初歩からの農地法①

そのほか

初歩からの農地法①

日本の平野の半分は農地。でも、農家以外はほとんど知らない農地法

農地は身近な存在です。

都会でも少し車で走れば一面に農地が広がっています。

日本には約450万ヘクタールの農地があり、国土全体の13%程度です。山が国土全体の70%で、平地の割合が25%なので、実に平地の半分が農地ということになります。

 
 
そんな農地ですが、近年は社会構造やライフスタイルの変化により、これまで何代も続けてきた農業を継続できなくなったり、逆に脱サラして農業を始める人がいたりと転機を迎えています。

 
しかし、農地を売買したり、転用するには当事者の合意だけではなく、農地法の手続きを経る必要があります。

それも、形式的に書類一枚出せばいいようなものではなく、それなりにハードルが高いものです。

 
今回は農地法の基本について解説していきます。

農地法の基本的な考え方とは

農業は国策であり、農地法は場当たり的な農地の改変を防ぎ、農業耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図るためにあります。

 
あえてネガティブな見方をすると、

 
農地を守るために農業従事者をそのまま農業に縛り付け、その代わりに既得権を持たせた的なところがあり、

農地を他の用途に転用したり、農業への新規参入を規制する側面があります。

 
なので、農業をこれまで通り安定して行いたい人にとっては願ったり叶ったりですが、

逆に、農業を辞めたいとか、始めたいという人にとっては足枷となっています。

そもそも農地とは

「うちでも庭で野菜作っているけど、何の許可も取ってないよ」

という人がいるかもしれませんが、

それは農地ではありません、家庭菜園です。

 
例えその作物を売って対価を得ていても農地法上の農地ではありません。

 
 
農地法で制限を受ける農地とは登記簿で地目が田、畑になっていたり、農業委員会の農地台帳に記載があるものです。

 
なので、農地以外を購入してそこを開墾して農業する分には勝手です。

しかし、それだと固定資産税の農地の特例を受けることができません。農地だと固定資産税が軽減されるのです。

農業による土地面積当たりの収益性は決して高くないので固定資産税の特例を受けられるかどうかは損益分岐点上の大きな問題です。

また、農協や水利組合といった横の繋がりも欠かせないのが農業なので、モグリの農家には限界があります。

 
 
なお、何十年も耕作放棄され農地の体をなさない土地や、他の用途に転用されて久しくても地目が田畑、農地台帳上の農地であれば規制を受けます。

また、農地は主に立地条件によって農業振興地域、白地、青地農地等に区分けされ、区分によって転用許可の難易度が異なり、原則不可の地域もあります。

 
 
農地は個人財産でありながら、公共財という意味合いが強く、そして、減ることがあっても新たにできることは基本的にありません。農地は農地法によって世の中のドラスティックな変化にガードされてきたのです。

次回は具体的な農地法の手続きについてみていきたいと思います。
(続く)

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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