしても相続税が発生する場合、納税用の資産が必要

 
本来の相続対策とは、

  • 資産の把握・適正化
  • 分割(争続)対策
  • 節税対策
  • 納税対策
  •  
    からなりますが、人によっては全ての対策が必要だったり、逆にどれも不要だったりします。

    中でも納税対策の必要があるのは、相続税の納税をする人は全体の10%に満たないので、ごく少数の人です。

    ただし、そのような大資産家の資産構成は不動産に偏っていいることが多く、いくら大資産家とは言え、最高55%の税率を掛けられたらさすがに現金での納付は難しいので、どの不動産は残して、どの不動産は納税に充てるか前もって決めておくべきでしょう。

    相続税納税に充てる不動産は活用しない

    売却して納税資金に充てる不動産は生前に換金しておくこともありますが、通常は不動産の売却価格の方がその不動産の相続税評価額より高くなるので、相続発生までそのままにしておきます。

    人に貸したり、建物を建てるといざというときに売りにくくなりかねないので、せいぜい駐車場にするくらいです。

    しかし、このような大資産家の持つ低利用地はアパートメーカーがこぞって営業の標的にします。

    その土地が納税のためにストックしているのは本人以外は限られた人しか知りませんが、その土地が低利用地なのは誰の目にも明らかで、登記を取ると誰でも所有者がわかるのですから無理もありません。

    かくしてその土地のアパート建設プランを持ち込む営業は玉砕することになります。営業される回数が多いため断り方もぞんざいでしょう。

    グループ分けされる不動産 残るのは…

    納税対策まですると自ずと不動産がグループ分けされています。

    1つは自分もしくは相続人が住むためにこのまま残す居住用資産

    2つ目は節税対策のためにアパート建設等で活用をした不動産

    3つ目は納税用資産

    しかし、たいていの方はこのようにすっきりした状態ではなく、上記に漏れた売るも活用もできない不良資産をお持ちです。

    4つ目のグループです。

    例えば、市場性のない田舎や調整区域内の不動産、借地権者のいる底地部分、古くて入居者まばら低収入のアパート&古貸家、無道路地、境界確定不能地etc…

    これらは売却や物納の見通しが立たないので納税資金の充てにできませんが、もちろん相続税評価は計上されます。

    普通借地権の付いた底地は住宅地なら更地価格の3〜4割が相続税評価ですが、実際に底地を売ろうとすると、借地人が購入する以外では借地権買取業者が1割程度の価格をつける以外ではほとんど買い手がつきません。

    これらは相続対策においてはお荷物であり問題そのものなのです。

    逆に言えば、これらの売却や物納の見通しが立ち、グループ4からグループ3に繰り上がれば、これまでグループ3にあった不動産が活用候補地に繰り上がります。

    グループ3の活用を提案して玉砕しそうになった営業マンは、ついでにグループ4の物件をお持ちでないか聞いてみてはいかがでしょうか。

    The following two tabs change content below.

    shiro-shita

    仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

    相続対策の第一歩が踏み出せないワケ進まない相続対策に様々なギャップあり ​ 相続対策の第一歩が踏み出せないワケ前のページ

    不動産会社の営業都市伝説① 不動産営業会社は動物園の猿山 ​次のページ不動産営業会社は動物園の猿山

    ピックアップ記事

    1. 大家・管理者のための入居審査の勘所

    2. これを読むと不動産業界では働きたくなくなる!? 不動産会社での雇用・労働の実態と…

    3. HSPでサラリーマン向かないから仕方なく起業した話

    4. 不動産管理業はこれから厳しい!?将来誰も不動産管理してくれなくなる前に”アセット…

    5. アパート1棟買っちゃいました ~個人的不動産投資談①~

    関連記事

    1. 相続のときに困る不良不動産とは?

      売り手

      相続のときに困る不良不動産 あなたのご両親もお持ちかも!? ​

      相続時に困る不良不動産 いろいろあるけど大きく分けると2つ相続のみ…

    2. 不動産の価格査定書を見る上で最も大切なこととは?

      売り手

      不動産売却時 査定価格の高さだけに目が行くと最も大切なものを見失う可能性大 ​

      不動産価格査定書は価格の高さを競うコンテストではない 査定価格が高…

    3. 不動産を保有するには理由が必要!?

      売り手

      これからの時代は不動産を保有する理由を明確にすべき

      今後、大部分の不動産は価値下落!?これからの日本の不動産市場…

    4. 売り手

      不動産売却の際の媒介契約は物件特性と不動産会社のスタンスによって判断 ​

      宅建士のテキストでも必ず出てきますが、不動産の販売を不動産会社に依頼す…

    5. 不動産売却のチェックポイント13 決済準備は細かく面倒くさい

      売り手

      不動産売却のチェックポイント13 ​決済・引渡に向けた変更手続き 漏れたり忘れたり面倒くさい

      <第1回>権利証・登記識別情報通知<第2回>抵当権等の不動産に設定…

    6. 不動産の瑕疵担保責任で莫大な損害賠償リスクを負う !?​

      売り手

      不動産の瑕疵担保責任で莫大な損害賠償リスクを負うってホント!? 不動産売却時・購入時には注意 ​

      そもそも瑕疵って何?不動産取引における瑕疵(※現在は「契約不適合」…

    最近の記事
    1. 貸し手

      アパート・マンション自主管理マニュアル⑯「マーケット調査」
    2. 企業が劣化する瞬間

      城下個人的

      企業が劣化する瞬間
    3. 司法書士の本人確認&意思確認

      売り手

      不動産売却のチェックポイント12 不動産売却の最後の壁は司法書士の本人確認&意思…
    4. 違法白タクが増える…

      そのほか

      日本で違法白タクが増える問題 選択肢は”淘汰”かR…
    5. 人は幸せになるよう設計されていない

      城下個人的

      人は幸せになるよう設計されていない
    PAGE TOP