引き続き不動産売却のチェックポイントについて記載します。
<第1回>権利証・登記識別情報通知
<第2回>抵当権等の不動産に設定された権利
<第3回>完璧な隣地との境界の状態とは!?
<第4回>室内外の動産ってやっぱりゴミなの!?
これからの不動産売買では修繕履歴とインスペクションで”見える化”が求められる
「現況有姿」
というのがこれまでの不動産売買の基本でした。
つまり、不動産の現況が登記簿や設計図面の内容と相違しても買い手は異議なくそれを引き受けるということです。
それが近年は変化しつつあり、所有者は不動産の変化の経緯を第三者にしっかりと伝えられるよう客観的な記録を残すことが求められてきています。
修繕履歴
一般的な不動産査定では、木造戸建の場合は新築後20年程度で建物の価値がゼロになります。
もともと安普請であろうが構造材も表層材もこだわった場合でも、丁寧に扱おうが雑に扱おうがです。
本来は建物の価値に雲泥の差がつくはずですが、
仮にこだわった建物で修繕を重ねてきたとしても、それらを示す記録がなければ、やはり20年でゼロを覆せる説得力を持たないのです。
これまで中古住宅の売買ではほとんどが未整備で適当な情報をもとにしていました。
所有者「10年くらい前に外壁を塗装したんだよね。」
不動産屋「塗装したのは外壁だけですか?屋根や軒天はいかがでしょう?」
所有者「どうだったかなー…」
不動産屋「塗装した時の見積書とか残っていませんか?」
所有者「探してみるけど、捨てちゃったかもしれない」
不動産屋「外壁塗装は高圧洗浄して下塗り後に上塗りされたんですよね。」
所有者「そんな専門的なことわからないよね。」
こんな風にほとんどは個人の記憶によるあやふやな情報なので、しかも住宅は床下や天井裏等見えないところが多く、不動産屋としても建物の状態や修繕履歴を価格に大きく反映させるのを躊躇われました。
なので、施工したのが大手住宅メーカーであるといったわかりやすい部分以外は切り捨てられていたのです。
しかし、
近年は国土交通省が中古住宅の流通件数を上げようと躍起になっており、買い手が安心して買い求められるよう修繕履歴が”見える化”されている物件が有利になるように仕向けています。
国土交通省にはめっぽう弱い宅建協会なので、修繕履歴や建物のコンデションを積極的に価格に反映させるべく新しい査定書式を考案し、それを各会員(不動産屋)に周知したりしています。
今後は見える化している物件とそうでない物件の価格差は広がっていくでしょうから、
過去に行った修繕であっても、見積書、請負契約書、図面、工事写真といったものを探しておきましょう。
インスペクション
とはいえ、過去の修繕を今さら履歴として残そうと言っても困難だったりします。
また、あくまでも過去の修繕であり、現在のコンディションを保証するものではありません。
そこでより重視されつつあるのが建物状況調査(インスペクション)です。
建物状況調査とは、
国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するための調査です。
by国土交通省
要は売却する前に所有者(売主)は建物をチェックしようよという制度です。
売り手のメリットとしては、インスペクション実施済と謳えることと、引渡後の不具合によるトラブルや費用負担を未然に防ぎやすくなることですが、
逆にデメリットとしては、買い手が付く前に調査費用を払わなければならないことと、基本は目視による簡易調査で問題が見つからなかったとしても保証される訳ではないことと、問題が発覚するとそれを開示しなければならないことです。
現在のところ利用率はまだまだですが、いずれは売却時にインスペクションするのが当然って時代になるかもしれません。
リフォームの遵法性
修繕絡みで気を付けたいのが遵法性です。
掃出窓の手前にサンルームを付けるのにも確認申請が必要だったり、防火上違法だったりしますし、
ちょっと1畳分だけ増築するのも防火・準防火地域では確認申請が必要で、その部分が斜線制限や外壁後退距離等を満たしている必要があります。
違法なものは商品性が下がりますし、トラブルのもとになります。
違法ではなくても、床面積や用途が変更されたことを登記しないでいると、買い手の住宅ローンが付かなかったり、訂正を求められたりします。
販売を開始する前にクリアしておきたい項目です。
shiro-shita
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