投資用不動産商品にはなぜロクな物件がないか? ​

買い手・借り手

投資用不動産商品にはなぜロクな物件がないか? ​

多くの投資用不動産が投資の体をなさないのは業界の構造!?

かぼちゃの馬車問題に端を発しレオパレス、TATERUといった不動産投資関連の会社の不祥事が続き投資用不動産は逆風ですが、

それでも、これからチャンス到来という人もいて、人々が不動産投資への欲求がある以上、投資用不動産は不滅であり、多くの会社がスルガショックで淘汰されたものの、いずれ似たような会社がゾンビのように蘇生するでしょう。

 
しかし、投資用不動産を探していると思うのはロクな物件がないことです。玉石混交どころではなく砂の中からダイヤモンドを探すような感じです。

なぜでしょう?

それは、不動産業界の特殊な構造に因るのだと思います。

昔の不動産投資商品はどんなんだったか?

不動産投資自体は結構歴史があるのでしょうが、商品として確立され、一般の人が購入しだしたのは平成バブルの頃のはずです。

その頃は今は仙台に新築されることがなくなった投資用分譲マンションが林立し、20㎡切る間取のものでも1部屋2000万円程度で販売されていました。

購入者は節税目的の富裕層です。

物件には販売会社の賃貸部門が入居者を斡旋しますが、賃料収入は物件のローンの支払いと同額程度でキャッシュフローはありません。

それでも、建物の減価償却費分が不動産所得の赤字として他の所得から差し引けるので節税になり、最終的にローン支払いが終われば物件が残るという仕組みです。(※現在は税制が変わりほとんど節税になりません)

しかし、入居者が退去するとローン支払いが持ち出しになりますし、入居者が付いても賃料が下がり毎月持ち出しになることもあります。

それで、仕方なく売ろうとすると購入した価格ではとても売れず大損します。

特にバブル崩壊後の下落はすさまじく、売りたくてもローンを全額返済できないために売ることができず、毎月、賃料よりも高いローンを支払い続けたという可哀想な方がたくさんいました。

当時2000万円程度で購入した物件はリーマンショック後、東日本大震災前の最安値では1部屋100万円を切るものがゴロゴロありました(今は少し価格を戻しましたが)

今の不動産投資商品はどんなの?

今は主に都内の投資マンションや地方中枢都市の駅近の建売アパートが販売されていますが、

謳い文句は「年金」の代わりです。

やはり、ローンや税金の支払いと同程度の家賃収入しかなく、ローン返済中はキャッシュフローがでないことが多いです。

それを若いうちに購入すれば、定年退職までにローン支払いが終わって、あとは家賃収入がまるまる入りますよと謳って営業するのです。

まともな投資と言えるのか!?

そういった不動産投資商品の多くは投資として成り立っていません。

ローンで購入すると手残りのないものを購入しているのですからそういった不動産投資商品のリターンはミドル以下です。

それならばリスクとリターンのトレードオフの関係上、本来はミドル以下のリスクにならなければいけませんが、土地は経済状況によって上下しますし、建物部分については基本的に価値が逓減していきます。

ミドルリターンなので元本保証がないのは仕方ありませんが、基本的に価値が下がっていくものって他の投資商品では思いつきません。

本来はすべての投資商品のリスクとリターンは釣り合うはずです。

それは机上の理論かもしれませんが、それでも不動産投資商品の非対称性は度を超したものがあります。

それを顧客の目線を反らし営業手法で売るというのが不動産投資商品を販売する会社のビジネスのコアなのです。

なぜそんな不動産投資商品が世に溢れるか

新築の投資マンション、アパートだとこういった傾向がより顕著です。

投資として成り立たない価格で売る事業計画でなければそもそも土地を購入できないからです。

マンションやアパートを建てる土地を仕入れるのも他社との競合ですが、建設するアパート、マンションを高く売れる会社ほど競合他社より土地を高く買えます。

ちゃんとした商品を買い手に提供したいと思っている会社はほとんど土地を購入することができず、投資として成り立っていない商品を営業力で売る会社ばかりが土地を購入します。

かぼちゃの馬車の土地の買値は飛びぬけて高かったようです。

それで、不動産投資商品はそんな物件ばかりが溢れるのです。

 
それでも、市場が適切に機能していれば、そんな不動産投資商品は売れないので、価格が適正値まで下落するはずです。

金融機関しか取引できない銀行間取引市場や、一般の人も参加するものの市場の透明性が高い証券取引ならそのままの価格では売れないでしょう。

しかし、不動産は金融商品のように莫大な量の取引が成立する必要がなく、限られた戸数のプロジェクトを非合理的な投資家・・・・・・・・に売れば成り立つのです。

それでそういった商品も販売する会社は淘汰されないどころか、むしろ、厳しい競争環境を生き抜くためにその傾向が強化されていくのです。

中古の投資物件はマシか?

対して、中古の投資物件であれば、価格は売主の一存で決まり、投資として成り立つ適正価格のものも供給されうるのですが、

新築物件の条件に引っ張られて高い価格で売りに出されがちです。

また、例えば住宅であれば、すごく住み心地がいい物件だったとしても、転勤になったり、間取りが合わなくなったら売るケースは多々ありますが、

優良投資物件なら、転勤しようが、年をとろうが、よっぽどお金に困らない限りは保有するので、中古で売りに出るのは立地的に将来性がなかったり、建物がよっぽど賞味期限切れのものが大半になります。

中古は稀にはいいものもありますが、ばらつきが多く、平均すると新築よりひどいかもしれません。

それでも不動産投資をする方は…

ここまで読むと「不動産投資ダメじゃん!」と思うでしょう。

はっきり言って、もともと土地を持っていてアパート・マンションを建てる以外は相当厳しいと思っていた方が無難です。

しかし、それでも何とか中古の物件でいいのを探してうまくいっている人はいます。

そういった限られた一握りの人になるためには、販売会社が自分達に都合が良く流布した膨大な情報に惑わされず、自分なりの軸や理論体系を構築して合理的な投資家になる必要があるでしょう。

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shiro-shita

仙台在住の”不動産コンサルタント” 就職超氷河期世代かつリーマンショックの直撃を受けたりと時代に翻弄され不動産会社を転々。苦く、しょっぱい経験に裏打ちされた不動産スキルはある意味ではリアルそのもの。

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